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世界創造の設計士 ~外れスキル《UNKNOWN》は文明を創る唯一の力でした~  作者: 谷本遥叶


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6/10

価値

翌朝。


 工房には朝から村人が集まっていた。


「ガイル!」


「昨日のあれ、もう一個できたか?」


「うちにも欲しい!」


「いや、俺が先だ!」


 普段は静かな工房の前が、小さな市場のようになっている。


 ユウトは驚いた表情で父を見る。


「なんでこんなに?」


 父は苦笑した。


「昨日、橋の修理に来ていた職人たちが広めたらしい。」


「そんなに便利だった?」


「職人は道具に敏感だからな。」


 そう言って父は昨日作った木製固定具を作業台へ置いた。


「見てろ。」


 村人たちは順番に触る。


「おお……。」


「木が動かねぇ。」


「これなら一人でも削れる。」


「欲しい。」


 その言葉が何度も聞こえる。


 ユウトは少し照れくさくなった。


 自分が作った物が、こんなにも喜ばれるなんて思ってもみなかった。



 しかし、父は首を横に振った。


「すまん。」


「まだ売れん。」


「え?」


 村人たちも驚く。


「なんでだ?」


 父はユウトを見る。


「まだ値段を決めてない。」



 値段。


 その言葉を聞いた瞬間、ユウトは固まった。


 昨日まで考えたこともなかった。


 作ることばかり考えていた。


「親父。」


「なんだ。」


「いくらなら売れると思う?」


 父は少し考え込む。


「材料代だけなら銀貨二枚程度。」


「じゃあ銀貨二枚?」


「違う。」


「え?」


「お前は材料しか見ていない。」


 父は作業台へ座る。


「作る時間。」


「……。」


「技術。」


「……。」


「失敗する可能性。」


「……。」


「全部値段なんだ。」


 ユウトは黙って聞いていた。


 父は続ける。


「いい物だから高いんじゃない。」


「人が、その価値を認めるから高いんだ。」



 その言葉は雷に打たれたようだった。


 価値。


 今まで一度も考えたことがなかった。


 自分は


「便利だから売れる。」


と思っていた。


 違う。


 便利でも


 誰も欲しくなければ価値はない。



 そこへ、一台の馬車が工房の前へ止まった。


 村では見たこともない立派な馬車だった。


 扉が開く。


 中から一人の男が降りてくる。


 黒いコート。


 整えられた髭。


 高そうな革靴。


 腰には短剣。


 どう見ても村人ではない。


「失礼。」


 男は工房を見渡した。


「ここで面白い道具が作られたと聞きまして。」


 父は一歩前へ出る。


「あなたは?」


「王都の商会です。」


 男は笑顔で頭を下げた。


「レオン商会、副支配人のクラウスと申します。」


 その瞬間、周囲がざわつく。


「王都?」


「商会?」


「なんでこんな村に?」


 クラウスは木製固定具を手に取った。


 何度か触る。


 木材を固定する。


 静かに頷く。


「面白い。」


 そしてユウトを見る。


「これを作ったのは君かな?」


「……はい。」


「名前は?」


「ユウトです。」


「何歳?」


「十六。」


「そうか。」


 クラウスは笑った。


「交渉しよう。」



 父が眉をひそめる。


「交渉?」


「ええ。」


「何の。」


「この道具です。」


 クラウスはゆっくり言う。


「百個。」


 その場の空気が止まる。


「百個作っていただけませんか。」


 ユウトも父も言葉を失った。


 百個。


 一つ作るだけでも半日近くかかる。


 それを百個。


「もちろん。」


 クラウスは笑顔のまま続ける。


「相応のお金は払います。」


 父は静かに首を横へ振る。


「無理です。」


「理由を聞いても?」


「人手が足りません。」


「そうですか。」


 クラウスは残念そうに頷く。


 しかし帰ろうとはしなかった。


「なら。」


 少し笑う。


「人を雇えばいい。」



 その一言が、ユウトの胸へ深く刺さった。


 人を雇う。


 そんな発想、一度もなかった。


 工房は家族だけでやるものだと思っていた。


 だが。


 人を雇えば。


 もっと作れる。


 もっと売れる。


 もっと生活が良くなる。


 もっと世界を変えられる。



 その瞬間。


 青白い文字が浮かんだ。



《文明ツリー更新》


新カテゴリー解放


【商業】



《新規目標》


工房を経営してください。



「経営……?」


 ユウトは思わずその文字を見つめる。


 能力は、また新しい道を示していた。


 「作るだけでは世界は変わらない。」


 「広める者こそが世界を変える。」


 その意味を知る日は、もうすぐそこまで来ていた。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!


第6話では、「ものづくり」から一歩進み、「商売」と「経営」という新しいテーマが動き始めました。


ユウトがこれから職人として成長するのか、それとも経営者として世界を変えていくのか――ぜひ楽しみにしていただけたら嬉しいです!


「面白い!」

「続きが読みたい!」

「ユウトを応援したい!」


そう思っていただけましたら、ぜひ★★★★★評価やブックマークで応援していただけると、とても励みになります!


また、感想や考察も大歓迎です!

皆さんの声が、この作品をもっと良くする力になります。


次回、第七話「初めての商談」

ユウトは初めて「価値」と「利益」の世界へ足を踏み入れます。ここから物語は、職人の成長だけでなく、経営と文明革命へと大きく動き始めます。

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