平和的交渉23
俺が老人――後にガッカと名乗った――にそのような頼み事をしたのは、その灼熱の棒をグングニルの刃代わりに使えないかと考えたからだ。ガッカの話では、その棒は太さこそコインを数枚並べた程度であるものの、長さは貴族の屋敷を3つ並べた程もあるとのことで、射程距離の面では不足は無いように思えた。しかも、ガッカの話ではその棒は溶岩の上を漂っているらしい。つまりは溶岩よりも軽い物体ということになる。であれば、付与魔法の力不足の問題さえも解決できるのではないだろうか? 俺の期待は嫌が応にも膨らんだ。
しかし、問題もある。そこにあるだけで周囲の岩盤が融解するほどの熱気を放つというその棒に、一体どのようにして近づくのか? 最も簡単なのは勇者西園寺を使うことだろう。彼ならば近づいて封印を施すばかりか、かつての英雄のようにその棒を使いこなすことさえできるかもしれない。しかし、彼をガジル要塞の防衛から外すというのは、現実的には無理な相談であった。
結局、名案は浮かばなかったが、考えているだけでは仕方ないという結論に至り、実際にその棒を見に行くことになった。メンバーは俺とガッカ、封印及び付与魔法担当の王国所属の魔法使いが6名と、王国が雇った技術者からの志願者が15名。勇者部隊から数名連れて行こうとしたが、これは王命で止められてしまった。
ガッカの故郷はガジル要塞から馬で東へ1週間駆けた所にある山の中にあった。そこの住人達は皆小柄で、男性は毛深い人が多かった。そういう人種なのかと思っていたが、彼等こそがあのドワーフという種族らしかった。ドワーフの集落に着いたその日はガッカの家に案内されて一晩を明かした。部屋の数こそ少なかったものの、倉庫が広大であったために20人余り全員が入ることができた。鍛冶場も大きかったが、ここへの無断での立ち入りは禁じられた。ガッカの職人気質は十分に理解していたので、特に気を悪くすることもなく諒解した。
翌日、ガッカの案内で件の溶岩の泉へと向かった。山を集落のある場所から更に上へと登って行くと、ついに白煙を上げる赤熱した泉が姿を現した。




