第9話 『王命と黒騎士』
街の門前。
朝日が石畳を照らす中、十数人の騎士がレインたちを静かに包囲していた。
その中心に立つ黒髪の女騎士は、腰の剣に手を添えたまま名乗る。
「王国第一騎士団副団長、セリーナ・ヴァルグレイです。」
その声は冷静で、感情がほとんど感じられない。
「レイン・クロード。あなたに王命が下りました。」
アイリスが一歩前へ出る。
「いきなり連行なんておかしいじゃない!何をしたっていうの!」
セリーナは視線をアイリスへ向ける。
「罪人だからではありません。」
「保護対象だからです。」
その言葉にレインは眉をひそめた。
「保護?」
「昨夜、世界各地で異常な魔力反応が観測されました。その中心にいたのが、あなたです。」
レインは無意識にポケットの中の黒い金属板へ触れる。
やはり、あれが原因なのか。
「理由を聞いても?」
「私に話せるのは一つだけです。」
セリーナは真っ直ぐレインを見る。
「あなたは、この国だけでなく世界中から狙われる可能性があります。」
空気が重くなる。
「……だから保護する、と?」
「はい。」
レインはしばらく考え込む。
確かに、自分にはまだ分からないことが多すぎる。
この設計士という能力。
創造神。
封印。
第一設計図。
すべてを知るには王都へ行くのも悪くない。
「分かった。」
「行こう。」
アイリスは驚いた。
「えっ!?そんな簡単に!?」
「情報が必要だからな。」
その瞬間だった。
ドォォォォォン!!
街の外壁が爆発した。
「敵襲!!」
騎士たちが一斉に武器を抜く。
煙の中から現れたのは、全身を灰色のローブで隠した男たち。
全員が仮面をつけている。
「見つけたぞ。」
低い声が響く。
「創造者。」
セリーナの表情が変わる。
「まさか……!」
「《無貌教団》……!」
騎士たちがざわつく。
「無貌教団?」
レインが尋ねると、セリーナは短く答えた。
「世界中で暗躍する最悪の組織です。」
「目的は一切不明。」
「ですが、一つだけ確かなことがあります。」
「創造神に関わるものを執拗に狙う。」
その瞬間。
仮面の男が手をかざす。
「殺すな。」
「生け捕りにしろ。」
数十本もの黒い鎖が地面から飛び出した。
「下がれ!」
騎士たちが迎え撃つ。
金属音が響く。
しかし異変が起きる。
「なっ……!」
騎士の剣が黒い鎖に触れた瞬間、まるで砂のように崩れ落ちた。
「武器が分解された!?」
レインの目が見開く。
「……分解。」
自分の能力とは逆だ。
作る力ではない。
壊す力。
「面白い。」
仮面の男が笑う。
「創造者なら理解できるだろう?」
「世界は創造と破壊、その二つで成り立つ。」
「ならば我らは破壊を司る。」
その瞬間、男の足元に黒い魔法陣が広がる。
巨大な黒い腕が地面から現れ、騎士たちを吹き飛ばした。
「ぐあぁっ!」
セリーナも数メートル弾き飛ばされる。
「副団長!」
レインは木箱へ手を伸ばす。
しかし、その前に黒い鎖が腕へ巻き付いた。
「捕らえた。」
仮面の男がゆっくり近づく。
「抵抗するな。」
「お前は我らに必要だ。」
その時。
レインの胸元で黒い金属板が強く輝いた。
『第二設計図の条件を確認。』
『創造者の生命が危険状態。』
『限定解除を開始します。』
レインの視界が真っ白に染まる。
頭の中へ、今までとは比べ物にならないほど膨大な設計図が流れ込んできた。
武器。
鎧。
魔導具。
城。
橋。
そして――
「生命構造設計」
「これは……。」
レインが思わず息をのむ。
次の瞬間。
世界が、ゆっくりと止まったように見えた。
⸻
後書き
ここから物語はさらに加速していきます。
次回、第10話では設計士の能力が大きく進化し、レインが初めて世界の常識を覆す戦いを見せます。
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