第75話 地獄(後編)
前回のあらすじ
スコルピオによって襲われた村は、彼女の言葉を聞いて、『ペテルギウス聖騎士団』を今回の事件の原因だと非難した。その態度にヘラクレスは激怒した。
森に隠れた古い屋敷。その中でサングラスをかけた男が、椅子に座って本を読んでいると、突然、その後ろにスコルピオが姿を現した。
「リーブラ。話があるのだけれど。」
スコルピオがそう言うと、サングラスをかけた男、リーブラは本をテーブルに置き彼女を睨む。
「あのさぁ、ノックもせずに無断で人の家に上がり込むってどういう思考をしているわけ?俺にだってプライベートを持つ権利があって、私には幸せになるべき義務があり、僕にだって1人の時間が欲しいという自由があると思うのだけれど。
俺から、その権利を奪おうっていうのか?」
リーブラの言葉にため息をつくスコルピオ。
「どうせ、貴方。ノックしても絶対に私達を中に入れないじゃない。緊急事態なの。そんな無意味な時間は避けたいのよ。」
彼女の言葉を聞いて、怒りをあらわにするリーブラ。
「あのさ、私の幸せになるべき義務を否定した挙句、僕に君の自由を受け入れろっていうのは、流石に傲慢で強欲すぎないかな?俺に不公平感を与えてるって気付いてるか?」
怒りだす彼を無視して、スコルピオは1つの袋を突き付けた。
「なんですか、この袋は。私にこの袋の処分でもしろというのですか。」
リーブラが袋の中身を確認すると、そこには4つの『流星』が入っていた。
スコルピオは静かに言った。
「あげる。私にはそれはいらないから。」
リーブラが眉間にしわを寄せて、彼女に聞く。
「緊急事態って言っていたよね?なんで、唐突に僕にこれを渡そうと思ったのかな?それを聞く権利ぐらい、俺にはあるだろ?」
スコルピオは、泣きそうなのを抑えた声で返す。
「サジタリウスが死んだ。だから、じきに騎士達が私達の基地へと『流星』を取りに来ると思うの。
彼の意志を尊重するなら、騎士達には絶対に渡したくない。けど、私は彼の復讐さえできればそれでいいし。
だったら、貴方に渡した方がいいのかなって。」
黙って聞いているリーブラを気にせず、彼女は続ける。
「貴方って私達より前に、サジタリウスと知り合いのようだったじゃない。彼が『星神教』に勧めに来たとき、露骨に嫌な顔をしていたし、彼も貴方の事を知っているようだった。能力だって、彼の持っていた小さな石から力をもらった私達と違って、初めから持っていたし。
反応からして、彼のことはあまりよく思っていなかった。それなのに『星神教』に入っているってことは、それだけ叶えたい願いがあるのかなって思ったのだけれど。」
彼女の言葉を聞いて、リーブラは「んじゃま、貰ってやるよ。」と、袋をテーブルの上に置いた。
「残りの『流星』は、騎士団が持っていると思うわ。それじゃあ、私は行くから。」
スコルピオは、「ちょっと待てよ!」というリーブラの言葉を無視して、屋敷を後にした。
「ちっ!私の話を聞かないとか、僕の質問に答えないとか。俺が質問する権利を、私が幸せになるべき義務を、僕の気になることを聞く自由を奪っていくなんて、傲慢で強欲すぎる。あいつ、次会ったら殺してやる。
しかし───」
リーブラは自分のテーブルに置いてある『流星』を睨む。
「あいつが、死んだ?俺にゃあ、信じられねぇ。私にとって彼が死ぬこと自体はどうでもいいですが、場合によっては、僕の『願い』が叶うかどうかの話になる。」
次回予告
再び、『ペテルギウス聖騎士団』とスコルピオとの戦いが始まる。
次回 第76話 VSさそりの座




