case3.5俺と商家と不思議な縁4
恐ろしい形相の老人・・それはこの家で座敷わらしを大切にしていた女性だったのだろう
しかし、彼女は陽菜という女性の身勝手な理由で殺されてしまった
「ま・・まさか・・本当にお婆様!?うそ・・ありえないわ・・だって・・」
だって・・このウザイババアは私が殺したもの!だからありえないわ
嘘よ・・こんな事あるわけないわ!
「だって”久栄さんは私がこの手でころしたんだから”ですか?」
「っ!?違うわ!私そんな事してない!」
「そうよ。可愛い陽菜がそんな事するはずないわ!変な言いがかりはよして!」
とこれまたよそから嫁いで来たであろう女性、陽菜の母親であり日向子さんの叔母にあたる女性が日捨てっリックに叫びだした
「おい!会社に突然警察から連絡があったんだが何かあったのか!?」と一人の男性がスーツ姿で俺たちの前に酷い形相で現れた
この人はたしか・・・陽菜さんの父親でこの家の直系の男だろう
そんな事を考えているうちに目の前で言い争いが始まった
「警察がうちに来るとは何事だ!説明しろ!」
「あなた・・警察がね、陽菜がお母様を殺したなんていうのよ!どうにかして」
「お・・お母さんに何かあったのか!?」
「それよりも陽菜をまもってよ!あのこがそんな事するはずないわ!」
ともめ始めたのだが・・今は正直それどころではない
今も久栄さんの霊は冷ややかな眼差しとそれから恨みの念を抱き、気を抜けば陽菜さんを殺しかねない
俺は久栄さんの霊と話をすべく、わらしをともない近寄った
「久栄さん。はじめまして、森といいます
この通りわらしは俺と一緒で無事です
少しだけでいいので、俺と話をしてくれませんか?」と声をかけると・・久栄さんはピクリと反応した後に俺と仲良く手を繋ぐわらしを見つめるとふっと柔らかい笑顔になった
俺はその表情で話を聞いてもらえると思い、話を始めた
「久栄さん・・何があったのか教えて頂けますか?
わらしは貴方が”陽菜さんに殺された。しかも毒殺だといっています”それは本当ですか?」
”ああ・・ほんとうさね。悲しいくて、悔しい事だけどね
あれは一週間くらい前さね、陽菜が私に話があると言うので話をしたのじゃが・・・
それが引き金となって私は殺されたんじゃよ”
「それで?具体的には何があったんですか?」
俺がそう聞き返すと周囲にいた、零係以外の人間は”コイツ頭大丈夫か?”というような訝しげな表情で俺を見つめているがこの際そんな事はどうでもいい
まずは事件の概要を知ることが大切だ
”わらしの部屋には何かあったかえ?”と不思議な質問をされて、俺は部屋の事を思い返してみる
そういえば・・やけに高そうな壺やらそれから掛け軸なんかもあったはず
「たしか、貴重な調度品と思われる壺や掛け軸、それから水瓶なんかがあったと記憶しています
もしかしてそれらが事件と関わりがあるのですか?」
”それもじゃよ。”
それもということはそれが直接の原因ではないが、関わりがあるということだろう
つまりは動機のひとつと言うことなのだろう
クイックイッと俺の手を引いたわらしが俺に告げてきた
”あの嫌なお姉さんはね・・この家の秘密を知ったんだよ
それで久栄さんに自分を跡目にしろって迫ったんだ
だけどこの家で跡目になるのは日向子さんだけ。直系の血筋の日向子さんしかいない
だからそれをそれを断ったんだ
そして今度は貴重な骨董品を金にしようとして部屋に入り、そこを久栄さんに見つかった
だから・・・久栄さんは殺されたんだよ
僕の目の前でね
僕は助けようとしたけど・・一度でも血で汚れたら弱った僕は堕ちてしまう
だから久栄さんは僕をかばって死んじゃった・・・”
俺の手をぎゅっと握ってポロポロと涙を流すわらし、こういうところは子供なんだな
俺は頭をやさしく撫でながら声をかけた
「そっか・・だからお前は久栄さんの守りたかったものを守るために一人で戦ってたんだな
偉い偉い。
しかし・・そんな事で殺されるなんて、無念だったろうな
それにこの人たちは自分達が生活できている事や恩恵を受けていることを理解できていない
俺はそれが残念だよ」
”そうだね。僕も長い間この一族を見守ってきたけど・・こんな酷い仕打ちを受けたのははじめてだ
日向子さんのお母さんもね、本当はこの家を次ぐはずだったんだけど・・
陽菜の母親である後妻にこの家を追い出されて死んじゃった
しかもあの後妻やその娘・・それから娘の恋人はね、この家の財産を狙っていたんだ
久栄はその事にひどく腹を立てていたし、跡目は日向子にするって決めてたんだよ
自分が残してやれるのは僕の加護と、それからこの家の財産だって”
なるほどね。つまりは陽菜さんはあくまでも後妻の娘であり”この家の子”ではない
そして元来巫女という役割は女性が多く、この家でも例に漏れず女性が引き継ぐしきたりだったのだろう
俺はわらしの言葉が本当だと思ったが確認を久栄さんの霊にすると彼女はうなずいた
つまりはわらし云々を抜かしても、私怨による殺人ということだろう
「さっきから君は何をぶつぶつといっているんだね?」
「そうですよ。やっぱこいつ変なやつじゃないですか!安藤さん」
「零係・・・なんなんですかこいつら」
うるさい外野の言葉を無視して俺は陽菜さんのお父さんに声をかけた
「貴方が陽菜さんと日向子さんの父親で久栄さんの息子さんですね?」
「ああ・・そうだが。」
「担当直入に聞きます
貴方はお母様・・つまり久栄さんからこの家について話を聞いていませんか?
貴方がなぜ従姉妹である日向子さんのお母様と結婚させられたのか」
「!!なぜ、それをしっているのですか!?」
「教えてもらった訳じゃないんですけどね、考えればわかることですよ
日向子さんが次期跡目に選ばれる・・それは選ばれたんじゃなくて産まれた時から決まっていたんですよ
だけど貴方のしたことで、この家の歯車は軋みを生み狂ってしまった
そうですよね?」
「・・・・・もしかして、あの母がいっていたくだらんおとぎ話の事か?」
「くだらないおとぎ話ですか・・・・それは違いますよ
この家は座敷わらしに見守られて材をなした商家です
そしてその座敷わらしとこの家を見守ってきたのが久栄さんを含むこの家の直系の女性たちです
つまりは日向子さんの母親も久栄さんの後を継ぎ、巫女としての役割を果たすはずでした
しかし、貴方はその重要な意味を理解していなかった
俺が日向子さんとここに来たとき座敷わらしは飢え、飢餓状態でした
その意味がわかりませんか?
久栄さんが亡くなった事で座敷わらしとの橋渡し役がいなくなったんですよ
最近仕事うまくいってないようですね?」
そう・・御門さんに色々調べてもらっているうちにわかったのだが、この家の加護がもはや無に等しく
今までうまくいっていたはずの商談や縁が次々になくなっていき
浪費癖の酷い後妻や娘によってすでに彼らは火の車だったらしい
「まさか!?座敷わらしが本当にいるとでもおもっているのか?くだらない」
「そう思うのは勝手ですが・・そこまで言うのでしたら彼は僕の家でお引き取りします
それと陽菜さんが久栄さんを殺した理由ですが
自分が恩恵を受けられるこの家の巫女になれないということに腹を立てた事とそれから金に困って骨董品を盗もうとしたところを見つかった為だそうです
そんな理由で久栄さんのご飯に毒を盛って殺害したそうです
因みにこれは単純な金品を目的とした殺人事件です
毒の入手経路やそれから陽菜さんの共犯者である彼女の恋人もこれから署でゆっくり話を聞かれるでしょうね
安藤さん。宜しくおねがいします」
「あ・・ああ。わかった」俺になにか言いたそうにしてはいたが、彼は空気を読んで逮捕状を取ると彼女達を連行していく
「ちょっと!私殺してなんかないわ!それに何よ座敷わらしとか!
私を襲った赤い服の子供はどうしたのよ!」
「違う!俺は殺してなんかない!違う。はなせよ!」
「だまれ!すでにお前たちの犯行だという証拠もある
遺体の衣服からはお前たちの髪が発見されたし、毒の入手も確認済みだ
言い逃れはできないぞ」
「「!!」」
「詳しい話は署で聞こう」
「お前・・まさか本当に!」
「嘘よ!陽菜がそんな事するはずないわ!」
「お父さん・・・お父さんはほんっとうになにも知らなかったんだね
お母さんが言っていた事も何もわかってなかった
私も・・・それからここの家の誰一人」
「日向子・・それはどういう意味だ」
「お母さんやおばあちゃんが小さい頃に私に教えてくれた事を思い出したの
このおうちには昔から小さな守り神様が居てね、
おばあちゃんもそれから美那子もその子のお世話をするんだよ
その子に毎日おいしいものをあげてね、その代わり見守って貰ってるんだよって
それがなんの事だかよくわからなかったけど、それが座敷わらしだったんだって今日知ったわ
お母さんが家を出てから”あのこは大丈夫かしら”って時々呟いていたけれど
それも座敷わらしのことだったって、ねぇ・・お父さん。わたし小さい頃見たの思い出したの・・・
お婆ちゃんに言われてお供えしてた頃のこと今はっきり思い出したのよ
座敷わらしはいるわ」
「!何を・・・・そんなはず」
「俺はこの家の住人じゃないけど、日向子のそばにいたお陰でわかったんです
座敷わらしはいると思います。それに・・・」
「今もここにいますよ
すべての結末を見届ける覚悟でここにわらしもいます
あなた方は知ろうとしなかったし、知っていて陽菜さんは己の欲望に負けてしまいました
座敷わらしはその家の住人を見ています
そしてその家の住人が怠惰になったり、欲深くなると愛想を尽かし家を去る
そうして栄えていたはずの家は没落していくんだそうですよ」
「まさか・・・本当に?うそだろ・・じゃあ商談がうまくいかなくなったのも全部?」
「貴方?」
「そんな・・・」
突然ぱぁぁぁぁと光が弾け、薄く光る着物を着た俗にいう姫カットの子供が現れた
”僕ね、もうこのお家はいいや。好きな人もいないし、汚れちゃったもん
君たちにあげてた恩恵も縁も切れちゃった・・・
僕、このお兄ちゃんのお家にいくんだ♪
後ね、壺とかもあげないよ。お兄ちゃんにあげるから”
とさらりと爆弾を投下した
さらに、姿が見えるようになったらしい久栄さんからも
”くくくく・・これはいい。せいぜい苦しめ
わたしの恨みを晴らしてくれたからのう・・もうええわ
この家の栄華も今日限りじゃな”と笑って言った
「なっ!?」
「え?なに!?」
”日向子お姉ちゃん達このおうちから出ててよかったね
僕の呪いも二人には届かないよ
あ・・・お兄ちゃんたちも早くここから出たほうがいいよ。危ないから”
「後で他の刑事が事情を聞きに来ますので、宜しくお願いします」
ちょうどいいタイミングで一課の刑事たちが家に来たので面倒になる前にここを後にする
壺とかどうするかな・・・
”壺とか掛け軸なら大丈夫。僕が回収したから”
俺はわらしに言われるがまま、日向子さんたちや零係の人たちを連れて家を後にすることにした
俺たちと入れ違いで全身黒づくめの美丈夫とすれ違った・・
うわっ・・なんか悪寒が・・・・・・・
「あの・・あの家はもう没落するんですよね?」
「へ?あ・・そうですね
すみません、わらしを連れて行ってしまって」
「いえ、いいんです。わらしちゃんには十分よくして貰ったんですから
それに・・わたしもなにも出来なかった」
”お姉さんは悪くないよ
それにね、お姉さんのこと久栄さんから聞いてたよ。いいこだって
あ・・・そうだ。これね、久栄さんから預かってたんだ。あげるね”
そういうとわらしは小さな箱を差し出した
蓋を開けると・・・
「え?指輪?」
少し古いデザインの指輪が二つ・・
”うん。お姉さんとお兄さんにって久栄さんがサイズを直したんだよ
代々このおうちの跡継ぎ夫婦しかつけられない指輪だよ”
「ありがとう。わらしちゃん」
「よかったね。日向子」
「これから大変だろうけど、二人で頑張ってね
さてと・・俺たちは署に戻って色々後始末しなくちゃな」
「そうですね。それにしても・・・森さん。やっぱ面白い人ですね」
「ですね~。」
「それじゃあ、二人ともお幸せに」
「森さん。お世話になりました
後は私も家族と話をしていきます」
「俺も、日向子を支えていきます」
そんな二人を見守ると、久栄さんはどこかに消えてしまった
心残りが無くなったんだろう
”これから宜しくね。お兄ちゃん”
「宜しくな」
俺はわらしを連れてとりあえず車まで移動した




