平和的交渉37
「包囲されたから何だっていうんだ! 俺がいる限り、この村の人達には指一本触れさせない!」
「違うのです、違うのです勇者様」
ジャンが悲痛な声を上げた。
「我々が懸念しているのは、王国軍が兵糧攻めを仕掛けてくる場合です」
「そうだ。包囲されてしまったら、もう俺達は食料を得る手段が完全に無くなる。包囲を突破すること自体は勇者様ならできるだろうが、勇者様が食料調達に出かけようもんならその間に俺達は全滅だ」
重苦しい沈黙が場を支配した。
「い、いや、大丈夫だろう! あなた方が俺に強力したことを、一体どうやって王国が知るっていうんだい?」
「ああ、それに関しては俺達がリークするつもりだ」
「高木ィ……! お前はどこまでも……ッ!」
「言ったろ? こっちも死活問題なんだ」
西園寺は、涼しい顔の俺に鬼の形相を向けてくる。勇者がしていい顔じゃ無いだろそれ。していいタイミングがあるとすれば、信じていた国や仲間に裏切られて復讐を誓った時とか……あれ、冷静に考えると割としていいタイミングかもしれない。
「勇者様! あなた様がこいつらの口を封じてしまえばよいのではないですかな? そしてひとまず食料を取り返して頂いて、その後で勇者様のお仲間と共に不足分をどうするか考えては?」
「それは――」
「――不可能、だよなあ?」
俺が不敵な笑みを浮かべると、西園寺は悔しそうに歯噛みした。高木派のメンバーは既に俺の後ろで陣形を組んでいる。西園寺は、彼の持つ伝説の刃が俺の首に届くより早く俺がこの場から去ることができることを知っている。彼もまた、魔王討伐戦の時にはこの手に幾度となく助けられてきたのだから。
「勇者が俺達に攻撃してきた瞬間に、俺達は王都へ向かい、この村が勇者と手を組んだことを伝えるつもりだ。それでもいいというなら、勇者と手を結ぶがいい」
「そ、そ、それでは……それでは我々は……」
「当初の予定通り、高木殿達と取引をするしかないだろう、パブロ」
ジャックが愕然とするハゲ親父に告げた。




