金庫番の昇格
朝から銀行の入口に立つ。
「よしっ…、入るぞ。」
ノアはクジ券をポケットに入れ右手はフリー、左手にはペットボトル。
整理券トラップを難なくクリア、ボタンを押して券を右手に掴む。
椅子に座り順番がくるのを待つ。
窓口の数字を見ずに周囲をキョロキョロと見回す。
窓口の人がこちらを見ながら番号を叫ぶ、整理券の俺の番号だ、慌てて立ち上がる。
窓口に座る前にクジ券と証明書を見せる。
座ろうとした瞬間、窓口の女性が立ち上がる。
「個室を準備しますので少し後ろの席でお持ちください。」
「この券はその時にご提示ください。」
券をポケットにしまい、さっき座っていた席に戻る。
しばらく座っていると横から女性が寄ってくる。
「佐藤ノア様、こちらへどうぞ。」
俺の名前……しかも様って……。俺って何者!?
立ち上がり女性の跡をついていく、先週の個室を通り過ぎる。
「あれ!?ここじゃないの!?」
女性はそのまま普通の扉を開ける。
「どうぞ中へ、ソファーに座ってお待ちください。」
ソファーへ座ると女性が扉を閉める。
窓の無い部屋、一人でいると息苦しさから緊張が高まる。
水を飲み緊張を下げる。
コンコン!ノックオンの後にドアが開く。
「佐藤ノア様、一週間前にも来ていただきましたよね。」
聞き覚えのある女性の声に目線を床から上に向けていく。
膝の隠れたスカート。HP-1(残り29)
体のラインがわかる腰。HP-1(残り28)
ボタンの締まったベスト。HP-1(残り27)
白の襟の立った首。HP-1(残り26)
一週間前にも見た笑顔。HP-1(残り25)
5コンボHP-3(残り22)
「いらっしゃいませ。本日も宝クジのご当選ですね。」
深々と頭を下げた後、ストレートの長い髪を後ろに戻す。HP-1(残り21)
思わず立ち上がる。
「隙のない凛とした立ち居振る舞いが綺麗だ。」誤爆HP-2(残り19)
「まぁ、ありがとうございます。」
女性の思考
背が高くてイケメン、何で立ち上がったの!?隙…いるかな!?
しかも1等当選で12億円って……。
「どうぞ、おかけください。」
「あぁ、そうだった。」
先に座り、向かいに女性が座る。
「ぶはっ。」
目線を下げていたのに座る女性の膝が見えた。HP-2(残り17)
「大丈夫ですか?それは緊張しますよね。ゆっくり水を飲んで気持ちを落ち着けてください。」
背中をさすられたように、言葉で介抱される。HP-1(残り16)
「大丈夫です。」
「クジ券と証明書をお願いします。」
ポケットから2枚を掴み机に置く。
女性が証明書とクジ券を照合確認する。
女性の顔に緊張が溢れる。
「少々お待ちください。」
女性が立ち扉を出ていく。
証明書に目をやる。
……ジュー…二…オ…ク…!?…12億!!!
緊張がマックスになる。
女性が戻ってくる。後ろからもう一人の女性が入ってくる。
「佐藤ノア様、こちらの剣をお預かり致しますので預り証をお渡しします。」
預り証を受け取る、もう一人の女性にクジ券と証明書が渡される。
「受け取り用の書類に記入して下さい。」
前のめりで書類に記入しようとする。
女性が同じように前のめりになり、髪の毛のいい匂いがする。
「すごくいい香りですね。」誤爆HP-1(残り15)
女性が首を上げる、ノアもあわせて首を上げる。
思ったよりも顔が近い、目があった後、口元に目線をそらす。
HP-2(残り13)、HP-1(残り12)、HP-2(残り10)、3コンボHP-1(残り9)
女性が首を下げ、氏名記入欄を指先を揃えて示す。
「こっ、ここにまずお名前を。」
「あっ、はい。」
順番を記入し、顔をあけずにソファーに深く座り直す。
女性も体をおこす。
女性の思考
今のはマズイ、勢いでキスされると思った。
でも………、考えちゃダメだ。
HP1回復(残り10)
女性は冊子を出す。
「こちらをお持ちください。高額当選者の人生が狂わない為のハンドブックです。」
「よく読んで下さい。くれぐれも仕事はやめない、当たったと触れ回らない、お金を貸さないあげないで下さいね。」
「一週間から十日で振り込まれると思います。通帳に記帳すると確認できると思いますがスマホからでも確認できます。」
「スマホはお持ちですか?」
「持ってないです。必要なのですか?」
「ご家族やご友人との連絡に使わないですか?」
「家族いないし、友達はいたけど、別に連絡しないよ。どうすればもてるの?」
「………わかりました、十一日後に私が休み取って付き合います。」HP-2(残り8)
「十一日後にこの道のコンビニに9時に待ち合わせしましょう。」HP-2(残り6)
「くれぐれも無駄遣いはしないでくださいね。」
「はい!」
「お姉さんと…ありがとう。十一日後にデートだね。」誤爆HP-5(残り1)
「高額当選者って、変な人に騙されやすいので、です。」
女性の思考
付き合う、待ち合わせ、デート……最後に取り繕ったけど……無理だ。
……どう考えても私的だわ、しかもイケメンに12億円。
自転車で家に帰る、壁の鏡で頭の上のHPを見る。
「……1、……落ちる寸前だったんだ。」
〈超勘違い〉
十一日後にデート…。誤爆HP-5(残り0)
……プツン。
……超妄想出来ず。
……金庫番の昇格(非確定)




