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世界創造の設計士 ~外れスキル《UNKNOWN》は文明を創る唯一の力でした~  作者: 谷本遥叶


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1/10

名前のない才能

2作品めです


頑張って連載していきます!

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朝日が山の向こうから昇り始める頃、小さな木工村リーヴェは今日も静かに目を覚ました。


 森に囲まれたこの村は、王都から馬車で五日。


 良質な木材が採れることで知られているが、それだけだ。


 裕福でもなければ、大きな産業もない。


 村人は朝から晩まで木を切り、削り、家具や道具を作って暮らしている。


 そんな村の外れに、一軒の古びた工房があった。


「ユウト! 起きろ!」


 二階まで響く父の大きな声。


「……あと五分」


「昨日も五分って言って三十分寝てただろ!」


「今日は四分」


「変わらん!」


 ドタドタと階段を駆け下りる音。


 扉が勢いよく開き、栗色の髪を寝癖だらけにした少年が飛び起きた。


「起きた! 起きたから!」


「早く顔を洗ってこい。」


「はいはい。」


 少年――ユウトは大きく欠伸をすると、窓を開けた。


 冷たい朝の空気が部屋へ流れ込む。


 森の香り。


 鳥の鳴き声。


 今日もいつもと同じ朝。


 それなのに、不思議と胸が高鳴っていた。


「親父!」


「なんだ?」


「昨日考えてた椅子なんだけどさ。」


「朝飯食ってからにしろ。」


「いや、でも!」


「飯。」


「……はい。」


 母が笑いながらパンを並べる。


「また発明?」


「発明じゃないよ。」


「じゃあ何?」


「ちょっと良くするだけ。」


「それを発明って言うのよ。」


 母の言葉にユウトは苦笑した。


 昔からそうだった。


 壊れた椅子を見ると直したくなる。


 使いにくい道具を見ると改良したくなる。


 誰かが困っていると、「もっといい方法があるんじゃないか」と考えてしまう。


「昨日の椅子さ。」


「うん。」


「脚を少しだけ斜めにした方が安定すると思う。」


 父はパンをかじりながら首を傾げた。


「昨日完成したばかりだぞ?」


「でも重心が少し前なんだよ。」


「……また変なことを言う。」


 朝食を終えると、ユウトは真っ先に工房へ向かった。


 木の匂い。


 削り屑。


 工具が並ぶ壁。


 子供の頃から一番好きな場所だった。


「親父、昨日の椅子貸して。」


「好きにしろ。」


 完成した椅子を眺める。


 何度見ても違和感がある。


「ここかな。」


 脚を数ミリ削る。


 座面を少し削る。


 補強材を一本追加する。


 作業時間は十分もかからなかった。


「終わった。」


 父が椅子へ腰掛ける。


「……。」


 もう一度立つ。


 また座る。


「……おい。」


「何?」


「なんで前より座りやすい。」


「やっぱり?」


「やっぱりじゃない。」


 父は椅子をひっくり返して裏側を見る。


「構造を変えたのか?」


「少しだけ。」


「……誰に教わった。」


「誰にも。」


 父は何も言わなかった。


 ただ、じっと椅子を見つめていた。


 その時だった。


 工房の外から村人が飛び込んできた。


「ガイルさん!」


「どうした?」


「橋がまた壊れた!」


「またか……。」


 村の入口にある小さな木橋。


 雨が降るたび傷み、何度も修理を繰り返している。


「荷車が渡れない!」


「今行く!」


 父は工具箱を抱えて飛び出した。


 ユウトも後を追う。


 橋には十数人の村人が集まっていた。


「完全に割れてる。」


「木を替えないと駄目だ。」


「また一週間かかるぞ。」


 父が橋を見つめる。


 ユウトも隣へ立った。


 その瞬間だった。


 世界が止まる。


 耳鳴り。


 視界が白く染まる。


 そして。


 橋全体に、青白い線が浮かび上がった。


 木材一本一本。


 釘。


 荷重。


 亀裂。


 全てが図面のように見える。


「……え?」


 頭の中へ、知らない知識が流れ込む。



解析開始。


構造物:木橋


損傷率:48%


崩落予測:17日後


改善案:126件


最適解を表示しますか?



「……なんだ、これ。」


 誰の声でもない。


 頭の中へ直接響く機械的な声。


 青い文字。


 知らない言葉。


 世界そのものが設計図へ変わっていく。


「ユウト!」


 父の声で我に返る。


「どうした!」


「……いや。」


 橋を見る。


 さっきまで見えていた文字は消えていた。


 夢だったのか。


 疲れているだけか。


 そう思った、その時。


 視界の端に、小さな文字だけが残った。



UNKNOWN


権限認証中……


0.1%



「権限……?」


 その意味を、この時のユウトはまだ知らない。


 だが、この日。


 世界は静かに動き始めた。

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