平和的交渉39
「お前の脳味噌は鶏並みなのか? さっき名乗ってやったばかりだろうが」
「すまんな。興味が無いことは聞こえない体質でね。もう一度言ってくれ」
「断る」
ハゲ親父は、先程までの雄弁さとは裏腹に、今度は貝のように口を閉ざしたしまった。訊き方を間違えた。どうやら警戒させてしまったようだ。
「何故答えない? 何か疚しいことでもあるのか?」
「……」
「高木さん、そいつはパブロといいまして……」
「いや、彼の口から聞きたいんだ」
一向に口を開こうとしないハゲ親父を見かねてジャンが口を挟んでくるが、それでは意味が無い。ここからは、如何にしてこのハゲに行動を起こさせるかというゲームになる。
「さて、ハゲ。お前は口を開きたくないようだから、先に俺が何故お前に問いかけているか、その理由を明かしておこう。俺はな、この村に魔王軍と内通していた者がいるのではないかと疑っているのだよ」
「内通者ですって!?」
ジャンだけではない。俺の言葉に村人達全員がざわめいた。
「ああ、ほぼ確実にいただろう。魔王軍の諜報技術は見上げたものだぞ? 魔法や魔道具によって姿形を変え、記憶を読み取り、洗脳まで可能だ。そもそも、この村を事実上制圧しておいてひとりも監視役を置かないなんてこことがあり得るか? お前達が破れかぶれになって王国に全てをぶちまけでもしたら、今度は王国軍がお前達を利用して魔王軍に偽の情報を送ることだって可能だったのに? 少なくとも何らかの方法でこの村は監視されていたと考えるべきだろう」
ハゲ親父は口を噤んだままである。しかし、その額を伝う汗の量が尋常ではなくなってきている。
「ところでハゲ。お前は何故、突然口を開くことさえ拒否するようになったんだ?」
「……」
「時にジャン、お前達は加護についてどのくらい知っている?」
「え、神様達がこの世の生き物にもたらす祝福で、これを授けられた者は様々な能力を得ることができるとか。私は加護をお持ちの方を今日まで見たことがありませんでしたが」
ジャンは勇者の方を見ながらそう言った。




