平和的交渉42
「……高木、ここの人達に危害を加える気は、本当に無いんだな?」
「くどい。彼等は俺達にとっても必要な存在……いわば、運命共同体だ。危害など加えたところで百害あって一利なしだ」
「……わかった。ここは俺が身を引こう。だが、魔王軍の残党から食料を取り返すんだろう? そこに戦力が必要じゃないのか?」
「お前はここでグズグズしているべきではないと思うが……問題無い。俺達だけで十分事足りる。どうしてもというなら、ただ働きならさせてやってもいいが」
「ふざけるな。ここは身を引くが、善良な一般市民に危害を加えたら容赦しないからな」
「ははははは! お前ってやつは!」
俺は思わず笑ってしまった。西園寺は「何がおかしい!」と喚いている。本当にこの愚かな勇者は、様々な才能に恵まれながらも、対人関係に関する才能には悉く恵まれなかったようだ。
「いや、な。悪い悪い。ところで、お前の仲間達は他のふたつの村に向かっているんだろう?」
「そうだ」
「大丈夫か?」
「あいつらだってこの世界の基準ではかなり強い! 大丈夫に決まってるだろう!」
「いや、そっちではなく。あいつら、村を襲ったりしていないよな?」
「そんなわけあるか!」
西園寺は激昂した。仲間を疑うことなど微塵も考えていない様子だ。
「そうか、そうか。それならいいんだがな? やはり俺達は飢餓状態だ。お前という抑止力が無い状態で村にある食料を見たら、我慢できなくなってしまうのではないかと思ったが……流石は勇者様! キツく厳命しておいたのだろう?」
「そんなことはしていないが、あいつらは略奪してでも生き延びるというお前の提案を蹴って俺についてきてくれた! 今更略奪なんかするわけないだろう!」
「そうだといいがな」
「なんだ?」
「あいつらは俺の意見に反発してお前のところに残ったんじゃないと思うのは俺だけか?」
「それ以外に理由なんてないだろう!」
「いや、あるだろう。勇者の側にいるのが何よりも安全だという経験則。それこそが彼等の支柱だよ」
西園寺は怒り心頭に発したという感じで目をつり上げた。




