平和的交渉19
「それに関してだが、俺は当時の魔王軍の行動に対するある程度整然と説明することができる」
俺は一様に釈然としない表情を浮かべるメンバー達に告げた。
「目的は不明だと言わなかったか?」
「不明だ。だから推測に過ぎない」
「……一応聞かせてくれ」
杉下が俺に説明を求める。如何に根拠の薄い主張だとしても、俺の言を軽視する人間はここには一人もいない。これは西園寺派の面々を含めても変わらないだろう。俺の頭脳の価値は、これまでの戦いで既に十二分に示されているのだ。
「ここに現れた魔王軍の目的……それはガジル要塞だ」
「ガジル要塞? グングニルを設置した?」
「そうだ」
グングニルとは、俺達の発案・指導の下、デミス王国が雇った技術者達が作成した兵器である。これが開発されたことにより、俺達が魔王領へ進軍することができるようになったのだ。
元々、ガジル要塞こそが戦いの最前線であり、俺達はそこの防衛に当たっていた。ガジル要塞は南にデミス王国の王都シンピアを抱き、西に沈黙の森、北に魔王領を見据える国防の重要拠点のひとつである。大陸全体の情勢が対魔王に傾いていたために軽視されがちだったが、沈黙の森の先にはグリム帝国領が広がっているため、そちらと事を構える可能性まで考えれば、この要塞はデミス王国で最も重要な拠点であると言っても過言ではないかもしれない。そのような立地から、ガジル要塞が陥落すればデミス王国の王都シンピアは丸裸同然となるため、王からは「死守せよ」との命を受けていた。……尤も、本当に命を賭ける気など更々無かったが。
戦況は常に膠着状態だった。勇者がいる限り、その運用さえ間違えなければ要塞が陥落することこそ無かったが、魔王軍は魔王軍で物量にものを言わせて大河のように軍勢を送り込んできた。
そのような状況がひと月続き、焦れに焦れた勇者部隊(というか俺)が王にある策を献じた。それこそが件の兵器、グングニルの開発である。




