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世界創造の設計士 ~外れスキル《UNKNOWN》は文明を創る唯一の力でした~  作者: 谷本遥叶


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3/10

初めての創造

翌朝。


 工房に響く木槌の音でユウトは目を覚ました。


 昨日、父に見られた改良したノコギリ。


 あの後、父は何も聞かなかった。


 ただ一言だけ。


「今日は早く寝ろ。」


 そう言って工房へ戻っていった。


 何を考えているのか分からない。


 怒っているようでもなく、喜んでいるようでもない。


 それが余計に気になっていた。



「おはよう。」


 食卓へ降りると母が笑顔で迎える。


「今日は珍しく早起きね。」


「ちょっとね。」


 父は黙ってパンを食べている。


 視線だけが時々こちらへ向く。


 昨日のことを考えているのは間違いない。


「ユウト。」


 父が静かに口を開く。


「今日は仕事を手伝え。」


「え?」


「昨日のノコギリ。」


「……。」


「もう一度見せろ。」


 ユウトは黙って頷いた。



 朝食を終えると二人は工房へ向かう。


 父は一本の丸太を作業台へ置いた。


「切ってみろ。」


「俺が?」


「昨日改良したノコギリで。」


 ユウトはゆっくりノコギリを握る。


 刃を木へ当てる。


 軽く引く。


 スッ……


 驚くほど滑らかだった。


「……。」


 父は何も言わない。


 今度は父がノコギリを握る。


 同じように切る。


「……軽い。」


 父は眉をひそめる。


「力がほとんどいらん。」


 何度も切る。


 そしてユウトを見る。


「どうやった。」


「……分からない。」


 嘘ではない。


 本当に分からない。


 頭へ浮かんだ設計図を、そのまま形にしただけだ。


「気付いたら思いついた。」


 父は腕を組む。


「才能……なのか。」



 昼過ぎ。


 父は街へ納品へ出掛けた。


 母は洗濯。


 工房にはユウト一人だけが残った。


「……。」


 今なら試せる。


 改良ではない。


 “創る”ことを。


 視界を閉じる。


 昨日見えた文字を思い出す。



【改善】


解放済



【創造】


ロック中


残り0.8%



「やっぱりまだ駄目か。」


 ため息をつく。


 その時。


 工房の隅に積まれた端材が目に入った。


 細い板。


 丸い木。


 短い棒。


 どれも捨てる予定の木材だ。


 何となく手に取る。



解析開始



 木材の情報が流れる。


 その瞬間。


 青白い光が一瞬だけ揺れた。



新規設計を開始しますか?



「……え?」


 昨日まで無かった表示。


 鼓動が速くなる。


「設計?」



新しい道具を設計します。



「新しい……。」


 頭の中へ無数の線が浮かぶ。


 歯車。


 木材。


 支柱。


 ネジ。


 見たこともない構造。


「これ……。」


 ユウトは思わず木炭を手に取った。


 紙へ線を引く。


 一つ。


 二つ。


 三つ。


 止まらない。


 まるで誰かが手を動かしているようだった。


 気付けば一枚の設計図が完成していた。


「……何これ。」


 木材を二枚。


 棒を一本。


 木槌。


 ノミ。


 夢中で削る。


 時間を忘れて組み立て続けた。


 気付けば夕方。


 作業台の上には見たことのない道具が置かれていた。


 木材を挟むための器具。


 片側の棒を回すだけで、木がしっかり固定される。


「これ……。」


 木を挟む。


 動かない。


 もう一度回す。


 さらに固定される。


「すごい。」


 今まで両手で押さえていた木材が片手で固定できる。


 これなら作業速度が何倍にもなる。


 その瞬間。



初めての創造に成功しました。



権限


0.2%



1.0%



【創造】


解放



ユニーク設計図


保存しました。



「できた……。」


 初めて、自分だけの作品を作った。


 その時。


「ユウト。」


 振り返る。


 父だった。


 いつ帰ってきたのか。


 工房の入口に立ち、道具を見つめている。


「それは何だ。」


「……分からない。」


「使ってみろ。」


 ユウトは木材を挟み、棒を回した。


 父は黙って木材を引っ張る。


 動かない。


「……。」


 父は何度も触る。


 木を固定したまま削ってみる。


 目を見開く。


「これは……。」


 職人の顔になっていた。


「便利だ。」


 その一言だけだった。


 しかしユウトにとって、それは何より嬉しい言葉だった。


 父が初めて、自分の作った物を認めてくれた。


「親父。」


「なんだ。」


「これがあればもっと早く家具が作れる。」


「……そうだな。」


「みんな楽になる。」


 父はゆっくり笑った。


「お前、本当に面白い奴だ。」


 その夜。


 眠りについたユウトの視界に、再び青い文字が浮かぶ。



権限1.0%


新機能を解放しました。


【文明ツリー】


アクセス可能



「文明……?」


 その言葉の意味を知る時。


 世界の運命は、大きく動き始めるのだった。

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