74話 絶望の始まり
前回のあらすじ
怒りをあらわにするサジタリウスと、ケフェウス達との決戦。彼の腕が義手であるなど、さまざまな苦戦を強いられたものの、ついにサジタリウスの体を半分にすることに成功した。
上下に分かれたサジタリウスが、ケフェウスの事を睨む。
「くっ!なかなかやるじゃねぇかよ。」
吐血しつつも、悪態の減らないサジタリウスに剣を向ける、ケフェウス。
「何かするつもりなら、諦めろ!お前はもう終わりだ!」
「終わり?テメェら、なんか勘違いしてねぇか?」
サジタリウスは急に笑い声をあげた。
「絶望はここから始まるんだぜ?」
オリオンが、「どういうことだ!!」と叫ぶと、サジタリウスは笑いながら答える。
「テメェら気付かねぇのか?今、この場にスコルピオがいないことに。」
サジタリウスのその言葉に、騎士の全員がハッとする。
「あいつにゃあ、はじめっから。テメェらが来る前から言っていたのさ。『もし、仮に騎士達が私達の仲間にならないのであれば、私の合図で『シェダル』を襲え。』と。」
彼の言葉に、騎士達は恐怖した。
サジタリウスは続ける。
「まぁ、合図は出してねぇが、俺がキレたところを見て、『交渉は失敗。』と判断したんだろうよ。今頃、『シェダル』はいい景色になっているだろうよ。」
大笑いするサジタリウスを、ケフェウスが「この下種野郎が!」と貶す。
騎士の全員が、『シェダル』に向かおうと走り出すと、サジタリウスが、ケフェウスを呼び止めた。
「待ちな!クソガキ!最後に1個だけ言っておくぞ!」
彼に呼び止められたケフェウスが、足を止めて振り返る。
サジタリウスは話を続ける。
「テメェはずっと、テメェの腐れ切った都合のいい正義を持ち続けた。テメェは、俺らが、『流星』を使って、世界を滅ぼすと思っているだろうがな、そうじゃねぇ。
世界を滅ぼすとしたら、テメェらだ!テメェみてぇな自分勝手な奴こそが、『流星』に世界の滅亡を願うのさ。」
ケフェウスは彼の言葉を、ただの戯言と判断すると、「そんな、戯言を言って時間を稼ぐつもりか?世界を滅ぼそうとするのは、お前ら大悪党達の方だろうが!!」と言って、その場から走り去った。
──────────
ケフェウス達がいなくなったのを確認すると、サジタリウスは自分の胸ポケットから、1つの鍵を取り出した。
それを見て、彼は笑った。
「フフ。これまで助けてくれた礼だ。心臓を返してやるか。あいつに。」
──────────
ケフェウス達が『シェダル』にたどり着くと、そこは火の海となっていた。
街中から、聞こえる。助けを呼ぶ声。
「熱い!! 助けて!!」
その光景はまるで、ジェミニーとの戦った町、『スン』の時の光景と同じだった。
ケフェウスが、それを思い出して、怒りをあらわにする。
「どこだ!! 『星神教徒』!!」
「何しているケフェウス!! まずは、消火活動が先だ!!」
オリオンがそう言って、彼を止めた。
それから、騎士達は消火活動を行った。
──────────
「彼らが帰ってきたのね。」
離れた森の木の上で、『シェダル』の様子を確認するスコルピオ。
しかし、彼女はすぐに、自分とサジタリウスの基地へと向かう。
「彼らが、『無事に帰ってきた』ということは…。もしかして彼は…。」
スコルピオは、愛しの彼を心配して、全速力で基地へと走っていった。
──────────
スコルピオが、基地へとたどり着く。
緊張した様子で、騎士達とサジタリウスが戦った部屋の扉を開く。
その部屋には、上下に体が分かれたサジタリウスがいた。
スコルピオは驚いて、急いで彼に近寄る。
涙を流しながら、「ねぇ!無事なの!! 返事してよ!! お願いだから!!」と彼を揺さぶる。
サジタリウスを何回か揺さぶった時、彼の手に何かが握られていることに気付くスコルピオ。
中身を確認してみると、それは1つの鍵と、1つの手紙だった。
手紙の内容は、こうだ。
──────────
親愛なるスコルピオへ
君は今まで、俺の為によく働いてくれた。当然、心臓を奪われ脅されていたのだから、そうするしかなかっただけだろうが。
それでも、俺を裏切らないでいてくれたことに、感謝している。
俺が死んだら、『流星』なんてもん、探さなくたっていい。お前自身を大切にしてやってくれ。心臓は返す。
場所はあれだ、物置の本が溜まりに溜まった本棚の裏に、扉がある。その鍵で開くから、心臓を持って行ってくれ。
最後にもう一度、言わせてくれ。
────ありがとう。
サジタリウスより
──────────
その手紙を読み終えるとスコルピオは、サジタリウスの体に向かって泣き崩れる。
「脅されてたからじゃないよ!この馬鹿!! 愛していたから、好きだったからに決まってるじゃん!! 住む場所を失った私達に住む場所をくれた!『キーストーン』という居場所を失った私達に新たな居場所をくれた。心臓だって、1度も私を脅すのに使わなかったじゃない!! 過去に何があったか知らないけど!仲間を道具としか見ていない風を装っていただけで、本当は仲間を失うたびに悲しんでたじゃない!!
そんな、アンタだから!そんなアンタだったからこそ、ここまでついてきたんだよ!! 馬鹿!!」
スコルピオの嘆きは、誰にも届かない。
それは、彼女自身が良く分かっていた。
それでも、彼女は嘆き続けた。
次回予告
街の炎を消すことに成功した騎士達。しかし、そんな彼らを待つのは、サジタリウスが残した2つ目の刃。街の人々達からの言葉の刃だった。
次回 75話 地獄




