平和的交渉47
「では、よろしく頼む」
「ああ、行ってくる。だが攫われた村人に関しては期待するなよ。遺品でもあれば持ってくるが、何も見つからない可能性の方が高い」
「わかっている」
俺達はジャックを初めとする村人達に見送られていた。
俺達との契約に納得している者ばかりではないが、俺達が村人達からの追加条件を呑んだことで一先ずの妥協点には達していた。
「ジャン、頼むぞ。ただし危険ならすぐに逃げろ。死んだ者のために生きる者が死ぬことはない」
「わかってるさ。高木さん達もいるし大丈夫だ」
俺達が呑んだ村人達からの追加条件というのは、村からの監査役を同行させることであった。
俺達が物資の提供を受けるだけ受けてとんずらするのではないかという疑惑を誰かが持ち上げたことが切欠らしいが、俺達がそのつもりならジャンひとりがついてきたところで彼を殺して逃げればいいだけだ。対策としては落第どころか採点するにも値しない。
「高木さん、すみません。どうしても皆を説得できなくて」
「なに、気にするな。お前も大変だな」
俺はジャンに同情の視線を向ける。ジャンはこの対策が無意味である事を自覚した上で、村人達を納得させるために俺達に同行することを決意したのだろう。その根性には敬意を表する。
「なあ、高木殿」
ジャックが俺を近くに呼び寄せて耳打ちしてきた。
「俺はあんたのことは嫌いだが、あんたが約束を守らないクズ野郎だとも思っちゃいない。その上で頼むが――」
「任せろ。ジャンは五体満足で生きて帰してやる」
「……重ねて、よろしく頼む」
ジャックは深々と頭を下げた。
俺は、これはますますジャンを傷つけるわけにはいかなくなったと感じて苦笑した。
「隊長、荷物は準備OKだぜ」
「古島隊も準備完了しているよ」
「望月隊、準備完了」
「小早川隊もだ」
各隊が最終点検を終えて報告してくる。最後に杉下を見ると、「いつでもいけるぜ」とサムズアップが返ってきた。
「よろしい、ならば戦争だ」
勢いよく俺の右手が振るわれるのを合図に、高木隊総員30名と客人1名が隊列を組んで進軍を開始した。




