平和的交渉30
俺の言葉に、一同は暫く考え込んでいる様子だった。「俺は――」と杉下がなにやら口を開きかけた時、「高木ィィィィィ!!」という絶叫に近い声がどこからか響いてきた。
「さて、我らが勇者西園寺のお出ましだ。俺が最善手を打っているということを、諸君に示す時が来た」
杉下がひとまず口を噤んだのを確認すると、俺は皆を引き連れてジャンを探しに村の中へと戻って行った。
向こうの方でも俺達のことを探していたらしく、ジャンはすぐに見つかった。予想通り、戸惑った様子である。
「あ、あの、高木さん……」
「ああ、ああ、わかっているとも。外で騒いでいる男にあることないこと吹き込まれたのだろう?」
「しかし、彼は勇者で、あなた方が我々から略奪を行なおうとしていると――」
「順番に答えよう。まず後ろの質問から。我々はあなた方から食料を手に入れるのが目的であることは事実だが、その話は互いの合意の下で一応の落としどころが見つかったと認識している。そして前半の話だが、彼が勇者であること自体は間違いない」
「それは――そうなのですか。しかし、それならば……」
ジャンは思案顔で黙り込んだ。
「ジャン、お前が何を考えているかは想像がつく。我々ではなく勇者と交渉した方が利があると考えているだろう?」
「そ、そんなことは――!」
「いい、いい。君達からしてみれば、一見そちらの方が有利に見えるのも無理もない。しかし、君達から見ても、彼と組むよりも我々と組む方が利が大きいのだ」
「と、仰いますと?」
「君達が知らない点がいくつかある。まず、今ここには勇者ひとりしか来ていないが、勇者も仲間を引き連れており、全部で我々とほぼ同じ人数を抱えている。ということは、我々と組もうが勇者と組もうが、その後で要求される物資の量は変わらないということだ」
「しかし、彼は勇者なのでしょう? それだけで、彼と組む理由としては十分なのではないですか?」
「ふん、やっと腹を割る気になったか?」
「あ、いや……」
「冗談だ。しかし、それもまた逆だ。勇者だからこそ、君達は奴と組んではいけないのさ」




