平和的交渉49
「ここか」
俺は『マヒャドの眼』を通して切り立った巨大な崖を見渡した。
『マヒャドの眼』とは、魔力を可視化することができるモノクルである。常人には高濃度の魔力を視ることしかできないが、俺には魔力の残滓を視ることも可能である。
さて、目の前の崖の話だが、確かに魔力によって覆われている部分がある。よりよく視ると、それは幻術の類であることがわかった。奥にはトラップも仕掛けられている。精神系と感知系と地系。
恐らく、精神系は野生動物などを近づけないためのもの。感知系と地系は、精神系魔法の影響を撥ね除けて侵入する者があった時に爆破して入口を封鎖するためのものだろう。
入口を崩落させるような罠を張るということは、別に出口があるか、入口が塞がっても脱出する手段を敵が有しているかのどちらかだろう。中にいる敵に気取られないよう、慎重に行動せねばならない。
俺はハンドサインで望月翔太を呼び寄せた。彼の加護は「猟師」。決して珍しい加護では無い。加護による補正は、視力、観察力、銃の扱い、生物の解体、そして罠の扱い等々。ここは彼に任せるのがベストだろう。
罠の内容を聞くと、望月はハンドサインで佐竹と緑山を呼んで共に罠の解除に取りかかり始めた。
約30分が経過した頃、幻術の壁から望月の上半身がにゅっと生えてきて、ハンドサインで任務の完了を報告した。
俺は小早川隊には外部の警戒を命じ、望月隊と古島隊を連れて洞窟の中に侵入した。杉下は外に残り、異常があった際には本隊に連絡するよう命じた。
洞窟は入口部分こそ横並びに3人大男が並んで通れるくらいには広かったが、100mほど進むと一人ずつ身を屈めて通るのがやっとになってきた。流石にこの人数で先に進むのは困難と判断し、一度外に出て部隊を再編することを選んだ。




