盤面の再生
クランのドアが開きノアが入ってくる。
「遅れてごめんなさい。」
美咲の体が少し振るえる。
「こんちゃー。」
紗也が振り返る。
「…彩香?なんでー?」
「来ちゃった。」
ノアが通路を歩く。
真帆が空いた晶の横を指さす。
「ノアここだぞ。」
少し下を向いた美咲の横をゆっくりと歩き座る。
「彩香、あんたはこっち。」
紗也は晶の通路をふさぐように椅子を置く。
「こんちゃー、彩香でーす。みんなノアさん推し!?ノアさんモテモテだね。」
「ちょ…、彩香…。」
店内の温かい空気が彩香の言葉で濁る。
「…。」
美咲が濁った空気の中で話し出す。
「ノアさん『色メガネ』のこと聞きました。」
「ん?紗也『色メガネ』ってなに?」
「しーっ。」
「あれは私の本心ではなくって…。」
「はい、俺の方こそごめんなさい、言葉と行動が反転するって理解が足りてませんでした。」
「あのー嫌いとか平手打ちとか、そんな気持ちは全くなくって…。」
「はい、美咲さんは悪くないですよ、全部『色メガネ』だったんです。」
彩香が平手打ちの反対を考え、閃く。
「『色メガネ』ってのがよく分からないけど、美咲さんはノアさんが好きでキスしようとしたってことだー。」HP-20(残り45)
紗也が驚いて彩香を見る。
「なっ…。」
紗也が立ち上がり、彩香の腕を掴みカウンターに連れて行く。
「な…なんで?みんなノアさんが好きなんじゃないの?」
全ての時が止まる。
「…。」
紗也の動けない中、蘭だけが普通に歩いてくる。
「ノアさん、何か飲む?」
「あっ…あのー甘い系の物がいいんですけど…。」
「コーラでいい?」
「はっ、はい。」
「えーっと、彩香ちゃんだっけ、何か飲む?」
「…わたしも…コーラで…。」
蘭が普通に歩いてカウンターに戻ろうとする。
「俺も…みんなのこと好きですよ。キ…キス…は…。」HP-30(残り15)
「ちっ…違うぞ、ノア…みんなはそうかも知れんけど…わたしはおまえの姉ちゃん感覚だからな!」
全員が真帆を見る。
「…。」
「…また、わたしかいっ!」
カウンターに戻りかけた蘭が真帆の困った顔を見る。
「ぷっ、真帆さんは注目を集めるのが好きね。」
晶がノアに弁明する。
「…す…好きって…いろんなかたちがあるじゃない…キスも…ね。」
紗也が彩香の手を離す。
「そ…そうですよ…いろいろ…ありますよ…。」
晶が立ち上がる。
「彩香ちゃん、ちょっと発言はやめてくれるかな。」
「なんで?」
「黙ってられないならここから出てってほしい。」
晶の目力が彩香を小さくする。
「…はい…。」
「みんな忘れたの?ノアさん、HPが0になったら気絶して、記憶が飛ぶんだよ。」
美咲がうろたえる。
「あっ…、それは…。」
真帆が美咲とノアを見る。
「確かに…、このタイミングでそれは…。」
「なになに?」
真帆が彩香を笑顔で見る。
「ちょっとだけ、黙っててくれると嬉しいな。」
「…はい。」
紗也が彩香をカウンターに連れて行く。
「晶さんたちがなぜ一緒の席についてるのか腑に落ちたわ。」
澪と凛が不思議そうな顔で真帆を見る。
「どういうことですか?」
「私にもわからないよー。」
「落としたくても落としたらダメなんだよ。」
「そういえば…晶さんが…言ってた…、あー、確かにです。」
「えーっ、私にはわかんないよ。」
澪は凛を隣に座らせて小声で説明する。
凛は声を出さずに頷く。
「美咲さんもノアさんも和解はできたわけですから、みんなで友達登録でもしましょうよ。」
「そうだね、それは私も賛成だよ。」
「ノアさんのスマホは?」
「あっ、自分で出来るようになりました。」
「おぉー、凄いじゃん。真帆さん…全体とパーティーと二つ作りませんか?」
「パーティー!?」
「単純にそっちとこっちです。」
「澪さんはこっちでいいの?」
「あっ、えっ、いいですよ。」
みんなでスマホの登録を始める。
「あの子はそっちだよね?」
「彩香ちゃんは私が面倒見ます。」
「あの女医さんは?」
「後で確認しときますね。」
ノアを中心に二つのパーティーができあがる。
晶パーティー、晶、美咲、紗也、彩香。
真帆パーティー、真帆、蘭、凛、澪。
ノアと位置情報共有を全員でする。




