平和的交渉45
「言いたいことがあるのはお前だろう? それで、どうした?」
「捕虜の扱いについてだけど、情報さえ吐かせれば殺してしまっても構わないわよね?」
「相手はアークデーモンだしな。それで構わん。そもそも物資が少ない中で奴を同行させるのは不可能だから、事が済んだら処理する予定だ」
「素敵ね」
安藤は形のよい唇を弦を引いた弓のように歪めた。薄桃色に頬を染め、うっとりと何かに酔いしれているようなその表情は、何も知らない者の目にはさぞかし淫靡に映ることだろう。
俺は、背筋を冷たいものが流れるのを感じて小さく身震いした。
「さて、荒川、発言しろ」
俺は最後に荒川に発言を促す。荒川は緊張した面持ちで、しかし強い意志を垣間見せる表情でこう主張した。
「わ、私も尋問に加わった方がいいと思うの!」
「やめとけ荒川ァ! いくら腹が減ってるからって、アークデーモンの肉なんか食ったら腹壊すぞ!」
「すぅぎぃしぃたぁ? どうして尋問に加わるとアークデーモンを食べることになるのかしらぁ?」
「ひぃぃ!」
「ふふ、捕虜が目を覚ます前にちょっとウォーミングアップでもしましょうか♡」
「いぎゃああああああああぁあああぁああああぁあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
杉下の絶叫は数分間続き、後には白目を剥いて意識を失った杉下と、とろんとした目で頬を紅潮させている安藤がいた。安藤は夢見心地といった雰囲気で「うふふ……」と小さく笑っている。こいつマジで怖いな。ギャラリーは全員青い顔をしてドン引きである。中には数名吐き気を催している者もいる。以前安藤の不興を買い、杉下と同じ目にあったことがある者達だ。俺は絶対に奴の扱いを間違えないようにしようと、改めて心に誓った。
決意を固めたところで、俺は加藤に目配せして小声で密談を始める。
「なあ、加藤? これって止めてやった方がいいよな?」
「だと思うぜー? 荒川ちゃんには荷が重いでしょーよ。というか、変な影響受けてああいうのが増えたら堪らない」
「同感だ」
「ああん、私は仲間外れ? 寂しいじゃない」
振り返ると、鼻の先が当たるくらいの距離に安藤の顔があった。




