顔合わせ
ノアは家で寝過ごしていた。
昼過ぎに帰ってきてそのまま寝たが、時計はすでに8時15分になっていた。
晶からメッセージが入る。
晶
ノアさーん、みんなクランに居るよー
スマホの音で目を覚まし、寝ぼけならが返信をする。
ノア
みんな?俺はまだ家ですよ
晶
そうだね、みんなでノアさん待ってるんだよ
ノア
いきまう
すぐ
「ノアさんすぐ来るって。」
美咲は不安そうな顔で答える。
「うん。」
晶の横に座っていた凛が立ち上がる。
「美咲さん、本当にごめんなさい。」
紗也がメモを見ながら聞く。
「凛さん、どこに?」
「ノアさんが来るなら、ここはノアさんの場所として空けないと…。」
「待って、ちょっとだけ質問が…。」
「…はい…、なんでしょうか…?」
「ノアさんに接客した時にブラジャーかおっぱい見せました?」
「えっ…?」
真帆が凛の困った様子を見て、間に入る。
「紗也ちゃん、それは接客中にはしないでしょ。」
「そうなんですよね…、でも…見せれないものがどうとか…って。」
「…ブラもパンツも…見えたかも…。見せに行ったわけじゃないよ!」
全員が凛の顔を見て固まる。
「…。」
凛がさらに困って、同じ場所に座る。
真帆が凛に助け舟をだす。
「見られるぐらいどうってことないよ、私の場合は見ちゃったから…。」
晶が凛越しに真帆を見る。
「ん?何を?」
真帆は口を滑らせた事に気づき顔が赤くなる。
「ん…!?」
「真帆さん…、何を見たの?」
晶の鋭い眼光が真帆をぶっ刺す。
「…ちん…ちん…。」
全員が真帆の顔を見て固まる。
「…。」
「…。」
「…。」
「誰かなんか言ってよ。」
「…。」
「…。」
全員の目から放たれるレーザー光線が真帆の体を貫通する。
「私なんてあーん作戦ですら失敗してるのに…。」
「私も今日失敗して友達に奪われました、しかも残った部分を食べるって間接キスまで…。」
美咲が少し顔をあげる。
「…私、初めて会った時に飲み物で…。」
「えー、美咲さんこっちよりじゃないの?」
「美咲…さん…、いつの間に…。」
「二人はキスしたんでしょ!」
凛と真帆が固まる。
「…。」「…。」
晶と紗也の言葉がかぶる。
「…ノアさん気を失ってたもん…。」「…ノアさん覚えてないもん…。」
真帆が我に返る。
「ノアって意外とやるなぁ。」
全員の視線が真帆に向く。
「ノア…。」「呼び捨て…。」「…。」
真帆が慌てる。
「私…?変なこと言った…?」
蘭がカウンターを周って、お盆に飲み物を載せてくる。
「あらあら、真帆さん注目されてるの?」
「…私ってどういう立場?」
「…聞いてた感じだと距離感…じゃない。」
蘭が晶側のテーブルにお盆を置き、飲み物を置いていく。
「これ紗也ちゃんかな。」
「はい、カフェラテです。」
「晶さんもカフェラテで、美咲さんはホットミルク、凛ちゃんはここでいいの?」
「いえ、ノアさん来る前にそっちに移ります。」
「もう移る?」
「はい。」
凛は立ち上がり、テーブルを回り込んで真帆の横に座る。
蘭は真帆と凛に飲み物を置いて、カウンターに戻る。
クランの扉が開き、女性が二人で入ってくる。
「いらっしゃい。」
晶が後ろから入って来た女性に気がつく。
「あっ、澪さん、どーして…?」
「晶さん、今日ノアさんから聞いて…。」
紗也が振り返って澪ともう一人の女性を見る。
「あー、昼間の女医…さん。」
「その節は申し訳ありません。」
女医は深々と頭を下げる。
「なんであなたまで…。」
「玄関外で澪さんが話してるのが見えたから、聞いてきました。」
「桜井玲奈さんは今日のインシデントで…。」
玲奈が澪の言葉を遮る。
「私の医師としてのプライドがノアさんに壊されたから、あの人が何なのか知りたくてお邪魔しました。」
晶の解析眼が光る。
「…そういう入りもあるのか…。」
「私はカウンターで見せてもらうだけですから…。」
玲奈がカウンターに向かい、澪が立ちすくむ。
「どこに座っていいかしら?」
紗也の目が強ばる。
「あっち行くね。」
晶が予想外に驚く。
「えっ、澪さん…。」
真帆が向かいを指さす。
「ここ座れるよ。あなたもノア目当て?」
「…ノア…。」
「あぁーごめんごめん、私は小森真帆、あなたは?」
「柿崎澪って言います。看護師してます。」
「私は毛塚凛です。靴屋で働いてます。」
隣のテーブルで晶と紗也と美咲が三人の紹介を聞いている。
晶が澪を掴むように手を広げる。
「澪さんが…そっちに引き込まれる…。」
「…ダメなんですか?」
「ただでさえ強敵揃いに…。」
「…そういえば『色メガネ』にかからずに抱きついてました。真帆さんは普通にいなしてるし…。」
晶と美咲が紗也を見る。
「やっぱり一枚上手…。」「…。」
「紗也さん、あれは『色メガネ』の効果ですよ。」
晶と美咲と紗也が澪を見る。
蘭が澪の注文を聞きに来る。
「何にしますか?」
「ハーブティーください。」
「はい。澪さんって言うのね、蘭ですよろしくね。」
「よろしくお願いします。」
澪が真帆を見る。
「あのぉ…、真帆さんはノアさんの彼女さんですか?」
全員の視線が真帆を突き刺す。
「違っ…違うって…、なんでこんなに私が注目されるんだよ。」
凛が横から助け舟をだそうとする。
「…ちんちん見たらしいです。」
「あー、あー、凛ちゃん…それってフォローになってないから…。」
「…。」
澪の顔が赤くなる。
「あー、あのね…、アイツがじれったいこと言うから…、介助だよ、介助!」
「…。」
「私、ハウスキーパーやってるから…子供のもときどきするから…。」
「…。」
「蘭さーん、どうにかしてー。」
カウンターの蘭がにっこり笑う。
「事実なんでしょ…、見ただけなら別に大したことないわよ。」
「っだそうです。見ただけです。」
澪が笑いだす。
「ぷっ、面白いですね、介助なら仕方ないと思いますよ。私も仕事でときどきはありますから。」
「…ちんちん見慣れてるんだね。」
全員が澪を見る。
「…。」
「…いや、そうじゃなくって…仕事は仕事…です。」
紗也がテーブルを越えて割り込む。
「今日の仕事中ですよね。」
「…はい、…。」
「ノアさんと知り合ったのも仕事中ですよね。」
「…はい、…。」
「私はノアさんの…見てませんので…体…拭いたぐらいです。」
「まぁ、似たもんだよね。」
「全然違うと思います。」
「あんたはブラとパンツ見せてんじゃん。」
「…見られたの…。」
晶が飲み物を飲む。
「あぁーあ、あっちは内部崩壊だわ。」
蘭がハーブティーを入れて持ってくる。
「まぁまぁ、誰もがそれぞれのアタックしてもいいじゃない。」
「待って、私は不可抗力でしょ。」
「それなら私も見られたから一緒だよ。」
「私は仕事ですから。」
「はいはい、でも誰もノアさんを虜にできてないから一緒よ。」
蘭はテーブルにカップを置き、ハーブティーを注ぐ。
「…。」




