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世界創造の設計士 ~外れスキル《UNKNOWN》は文明を創る唯一の力でした~  作者: 谷本遥叶


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2/10

見えない設計図

 橋の修理が終わる頃には、空はすっかり夕焼け色へ染まっていた。


 父は額の汗を拭いながら大きく息を吐く。


「これでしばらくは大丈夫だろう。」


「親父。」


「ん?」


「もし橋を全部作り直すなら、どうする?」


 父は少し驚いた顔をした。


「急にどうした。」


「いや、気になっただけ。」


「そうだな……」


 父は橋を見つめる。


「今の村じゃ無理だ。」


「なんで?」


「木材も人手も足りん。それに橋一本造るにも金がかかる。」


 その言葉を聞きながら、ユウトはもう一度橋を見る。


 ――見えろ。


 そう思った瞬間だった。



解析開始


構造物:木橋


耐久:52


損傷率:48%


改善可能箇所:126


推奨改善


・支柱追加


・荷重分散


・接合部変更


・木材品質変更



「……!」


 まただ。


 今度ははっきり見えた。


 青白い文字が橋全体へ重なるように浮かんでいる。


 しかも、一本一本の木材が色分けされている。


 赤。


 黄色。


 緑。


 まるで危険な場所を教えているようだった。


「ユウト?」


 父の声で我に返る。


「顔色悪いぞ。」


「いや……何でもない。」


 言えるわけがない。


 橋に文字が浮かぶなんて。


 自分でも信じられない。



 家へ帰る途中も、ユウトは能力のことばかり考えていた。


 あれは幻覚なのか。


 病気なのか。


 それとも本当に神から授かった力なのか。


「試してみよう。」


 工房へ戻ると、父はまだ工具を片付けていた。


「親父。」


「なんだ?」


「この木、もらっていい?」


「端材なら好きに使え。」


「ありがとう。」


 工房の隅に積まれていた木材を手に取る。


 その瞬間。



解析開始


樫材


品質:D


乾燥率:81%


加工適性:B


改善可能



「木にも出る……。」


 思わず呟く。


 父には聞こえなかったようだ。


 ユウトは次々と木材を手に取る。



樫材


品質:D



白樺


品質:C



赤松


品質:E



「全部違う……。」


 見た目ではほとんど分からない。


 それなのに能力は細かく判別している。


「じゃあ工具は……?」


 ノコギリを持つ。



木工用鋸


耐久:63


切断性能:D


改善可能



 金槌。



木槌


耐久:91


改善不要



「全部見える……。」


 心臓が高鳴る。


 この能力。


 ただ見るだけじゃない。


 “改善可能”


 その文字がずっと気になっていた。


「改善って何だ?」


 ノコギリをじっと見る。



改善案を表示しますか?



「表示。」


 瞬間。


 頭の中へ設計図が流れ込む。


 刃の角度。


 柄の太さ。


 重心。


 全部。


「うわっ!」


 あまりの情報量に思わず後ろへよろけた。


「ユウト!」


 父が駆け寄る。


「どうした!」


「だ、大丈夫。」


「顔真っ青だぞ。」


「ちょっと立ちくらみ。」


「今日はもうやめろ。」


 父は珍しく心配そうな顔をしていた。



 夕食。


 母がスープを運ぶ。


「橋は直った?」


「応急処置だけどね。」


「また壊れそう?」


「そのうち。」


 ユウトは黙ったままパンをかじる。


 頭の中では設計図が何度も再生されていた。


 もしあの通りに橋を作れば。


 もっと丈夫になる。


 でも。


「……。」


 言えない。


 説明できない。


 父が何十年も積み重ねた技術を、自分が急に知っているなんて。


 信じてもらえるはずがない。



 夜。


 家族が眠った後。


 ユウトは一人で工房へ降りた。


 月明かりだけが差し込む静かな工房。


 昼間見たノコギリを手に取る。


「本当に改善できるのか……。」


 設計図を思い浮かべる。


 刃を少し削る。


 柄の角度を変える。


 重心をほんの数ミリだけ後ろへ。


 作業は一時間ほどだった。


 最後に息を吐き、ノコギリを持ち上げる。



改善完了


品質:D→C


切断性能:向上


耐久:向上


初回改善成功


権限0.2%



「権限が……増えた?」


 昨日は0.1%。


 今日は0.2%。


 数字はほんの少ししか増えていない。


 だが確実に変化している。


「やっぱり夢じゃない。」


 ユウトは改良したノコギリを見つめた。


 その時だった。


 工房の入口から声がした。


「……ユウト。」


 振り返る。


 そこには父が立っていた。


 改良されたノコギリを見つめながら、静かに口を開く。


「そのノコギリ……。」


「親父……。」


「お前……。」


 父はゆっくりノコギリを受け取る。


 一度だけ木材へ刃を入れた。


 スッ――。


 信じられないほど滑らかに木が切れる。


 父の表情が変わる。


「……何をした。」


 ユウトは答えられなかった。


 能力のことはまだ誰にも言えない。


 父はノコギリを見つめたまま、小さく呟く。


「こんな加工……俺でも思いつかなかった。」


 工房に静寂が流れる。


 そして、ユウトの視界に新たな文字が浮かんだ。



新規カテゴリー解放条件を確認しました。


【創造】まで残り1%。



「創造……?」


 その言葉の意味を知る日は、まだ少し先だった。

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