平和的交渉48
探索の道中、俺達は食べられる野草などを可能な限り採取しつつ進んだ。俺達だけの知識では見落としも多かっただろうが、土地勘のあるジャンがいたことで採取できる食料の幅がぐんと広がった。
それにしても、こうしてみるとこの山は食材の宝庫とまではいかないが、そこそこの食料が自生している。村人達はここへ採取に来なかったのかとジャンに尋ねると、普段は魔物が多いために村人だけでは深くへは入れないのだと返された。森の深くへの採取は最終手段だったらしい。
「隊長、見つけたぜ」
地に身体を伏せるようにして急ブレーキをかけながら杉下が言った。
彼の加護は「足軽」である。全く珍しいものではなく、通常は他人より早く走れるだけの加護だが、彼の加護練度は非常に高い。もはや機動力だけなら勇者を凌ぐほどである。魔王討伐戦中は、彼はこの機動力を活かして偵察や分隊間の連絡役を担っていた。
「この先にかなり高い崖がある。ありゃあ断崖絶壁ってやつだ。その岩肌に魔力反応ありだ。俺じゃそれしかわからなかったが、たぶん洞窟か何かを隠しているんだろう」
「そうか。探知系の罠か魔法にかからなかったか?」
「俺が認識できる範囲ではなかった」
「わかった。『マヒャドの眼』だけ返してくれ。それから各隊にも共有しておいてくれ」
「了解」
杉下は落ち葉等を巻き上げながら去っていった。
「……こちらにも加護持ちの方がいらっしゃったとは。凄いですね」
「なに、凄いのは加護持ちだからではない。加護があったところで、使いこなせなければ無いのと同じだ。どうせならここに至るまでの研鑽を評価してくれ」
勇者を見てまだ大して時が経っていないというのに別の加護所持者を見て感嘆するジャン。彼は珍しいものを見たことに関心しているだけである。希少であるという価値も確かに存在するが、俺に言わせればそれが必需品でない限り下らない価値観だ。珍しいというだけで石ころに高い金を出す人間とは、俺は一生分かり合えないだろう。




