平和的交渉17
「この辺に投入されていた魔王軍がどういう編成になっていたか知っている奴はいるか?」
加藤が言うと、杉下は押し黙った。それ以外の面々も互いに顔を見合わせるばかりで、先の質問に答えられる者はいないようだ。無理も無い。そもそもここでの戦いの当時、俺達は魔王城攻略のまっ最中であったし、それが終わっても英雄に祭り上げられて凱旋したかと思えば指名手配である。俺や加藤のように、そもそもこの国を完全に敵と認識していた者でない限り、魔王討伐という使命を達した直後にも緊張の糸を張りつめて情報収集に奔走するという気にはならないだろう。
「魔王軍第4師団、魔王軍四天王『星霜』のクドリャフカ配下のアークデーモン一個小隊、それから現場司令官として『剣鎧』のケンベイ。これらがここに差し向けられていた魔王軍の全てだ」
「第4師団……ゴーレム師団か」
杉下が左手を顎に当てて呟いた。右手を俺の胸ぐらから離す気はまだ無いらしい。
「そ。つまり、この辺の兵隊は人間が食うような食料ではなく、魔力と身体を組成する物質そのものを糧にするゴーレムだったわけ。村人が言ってた空飛ぶ猿ってのは多分ガーゴイルだろうな。そしてフードの旅人はアークデーモンだろう。なんにせよ、ここにいた兵士の中で人間と同じ食料を消費できたのはケンベイとアークデーモン小隊しかいなかったんだよ」
半数程度はこの説明で納得したような表情を浮かべたが、もう半数はまだ何かに引っかかっているような表情で、杉下は勿論後者だった。
「……いや、だとしてもそのアークデーモン小隊、クドリャフカの配下だったな? あいつは魔王軍の補給を一手に担っていたはず。つまり、そのアークデーモン小隊は本来補給部隊のはずだ。魔王領からここまで物理的に補給線を築けるとは到底思えないから、奴等の輸送手段は転移魔法か何かだろう。であれば、ここで獲得した余剰物資は他の現場に回されている可能性が高いんじゃないのか?」
「いや、実はその可能性は低いらしい。これは高木が説明してくれ」
「ああ」




