平和的交渉44
「では、我々はこれより物資及び村人の奪還作戦を開始する。準備はふたつ。ひとつ、村人達より支援物資の提供を受ける。これは加藤に一任する。加藤は現戦力より、手が空いている者の中から6名を選抜し、補給部隊を編成せよ。もうひとつは捕虜の尋問である。これには俺も立ち会うが、責任者は安藤とする。安藤は手の空いている者の中から3名を選抜してこれに当たれ。質問のある者はいるか?」
加藤と安藤と、それから荒川が手を挙げた。俺はまず加藤に発言を促した。
「補給部隊の編成の件だが、それは戦利品の運搬まで引っくるめて俺を含めて7人でやれってことなのか?」
「無論、否である。敵から物資を鹵獲し次第、その量に応じて補給部隊は再編する予定だ」
「あいよ、なら問題無い」
次に安藤に発言を許可する。安藤頼子は、長身でスレンダーな体型と切れ長の力強く鋭い瞳が印象的な美少女……というよりは美女という表現が適切な女である。彼女を初めて目にする者は、腰の辺りまで伸ばした艶やかな黒髪と、普段の口数の少なさもあって大和撫子という言葉で彼女を形容する。
しかし、それは……そう、適切な言葉を探すとするならば、本人が狙っているかはともかくとして、実質的には擬態なのである。それも、天敵から身を隠すためのものではなく、むしろ獲物に悟られずに接近するための……。それは、俺が彼女に与えた役割からも覗えることだろう。
「ねえ、何か言いたいことでもあるのかしら?」
俺の胸中を察してか、安藤が俺に向けていた視線の鋭さが増した。この際白状しておくが、俺はこいつが苦手だ。元の世界にいた時から近寄らないようにしてきたが、こっちの世界に来てはっきりと苦手な人種であることを確信した。




