ノアの希望
澪と紗也が両手にコップを持って戻ってくる。
澪がノアの前にコップを置き、隣に座る。
「ノアさん、コーラです。」
紗也が水の入ったコップを置き、ドリンクバーに向かう。
真琴が紗也と違うルートで戻ってくる。
テーブルにコップを置いてノアの向かいに座る。
「あのぉ…ノアさん、さっきデートって言いませんでした?」
「はい、デートって言いました。」
「……私から誘ったけど…デートで女性連れてくるって言うのも…。」
「みんなでいる方が楽しいかと思ったので…、ダメ!?」
「ダメ…って聞かれても…。」
「私服姿も素敵ですね。」
「あっ……ありがとうございます。」
真琴が照れつつも少し渋い顔をする。
紗也が戻って来てテーブルにコップを置いて座る。
「真琴さん、どうしました?」
「あっ、いえ…。」
「お二人はノアさんとどういった関係ですか?」
真琴が澪の顔を見る。
「えっ?えーっと……介護者です。」
「彼女候補です。」
真琴は紗也の顔に視線を変えると、紗也が真っ直ぐな目で見返してくる。
「ちょ…紗也ちゃん。」
「お二人とも?」
ぶれない視線に真琴は本気さを受けとる。
「はい、他にも数人います。」
「…。」
「あなたもデートに誘ったのだからそう言うことではないんですか?」
「…デート…なんだよね、確かに誘ったし…そう言うことなんだとは思います。」
真琴の声がだんだん小さくなり、視線が自分の足に向く。
「あっ、足はどうしたんですか?」
「それは…私が自転車でぶつかっちゃって…。」
「いえ、俺がボーッと歩いてたから…。」
「…それで…大丈夫?」
「はい、大丈夫です。それと…これ…。」
ノアがスマホをテーブルに置く。
「…自分で行ったんですね…通帳の登録は?」
「やり方がわからないので…。」
「通帳もって来てます?」
「はい。」
ノアは通帳をテーブルに置く。
「ちょっと見ますね。」
真琴は通帳を開くが記帳がされていない。
「記帳してないからわからないね。」
澪が口を挟む。
「もしかして私たちが邪魔?」
「いえ、ノアさんが二人に打ち明けたなら別に良いですよ。」
真琴がノートをテーブルに置き、鞄からペンを出して握る。
「ノアさん、全部を普通口座に置いておくより、運用とか考えても良いかもしれません。」
真琴が紙の上部に書き始めると澪と紗也は文字を追いかける。
「ジュウニ…オク……って…おカネ?」
澪と紗也の顔から血の気が引いていく。
「え?……ノアさん二人には全て言ったって…。」
真琴がノアを見るが下を向いたまま目を合わせようとしない。
「はい、全て言いました。」
「…お金のことは?」
「言うなって言ってたし言ってませんよ。」
「…それって…全てじゃないし…。」
「別に澪さんや紗也さんに隠そうと思ってないから良いですよ。」
「……この話は続けても良いの?」
「はい。」
真琴が澪と紗也を目力で押さえ込もうとする。
「二人ともここで聞いたことは口外しないで下さいね。」
「…はい。」
「絶対ですよ。」
「はい。」
「ノアさん、できればいくつかの銀行に金額を分散した方が良いですね。」
「はい。」
「それと一部を投資に当てるのも良いかと思います。」
真琴が12億の下に丸を五つ書く。
「例えばですけど…。」
丸の上に生活用、生活補助用、老後用、財蓄用、投資用と書く。
「意味としては食品とか小遣いとかを生活用、生活補助用としては家賃や水道光熱費など用ですね。」
「はい。」
「老後用は60歳を越えるまでは使わない。老後用と財蓄用は定期預金にして置いても良いかもね。」
「はい。」
「あとはNISAとかの投資に当てる。」
「はい。」
「それぞれにどのぐらいの金額を割り振るかだけど…給料も入ってきますよね?」
「ん?仕事は辞めたので給料は入ってきません。」
「え!?辞めないことって言ったのに?」
「…はい。」
紗也が口を挟む。
「それは…私が骨折させちゃったから…。」
「いえ、骨折する前に辞めちゃいました。」
「……。」
ノアが真琴のオーラを感じ、下を向いたまま謝る。
「…ごめんなさい。」
「……辞めたのなら仕方ない…投資を本格的にやっていく方が良いのかな。」
「はい。」
「ノアさん、投資はわかる?」
「全くわかりません。」
「株式配当は5%から1%の間だから平均3%で計算すると、1億で年間300万ほど入ってくるから3億すればサラリーマンよりは収入は多くなるかもね。」
「はい。」
「ここで考えるのはどこにいくら振り分けていくかですよ。」
「はい、真琴さんならどうするんですか?」
「私なら……。」
真琴が数字を記入する。
「生活が0.5、生活補助が0.5、老後が2.0、財蓄が3.0、投資が6.0かな。」
「なるほど…。」
ノアが少し考える。
「これだと10年持たずに生活と生活補助はなくなるけど、投資の配当が2年目から当てれるからそんなに苦しくはならないし。」
「…そう言えば、みんなで一緒に住むことを考えたいのですが…どうすればできますか?」
澪と紗也が驚いてノアを見る。
「…。」
「…みんな…ってシェアハウス?」
「はい。」
「それって何人いるんですか?」
「それぞれ本人に聞いてないけど…全員がOKしたら10人?」
「…あなたが全員分の生活費を出すの?」
「そこは決まってません。」
澪が口を挟む。
「ごめんなさい、ちょっといきなりで纏まった答えは言えないけど、家賃や生活費は自分で稼いでるから入れますよ。」
「それならシェアハウスをノアさんが買って、部屋を貸し出すようになるのかな。」
「シェアハウスを買う?」
「建てることも出来るけど…私は銀行窓口でローン相談なら受けたいことあるけど…10部屋のある家って…。」
「いくらですか?」
「土地によるけど財畜用の半分から全部使うぐらいになるかも…。」
「なるほど…可能な範囲ですね。」
「…あのね…税金もあるから簡単じゃないよ。」
「…他の所にもお金がかかるんですね。」
「あなたが家主としてもらった分に税金もかかるよ。」
「税金ってのも払えれば良いんですね。」
「投資でうまくいってから考えれば?本人たちの意見も聞いてないんでしょ。」
「はい。」
「金額から言うと投資を個人でするか投資信託にするかだけど…。」
「個人ですることもできるんですか?」
「できますよ、個人でするなら恩株づくりとナンピンをまずは理解する方が良いかな。」
「恩株作りとナンピン?」
「投資は信用取引しないなら大損も少ないからね。」
「信用取引?」
「ひとまずこのスマホに通帳を紐付けて…複数の銀行で口座を作らないとね。」
「それは今でも出来るんですか?」
「口座は平日に銀行回るしかないですね、その後に振り分け分を送金する必要はありますよ。」
「ありがとうございます。」
「え?…私がするの?」
「いえ、一緒に考えてもらえると助かります。」
「本人確認が必要だから…ついていく…ぐらいなら…。」
真琴が下を見て照れ臭そうにする。
「振り分けはこれで良いの?」
「はい、真琴さんの言葉を信じます。」
「え?ちょ…ちょっと待って…私はアドバイスだけで…。」
「それを信じます。」
「…それって管理を委ねてる?」
「…嫌ですか?」
「…お金の管理よ。そんな簡単に人を信用するものじゃないのよ。」
「真琴さんなら大丈夫かと…。」
紗也が笑う。
「ぷっ、こういう入り方もあるんですね。」
真琴が紗也を見る。
「どう言う意味?」
「ご…ごめんなさい…ノアさんに惹かれていくって意味です。」
「……そんな……。」
「真琴さんなら出来る事だし、断れないでしょ。」
「……はい。……でも私一人ではわからない所もあるのよ。」
「そこは努力ですね。ノアさんに頼られるって羨ましいですよ。」
真琴がノアにスマホと口座の紐づけを説明する。
「後は平日に銀行回って口座開設だけど…私は仕事あるし…。」
澪が自分のスマホを取り出す。
「それならみんなに相談しましょう。」
「みんなって…何の集まり?」
紗也の声がはずむ。
「…ノアさんの追っかけ?ノアさん、みんなと一緒に住む話は了承とれるかなんですよね?」
澪がスマホで真帆パーティーのグループ会話に入力する。
澪
ノアさんのことで相談したいことができましたので、今晩8時にクランに集まれませんか?
「私もみんなに声かけますね。」
紗也がスマホを取り出し、グループ会話に入力する。
紗也
今晩8時にクランに集まってください。重要案件です
「澪さん、玲奈さんはどうします?」
「うーん、後で他の看護師から連絡先を聞いて伝えてみる。」




