平和的交渉40
「なるほど。では、加護にはどのようなものがあるか知っているか?」
「ええと、勇者や剣聖、賢者、聖女、神官、魔術師、刀匠、鍛冶師……そのくらいでしょうか」
「ほとんど勇者伝説に登場する加護か」
「私のような田舎者ですとこのくらいかと。都会に住む者ならもう少し知識があるのでしょうが」
「では、このハゲはかつて都会に住んでいたのか?」
「まさか。都会の人間が好き好んでこのような貧乏田舎に越してくるはずがありません」
「なるほど、道理だ。であれば――」
俺はハゲ親父の首筋に拳を突き立てた。
「――貴様、何故『審問官』の加護を知っている?」
ハゲ親父は額から滝のように汗を噴出させ、血走った目で首筋に突き立てられた拳を凝視している。
「高木殿、『審問官』とは?」
「他者から情報を引き出す能力に様々な恩恵をもたらす加護だ。大抵は裁判所にいるか、あるいは拷問吏なんかをしている者もいるな。拷問吏は拷問吏で加護があるんだが、加護の通りの職業に就くとは限らんしな。まあ、何にせよ、研鑽を積んだ『審問官』にはある能力が発現する。それは、嘘を見抜く能力だ」
しん、と、ざわめいていた村人達が静まり返る。西園寺も、固唾を呑んで事の成り行きを見守っていた。
「こいつは間違いなく嘘を見抜ける類の加護があることを知っている。だからこそ、俺の質問に違和感を持って途中で口を閉ざしたんだろう。ええ? なんとか言ったらどうだ、ハゲ? その沈黙こそが、お前が黒だということを示す何よりの証拠になるぞ?」
「ふ、ふん、なにを馬鹿なことを……」
ハゲ親父はついに観念したのか、押し潰された豚のような弱々しい声を上げた。
「お前に疚しいところが無いというなら、さあ、俺の質問に答えろ。お前は誰だ? 魔王軍と関わりがあるのか? 俺の目を見て言え」
「お、お、俺は……少し待ってくれ! 一度放してくれ! このままじゃ答えられるもんも答えられん!」
俺はハゲ親父を解放してやった。ハゲ親父は首を擦りながらすぐさま距離をとるが、俺の仲間達と西園寺が周辺を固めている。逃走は不可能だろう。




