第75話 地獄(前編)
前回のあらすじ
ついに、サジタリウスを倒したケフェウス達だったが、彼は最後に、『シェダル』を襲撃する計画を話す。話を聞いて急ぐ騎士達であったが、彼らがたどり着いた後では、すでに『シェダル』は火の海になっていた。
騎士達が消火活動を終え、城へと戻る。
カシオペア女王の元で、現状を報告する。
「火は鎮火しましたが、街のほとんどが焼け、住居は約90%が全焼。町民は約40%が死亡しました。
現在、残った町の人は、残った家に居候しているか、この城の空き部屋に避難しています。」
オリオンが報告を終えると、カシオペアは頭を右手でおさえながら、ため息をついた。
「分かった。しかし、今回の火事は何だったんだ。原因は何だ?」
「『キーストーン』だ。」
カシオペアの横にいたヘラクレスが、そう答えた。
「あいつら、まだ生きていたんだ。」
いつもの口調とは違い、真剣な雰囲気で話すヘラクレスに、ケフェウスは質問をする。
「『キーストーン』を知っているんですか!?」
ヘラクレスは答える。
「当然だ!奴らを見つけたのはこの私だ。あいつら、この街を火の海にする作戦を立てていたんだ。だが、1人がドジを踏んだのか、先に街商人の住む1件の家が燃やされた。
その光景を見て、お…。僕はすぐに、その犯人を追った。それで、彼らの住処の1つを見つけ、そのほとんどを、始末したが…。」
ヘラクレスは拳を握りしめる。
「2人を逃がしてしまった。その1人が、火をつけまわっていたのだ。お…。僕は彼女を追いかけて行ったが、すぐに逃げられてしまった。」
カシオペアは、「なるほどな。」と手を自身の顎にへと持っていく。
「しかし、また。何故、『キーストーン』が今更、街を襲うのだ?」
ケフェウス達は彼女に、今までの経緯を話した。
『星神教十二座集』の1人スコルピオが、『キーストーン』の生き残りであること。
サジタリウスが、彼女に「『シェダル』を襲え。」と命じたこと。
それを聞き、ケフェウス達がすぐに『シェダル』に戻ってきたが、すでに街が火事になっていたことを。
「なんだと!『キーストーン』の生き残りが、『星神教』に!?
ちっ!あいつ…。」
ヘラクレスはそういうと、出口へと向かいつつ、「あの女は、僕が『アルゲティ親衛騎士団』全員を総動員させて見つけ出す。」と言った。
しかし、ヘラクレスが部屋を出てすぐに、「なんだ!貴様らは!!」という彼の声が聞こえ、声のする方へと向かうケフェウス達。
彼らが城の門前にたどり着くと、『シェダル』の民達が、門を埋め尽くすほどの量で、ヘラクレスに文句を言っていた。
民の1人が、ケフェウス達に気が付くと、彼らの怒りの声は、ケフェウス達へと向かった。
「あ!お前達よくも、俺達を見捨てやがったな!!」
ベラトリクスの「どういうことだ!」という質問に、彼らは続ける。
「街が襲われたとき、聞いたのよ!襲撃をしてきた少女は、『ペテルギウス聖騎士団が、我々との取引を断った。取引に従い、この街を火の海にする』って。つまり、貴方達は私達を、売ったってことでしょ!! 」
街の人の言葉を聞いて、オリオンが慌てて否定する。
「何を言っているんですか!我々が、そんな取引を行った事実はありません!!」
しかし、街の声はおさまらない。
「だったら、なんで、すぐに助けに来なかったの!! 貴方達がもう少し早く助けに来てくれたら、娘と家は焼かれずに済んだかもしれないのに!!」
街の声は「そうだ!そうだ!」と大きくなっていく。
それを聞いた、ヘラクレスが静かな声で、「黙れ。」とつぶやいた。
それを聞いた、街の人達が「え?」と驚いているが、彼は続ける。
「黙れよ。ゴミ共。お前達、本気で助けに来た彼らを、どうこう言う前に、少しは街の為に動いたのか?俺が見に行った時にはお前ら、周りを無視して自分の身だけを守っていたじゃないか。そんな市民如きが、一丁前に騎士に文句を言うだと?街の為に命をはる、誇り高き騎士に文句を言える身分か?自分の立場を分からねぇなら、いっそ死ぬか?」
ヘラクレスの静かなその声に、街の人々は恐怖し、その場を立ち去った。
その光景を見たオリオンが、ヘラクレスに言った。
「助けてくれたことには、礼を言いますが。傷ついた市民にあの言葉はいかがなものかと。」
それを聞いたヘラクレスは、いつもの笑顔と口調で返す。
「冗談だぁよ。君達は『星神教』を倒す任務があるかぁらね。市民の声でふさぎこまれちゃ迷惑なんだぁよ。そのたぁめに、市民に少し冷静になってもらっただぁけだよ。」
ヘラクレスを軽蔑の目で見る騎士達を無視して、彼は続ける。
「それより、早く準備をして『星神教』を倒してくぅれよ。」
次回予告
スコルピオは決意を固め、残った『十二座集』であるリーブラへと合流する。




