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世界創造の設計士 ~外れスキル《UNKNOWN》は文明を創る唯一の力でした~  作者: 谷本遥叶


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5/10

古びた設計図

白髪の老人が去ったあとも、ユウトは手の中の古びた紙を見つめたまま動けなかった。


 羊皮紙は何度も折り畳まれ、端は擦り切れている。


 ところどころ文字が薄れ、普通なら燃やす薪と間違えてもおかしくないほど古い。


「設計図……。」


 老人は確かにそう言った。


 だが、ユウトにはただの線と記号の羅列にしか見えない。


 家へ帰るまでの道中も、ずっとその紙のことが頭から離れなかった。


 父は隣を歩きながら口を開く。


「珍しい人だったな。」


「知ってる人?」


「昔は王都でも有名だった職人らしい。」


「らしい?」


「俺も若い頃に一度見たことがあるだけだ。」


 父は少し懐かしそうに笑った。


「今じゃ村で静かに暮らしてる変わり者だ。」


「職人だったんだ……。」


「腕は本物だったと聞く。」


 それだけ言うと父は黙って歩き始めた。



 夕食を終え、家族が眠った頃。


 ユウトは静かに工房へ降りる。


 ランタンへ火を灯し、作業台へ羊皮紙を広げた。


「本当に設計図なのか……。」


 深呼吸を一つ。


 そして紙へ手を置いた。


 その瞬間だった。



《未知の設計図を確認》


解析を開始します。



 青白い文字がゆっくりと浮かび上がる。


 同時に、羊皮紙へ描かれていた線が淡く光り始めた。


「やっぱり……。」


 普通の紙じゃない。


 能力が反応している。



《解析率》


3%


8%


15%



 数字が少しずつ増えていく。


 しかし二十%へ届く直前。



《解析失敗》


文明知識が不足しています。



 表示はそこで止まった。


「失敗……?」


 もう一度試す。


 結果は同じだった。


 何度やっても二十%で止まる。


「知識が足りないってことか。」


 設計図は見えている。


 だが、自分には理解できない。


 まるで大学の教科書を子どもへ渡したようなものだ。


 知識がなければ意味を持たない。



「じゃあ。」


 ユウトは工房を見回す。


 父が普段使っているノコギリ。


 カンナ。


 木槌。


 鑿。


 一つずつ能力で解析していく。


 どんな構造なのか。


 なぜその形なのか。


 どう改良できるのか。


 ひたすら読み込んだ。



《木工知識》


習熟度上昇



《構造理解》


Lv1



「レベル……?」


 初めて見る表示だった。


 能力は発明だけではない。


 知識そのものも蓄積している。


「つまり……。」


 知れば知るほど能力も強くなる。


 ユウトは自然と笑みを浮かべた。


「面白い。」



 翌朝。


「ユウト。」


 朝食中、父が珍しく話しかけてきた。


「昨日の道具なんだが。」


「うん。」


「村長がもう一つ欲しいと言ってた。」


「え?」


「橋の修理でも使いたいらしい。」


「本当に?」


「かなり気に入ったみたいだ。」


 ユウトの胸が熱くなる。


 自分が作った物が、人の役に立つ。


 こんなに嬉しいことだったのか。


「作る!」


「そんな簡単じゃない。」


 父は真剣な顔になる。


「一つ目は偶然かもしれない。」


「……。」


「同じ物を二つ作れて初めて職人だ。」


 その言葉にユウトは頷いた。


「分かった。」



 工房へ入ると、昨日の設計図を開く。



《木製固定具》


設計図保存済み


再製作を開始しますか?



「開始。」


 昨日とは違った。


 どこを削るか。


 どの順番で組み立てるか。


 頭へ自然と流れ込んでくる。


 まるで一度覚えた料理をもう一度作るような感覚だった。


 木を切る。


 削る。


 穴を開ける。


 組み立てる。


 昨日の半分ほどの時間で完成した。


「できた。」



《設計図再現成功》


完成度


96%


初回より品質が向上しています。



「昨日より早い……。」


 設計図は保存されるだけじゃない。


 作るたびに改善される。


「この能力……。」


 ユウトが完成品を見つめていると。


「ほう。」


 背後から声がした。


 振り返る。


 昨日の老人だった。


「もう二つ目を作ったか。」


「おじいさん。」


「見せてみろ。」


 老人は完成した道具を受け取る。


 じっと眺める。


 何も言わない。


 五分ほど沈黙が続いた。


 そして。


「……誰にも教わっておらんのだな。」


「はい。」


「そうか。」


 老人は静かに笑った。


「なら、お前さんは本物だ。」


 ユウトは首を傾げる。


「本物?」


「才能ではない。」


「え?」


「資格だ。」


 その一言だけを残し、老人は工房を出ようとした。


「待って!」


「なんだ。」


「あの設計図。」


「まだ読めん。」


「やっぱり。」


「だが。」


 老人は振り返る。


「その設計図を読める日が来た時、お前の人生は二度と元には戻らん。」


 そう言って歩き去っていった。


 ユウトは羊皮紙を握りしめる。


「資格……。」


 老人の言葉の意味はまだ分からない。


 しかし、その夜。


 能力は新たな通知を表示した。



《新規目標を設定しました》


【古代設計図の完全解析】


現在進行率


18%



 そして、その下には今まで存在しなかった文字が一つだけ浮かんでいた。



《???》


“設計者を探しています”



ユウトはまだ知らない。


自分を探している存在が、この世界のどこかで長い眠りについていることを。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!


少しずつですが、ユウトの能力の正体と、この世界の謎が動き始めました。


「続きが気になる!」

「この作品応援したい!」


と思っていただけたら、ぜひ★★★★★評価やブックマークをしていただけると、本当に励みになります!


また、


* 「このキャラ好き!」

* 「この設定面白い!」

* 「ここはもっとこうした方がいいかも!」


などの感想も大歓迎です!


皆さんの応援が、この作品をもっと面白くする力になります。


次回、第六話では、ユウトが初めて”商売”という世界に足を踏み入れます。

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