平和的交渉13
「今すぐにというのは不可能です!」
「ではどれくらいかかる?」
「それは……せめて2、3日頂けないと」
「そんな時間は無い。10分で決めろ」
「そんな!」
「おいジャン、こんな奴等信用できん。やっていることが詐欺師やマフィアと同じじゃないか! 俺は死んでも、こんな奴等とは取引しないからな!」
俺は視線だけを「俺達を信用できない」と発言した男に向けた。
「お前、名前は?」
「お前に名乗る名は無い」
「そうか。俺達と組むくらいなら死ぬそうだな?」
「ああ、お前等みたいなのと組むくらいなら死んだ方がマシだ!」
「なら死ね」
俺が名も知らぬその男に拳を向けると、次の瞬間、男は絶叫して床に膝をついた。右側の脇の下辺りを両手で押さえており、足下には少なくない量の血液が滴り落ちた。
「待って下さい! 待って下さい!」
ジャンが慌てて俺の足下に縋り付いた。
「何故だ? この話がどう転んでもこいつは死ぬらしいぞ?」
「そうはなりません! 自分がなんとしてでも説得しますから!」
「ほう? ではお前はこの話に乗るということか?」
「ええ、ええ、乗りますとも! 喜んで! 皆もそうだろう!?」
脇の周囲を血に染めて苦痛に喘ぐ男を解放しつつ、残りの男達は壊れた絡繰り人形のように何度も首を上下させた。
「ま、待て……! 俺に構……うな……っ! こい……つらの話に……応じては……いかん……っ!」
「で、でも親父!」
ジャンに親父と呼ばれたのは、俺に撃たれた例の男である。顔中に脂汗を浮かべて息も絶え絶えになりながら、まだ心を折られていない。その辺の農民にしては見上げた根性である。
「こういう奴等と一度でも取引したら……その後は永遠に……奪われ続ける……。生かさず……殺さず飼い慣らして……俺達の稼ぎの……上前をはねていく……。こいつらは……そういう奴等だ……っ! 絶対に……取引してはならん……っ! 命を賭して……戦わねばならんのだ……っ!」




