平和的交渉36
ハゲ親父は愕然としていた。俺は、そこですかさず口を挟む。
「その点、我々は奪い返した諸君等の村から奪われた物資の半分で手をうつと言っている。勿論、それだけで冬を越すのは難しいが、少なくとも時間稼ぎにはなる。生きている間にまた何か手を打てばいい。我々も協力するつもりでいる。さて、これでも勇者と組む方が得だと思うかね?」
「ま、待ってくれ! 俺は勇者だ! 彼等より俺に頼んだ方が確実だ! 報酬だって彼等と同じ条件で構わない!」
慌てた様子で食い下がる西園寺。そこへ、ジャンがぽつりと問いかける。
「勇者様……王から指名手配されているというのは本当ですか?」
「なっ!」
「なんですと!? そんなまさか!」
村人達が俄にざわつく。勇者も、このタイミングでこの話を持ち出されるとは思っていなかったようで、目を見開いて言葉を詰まらせていた。
「た、確かに、俺は国から指名手配を受けた。だが、完全に不当なものだ! 俺はこの国のために……いや、この国だけでなくこの世界全ての人達のために魔王を滅ぼした! 何も悪事など働いてはいない!」
「ええ、私もそれ自体は疑っておりません。しかし、勇者様に食料をお渡しした場合、国から我々まで罪に問われる可能性もございます。勇者様はこれにどのように対処して下さるので?」
「国がどれだけ大軍を派遣してこようと、俺が全て退けてみせる!」
「おお、それは心強い!」
力強い勇者の宣言にハゲ親父と周囲の村人達は目を輝かせたが、ジャンとジャック、そして少数の村人達の表情は暗いままだった。
「……それでは、私は勇者様と取引することには反対と言わざるをえません」
「なんで!」
「そうだジャン! 勇者様に勝てる者などこの世には存在せんのだぞ!」
「少しは考えてものを言えよパブロ。お前、今俺達が何で苦しんでいるのかも忘れたのか?」
ジャックの言葉は少ないが、的確に急所を捉えていた。
「国が大軍でこの村を包囲したら、お前達は一体どうするつもりなんだ?」




