初めての創造
翌朝。
工房に響く木槌の音でユウトは目を覚ました。
昨日、父に見られた改良したノコギリ。
あの後、父は何も聞かなかった。
ただ一言だけ。
「今日は早く寝ろ。」
そう言って工房へ戻っていった。
何を考えているのか分からない。
怒っているようでもなく、喜んでいるようでもない。
それが余計に気になっていた。
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「おはよう。」
食卓へ降りると母が笑顔で迎える。
「今日は珍しく早起きね。」
「ちょっとね。」
父は黙ってパンを食べている。
視線だけが時々こちらへ向く。
昨日のことを考えているのは間違いない。
「ユウト。」
父が静かに口を開く。
「今日は仕事を手伝え。」
「え?」
「昨日のノコギリ。」
「……。」
「もう一度見せろ。」
ユウトは黙って頷いた。
⸻
朝食を終えると二人は工房へ向かう。
父は一本の丸太を作業台へ置いた。
「切ってみろ。」
「俺が?」
「昨日改良したノコギリで。」
ユウトはゆっくりノコギリを握る。
刃を木へ当てる。
軽く引く。
スッ……
驚くほど滑らかだった。
「……。」
父は何も言わない。
今度は父がノコギリを握る。
同じように切る。
「……軽い。」
父は眉をひそめる。
「力がほとんどいらん。」
何度も切る。
そしてユウトを見る。
「どうやった。」
「……分からない。」
嘘ではない。
本当に分からない。
頭へ浮かんだ設計図を、そのまま形にしただけだ。
「気付いたら思いついた。」
父は腕を組む。
「才能……なのか。」
⸻
昼過ぎ。
父は街へ納品へ出掛けた。
母は洗濯。
工房にはユウト一人だけが残った。
「……。」
今なら試せる。
改良ではない。
“創る”ことを。
視界を閉じる。
昨日見えた文字を思い出す。
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【改善】
解放済
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【創造】
ロック中
残り0.8%
⸻
「やっぱりまだ駄目か。」
ため息をつく。
その時。
工房の隅に積まれた端材が目に入った。
細い板。
丸い木。
短い棒。
どれも捨てる予定の木材だ。
何となく手に取る。
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解析開始
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木材の情報が流れる。
その瞬間。
青白い光が一瞬だけ揺れた。
⸻
新規設計を開始しますか?
⸻
「……え?」
昨日まで無かった表示。
鼓動が速くなる。
「設計?」
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新しい道具を設計します。
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「新しい……。」
頭の中へ無数の線が浮かぶ。
歯車。
木材。
支柱。
ネジ。
見たこともない構造。
「これ……。」
ユウトは思わず木炭を手に取った。
紙へ線を引く。
一つ。
二つ。
三つ。
止まらない。
まるで誰かが手を動かしているようだった。
気付けば一枚の設計図が完成していた。
「……何これ。」
木材を二枚。
棒を一本。
木槌。
ノミ。
夢中で削る。
時間を忘れて組み立て続けた。
気付けば夕方。
作業台の上には見たことのない道具が置かれていた。
木材を挟むための器具。
片側の棒を回すだけで、木がしっかり固定される。
「これ……。」
木を挟む。
動かない。
もう一度回す。
さらに固定される。
「すごい。」
今まで両手で押さえていた木材が片手で固定できる。
これなら作業速度が何倍にもなる。
その瞬間。
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初めての創造に成功しました。
⸻
権限
0.2%
↓
1.0%
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【創造】
解放
⸻
ユニーク設計図
保存しました。
⸻
「できた……。」
初めて、自分だけの作品を作った。
その時。
「ユウト。」
振り返る。
父だった。
いつ帰ってきたのか。
工房の入口に立ち、道具を見つめている。
「それは何だ。」
「……分からない。」
「使ってみろ。」
ユウトは木材を挟み、棒を回した。
父は黙って木材を引っ張る。
動かない。
「……。」
父は何度も触る。
木を固定したまま削ってみる。
目を見開く。
「これは……。」
職人の顔になっていた。
「便利だ。」
その一言だけだった。
しかしユウトにとって、それは何より嬉しい言葉だった。
父が初めて、自分の作った物を認めてくれた。
「親父。」
「なんだ。」
「これがあればもっと早く家具が作れる。」
「……そうだな。」
「みんな楽になる。」
父はゆっくり笑った。
「お前、本当に面白い奴だ。」
その夜。
眠りについたユウトの視界に、再び青い文字が浮かぶ。
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権限1.0%
新機能を解放しました。
【文明ツリー】
アクセス可能
⸻
「文明……?」
その言葉の意味を知る時。
世界の運命は、大きく動き始めるのだった。
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