平和的交渉24
溶岩の表面に目を凝らせば、確かに何か棒状のものが浮いている。その物体の周辺で溶岩がボコボコと沸騰していることからも、それが如何に高温であるかが覗えた。
一応、近づく策はあった。儀式魔法で溶岩の泉ごと凍結させれば、棒が放つ熱で棒の周辺だけが溶け、ちょうど棒付近までの足場ができるのではないか、と仮説を立てていた。実際に同行してきた魔法使いに泉を凍結させると、氷は全て一瞬で蒸発してしまったが、溶岩の大部分が固まって足場になっていた。しかし、固まっていてもまだ溶岩だった辺りは高温で、靴越しにもその熱が感じられるほどだった。泉だった場所の端近くはなんとか歩けても、棒に近づくととても立っていられなくなるほどに。そこで、魔法使い達にもう一度棒の周囲を凍結させた。今度こそ、棒に相当近い範囲までを歩ける程度には冷却することができた。
手を伸ばせばギリギリ棒に触れることができるかどうか、というところまで近づいて、それ以上近づけなくなった。棒そのものから放たれる異常な熱気のためである。ためしに不要な書類の切れ端を丸めて投げると、棒に接触するより前に空中で発火した。
これは本格的に手の打ちようが無いように思えた。この棒にはそもそも触れることさえ叶わない。なんとかここまで近づくことはできたが、そうして立ち往生している間にも刻一刻とこの場所の温度は上がっている。直にまた立っていられないほどになり、そして溶岩の泉に戻るだろう。
「何か、何か無いだろうか?」と棒の周囲をうろうろと歩き回る。既に気温は相当上がっており、額からは滝のように汗が流れ落ちる。足の裏から感じる熱も、次第に耐え難いものになってきた。諦めて踵を返そうとしたその時、目の端でそれを捉えた。棒の先端、その円形の面に、見覚えのある印が刻まれていた。1本の真っ直ぐな角を3対の曲がった角が囲んでいるようにも、広げた翼のようにも、抽象的こ描かれた炎のようにも見えるその印は、この世界の神話にある罪を犯した神に刻まれる烙印であった。




