73話 サジタリウスとの決戦(下)
前回のあらすじ
サジタリウスは、ケフェウス達が『自分の正義』を都合よく変えていることに腹を立てた。
「ふざけんなよ!! クソガキ共が!!」
サジタリウスがそう叫び、その勢いで、持っていた心臓を握りつぶす。
当然、心臓の持ち主である、ヌンキは絶命する。
騎士達は、そんなサジタリウスの豹変ぷりと、ヌンキが死んだことに驚く。
「何が、『お前らのは悪行』だ。何が、『俺たちのものとは違う』だ。テメェらよぉ。今現在、テメェらのクソみてぇな正義の為に、俺の正義を潰そうとしてること分かってんの?つうか、そんな正義すら、自分の都合のいいように、コロコロ、コロコロ変えやがってよぉ。いい加減にしろよ?
こっちが、多少下手に出ればこれだよ。腹立たしい。」
そういうと、彼は『心臓を穿つ矢』を何本も生成し、弓を引く。
「お前らとの話し合いは終わりだ。ここからは、絶望の始まりだ。」
サジタリウスが、一気に矢を放つ。
騎士達はそれを避けようとするが、逃げ遅れた騎士2名が心臓を貫かれて死ぬ。
そして、ベラトリクスは、矢を足に食らい、死にはしないが、地面に倒れる。
「くそ!本性表したな!」
ケフェウスは、サジタリウスの元に一気に近づくと、『姉の怒り』を振るう。
サジタリウスは、それを避けようと後ろに下がるが、左腕に当たってしまい、彼の左腕は、肘のあたりから切り落とされてしまった。
「やはりその剣は、ジェミニーの『姉の怒り』。仲間だったやつの姉を殺した挙句、その武器をも自分の為に利用するとは、テメェら本当に素晴らしいほどの悪人だな。」
斬られた左腕を押さえながら、こちらを睨むサジタリウスに向かって、ケフェウスは言う。
「何が、悪だ!それは、お前達だ!お前ら悪を倒すためなら、俺は手段を択ばない!!」
ケフェウスが、『姉の怒り』を構え、サジタリウスへと近づく。
しかし、その光景を見ていたアンドロメダが、サジタリウスの左腕から、血が出ていないという違和感に気付く。
「待って!ケフェウス!危ない!!」
アンドロメダの叫びに、ケフェウスは「え?」と彼女の方を向く。
その瞬間───
「馬鹿な奴だよ。お前はよ。」
───ケフェウスの背中が貫かれた。
彼を貫いたのは、斬られたはずのサジタリウスの左腕から伸びた槍状のものだった。
サジタリウスは、ケフェウスから、その槍状のものを抜く。それは、すぐに左腕の形へと変化する。
「俺に攻撃を与えたことは褒めてやるよ。だが、残念だったな。俺の左腕はとっくの昔に義手なんだよ。」
アンドロメダが、「土の魔法で出来た義手…。」と驚いていると、サジタリウスは続けた。
「昔、それはそれは偉大な魔法使いに、斬り落とされた左腕の治療をしてもらったことがあってな。
まぁ、しかしその時はまだ未熟だし、彼女も悲しんでいた時だったからな。治療は失敗。俺の腕は腐っちまった。だから、他に影響がないうちに、肩から斬り落としたのさ。」
サジタリウスは、左腕の動きを確認する。
「彼女の方は、俺の腕を奪ったことを後悔しているだろうが、正直俺は彼女に感謝すらしている。なぜなら、毎日土の義手を作る必要があるから───」
彼が右手の指を鳴らすと、突然彼の後ろに複数の黒装束が作られた。
「───こんなに土人形を生成できるほどの魔力を得たのだから。」
彼の言葉に、騎士達が驚いた。
「そんな!今まで倒してきた『星神教』は、全部土人形だったってこと!?」
アンドロメダのその驚きに、サジタリウスは笑った。
「フッ。まぁ、『十二座集』や、それ以外にも、一部の『星神教』は人間だ。レオのように部下全員が人間のグループだっている。
だが、考えてもみろ。この世界は所詮、多勢を正義と思い込む愚かな人の集まりだ。12人全員が、お前らの軍に匹敵するような数の部下を従えているのならば、世界はとっくに、俺達の正義を、世界の正義とするさ。」
完成した土人形が、剣やメイス、槍など、今までの『十二座集』の部下と同じ武器を持ち、ケフェウスに向かって突撃する。
ケフェウスは急いで後退し、土人形の攻撃は、ケフェウスの前に出たタビトが受け止めた。
アンドロメダが急いで駆け寄り、『大丈夫? ケフェウス?』と声をかけながら治療を始める。
「さて、そろそろ幕引きと行こうか!テメェらにゃあ、愛想つかされたぜ。テメェら全員。それどころか『シェダル』の連中すら、無事でいられると思うなよ!」
サジタリウスのその言葉に、土人形達が、一斉に攻撃をし始める。
その攻撃は、今までのものとは違い、弓兵と、近接兵、魔法兵に分かれた計算高いものだった。
ケフェウスも治療を終え、戦いに参戦し、『姉の怒り』で、土人形の武器と、土人形そのものを破壊した。
しかし、どれだけ破壊しても、サジタリウスがまた、新たな土人形を生み出す。
「くっ!キリがない!」
ベラトリクスが、一度後ろに撤退しながら、そう言う。
それに対して、アンドロメダが「やはり、土人形を生み出す彼をやらなきゃダメみたいですね。」と答える。
アンドロメダが矢を構え、そこに風の魔法を付与して放つ。
矢は、土人形の間を高速ですり抜け、サジタリウスへと向かう。
「遅い!!」
サジタリウスが、すぐに土の壁を生み出して、相手の矢を止める。
しかし、彼が壁を消すと、すぐ前にベラトリクスがいた。
「遅いのはどっちだ!!」
そう言って、攻撃を仕掛けるベラトリクス。
サジタリウスは、急いで、自分の左腕を盾の形に変えて、彼女の連続攻撃を受け止める。
「いい加減に───」
あまりにも長い攻撃に、サジタリウスは「攻撃を受けながらも、右手に『心臓を穿つ矢』を生み出す。
「───せぇよ!」
そして、攻撃の隙を見て、ベラトリクスにその矢を刺そうとする。
しかし、ベラトリクスはそれを後ろに下がって避ける。
だが、彼女が避けたのを確認すると、サジタリウスはすぐに、左手を弓の形に変えて、持っていた『心臓を穿つ矢』を放つ。
ベラトリクスが舌打ちをして、その矢を避ける。
が、その逃げた先に、『心を穿つ矢』が放たれていた。
ベラトリクスが、「まずい!」と死を覚悟していると、彼女の前に、小さな土の壁が生み出され、『心を穿つ矢』を止めた。
「ちっ!今の時代にゃ珍しい。随分と反応速度の速い魔法使いだな。」
サジタリウスが、アンドロメダに向かって複数の『心臓を穿つ矢』と、1本の『心を穿つ矢』を構える。
しかし、その矢が放たれる瞬間。
「隙ありだぜ!下種野郎!!」
背後に隠れていたケフェウスの『姉の怒り』が、彼の体を上下に分かれさせた。
次回予告
いよいよ、悪の親玉サジタリウスを倒したケフェウス達だったが、本当の絶望はここからだった。
次回 74話 絶望の始まり




