ほこり
ノアと紗也は病院内に入る。
紗也は受付をノアの代わりにすませ、二人は脳神経外科の前で待つ。
二つの部屋があり、吊り下げられたモニターに番号が表示されている。
紗也が周囲を警戒する必要もないほど人は少なく、安心して順番がくるのを待つ。
前の回復から30分経過HP3回復(残り59)
ノアがそわそわしてる。
「緊張してるんですか?」
「いえ、待ってるだけって暇なんで…。」
「もう次だと思うのでちょっとだけ我慢です。」
「あっ、ほら番号出ましたよ。右の部屋ですね。」
ノアが右の部屋に向かう途中で振り返る。
「あれ?紗也さんは入らないの?」
「ノアさんがいいなら入ります。」
「ぜひ、紗也さんが傍に居てくれると安心ですから。」
紗也が立ち上がり、ノアの為にドアを開ける。
中に入ると女性の医師が足を組んで座っている、一瞬で紗也の表情が固まる。
「佐藤ノアさんですね、どうぞ座って下さい。」
「はい。」
ノアは女性医師の近くに用意された椅子に座る。HP-1(残り58)
「そちらの方はご家族の方?」
「あっ、私は付き添いで…接触したのは私なんです。」
「…なるほど、そちらに座って下さい。」
付き添いの看護師が椅子を用意する。
「どうぞ。」
「すいません。」
女性医師が椅子を回し体をノアに向ける。HP-2(残り56)
「今回は、どういう理由でこちらに?」
「えーっと、受診してって言われて来ました。」
「…なんで、受診してって言われたのかは?」
「…なんでしたっけ?」
「…自転車でそちらの女性とぶつかったのは覚えてます?」
「はい。」
「その後、救急車でこの病院に来たことは覚えてますか?」
「…覚えてないです。」
「転んだ時に強く頭を打ったとかはありましたか?」
「…なかったと思います。」
「一応、検査では特に問題は認められなかったとありますね。」
「はい、問題ありません。」
女性医師が椅子をノアに近づけ、胸のポケットからライトを取る。HP-2(残り54)
「ちょっと目を確認しますね、少し眩しいですよ。」
紗也が焦る。
「あっ!それはダメ。」
「ん?…診察の邪魔になるから静かにしててください。」
「…すいません。」
女性医師はノアの目にライトを当てて瞳孔の伸縮を見る。色メガネ発動
両目をするはずが片目で止めてしまう。
「…。…?」
女性医師はノアから見えにくい左側に、右手の人差し指を立てる。
「この指を目だけで追ってくださいね。」
「はい。」
女性医師はゆっくりとノアから見て右側に移動しようとする。
ノアの目は指を追いかけるが、正面に来た時に女性医師と目が合う。色メガネ発動
女性医師の指が最初の場所に戻る。
「次は下を見てくれる。…?」
ノアの目が下に向く。
「ごめんね、上を見てくれる。」
ノアの目が上を向き、女性医師が白目を確認する。
「はいいいよ、昨日の晩ご飯は何を食べました?」
ノアが目を女性医師に向け、また目が合う。色メガネ発動
「何も食べてないです。」
女性医師は口を大きく開ける。
「ほうはほ。…?」
「口の中が俺が見えるかですかね!?しっかり奥歯まで見えますよ。特に歯に何も詰まってないですし、綺麗です。あっ…。」
女性医師が口を閉じ、恥ずかしそうな顔をする。HP-2(残り52)
紗也が不自然な女性医師の行動に気づき、ノアの耳元で囁く。
「ノアさん、『色メガネ』が効いてます。」
「あっ、うっかりしてました。ごめんなさい。」
女性医師が体を机に向け、カルテを確認する。
「…。」
大きく息を吸って吐いた後、もう一度ノアの方に体を向ける。HP-2(残り50)
「両手を出して。」
ノアは両手を広げて出すと、女性医師が下から優しく添える。HP-5(残り45)
「指先の感覚はある?」
「触られてないのでわかりませんが、添えられた手の温もりはあります。」誤爆HP-5(残り40)
女性医師が照れた表情をする。
横で聞いてる紗也がクスクスと笑う。
「痺れとかもないかな?」
「女性に手を触れられると痺れます。」
女性医師が素に戻る。
「素直に答えなさい!」
ノアが下を向く。
「ごめんなさい。素直に答えてるつもりです。」
「…。」
横で聞いてる紗也も笑いを隠すように下を向く。
女性医師が足を組んでノアに見せる。HP-5(残り35)
「こんな風に足を組んでくれる?」
「はい。」
女性医師は妙な器具で膝頭の下を叩く。
「うはっ。」
「足を組み替えて。」
組み替えた足を叩く。
「うへぇ。」
女性医師は淡々とした言葉を使い、立ち上がる。
「立ち上がって、杖は使って良いから真っ直ぐに立てる?」
「はい。」
看護師が杖を取り、ノアの立ち上がりをサポートする。
HP1回復(残り36)
「こっちに真っ直ぐ立って。」
「ここで良いですか?」
女性医師はノアから五歩ほど離れた正面に立つ。
「いいよ、じゃぁ、ゆっくりでいいから真っ直ぐ歩いてくれる?」
女性医師は転倒しないように少し手を広げている。
ノアが前を向いた一瞬、目が合う。色メガネ発動
ノアが滑りにくい床に足が引っ掛かり、よろめき前に…。
女性医師は広げた手を下げて、ノアの前から遠ざかる。
「…。…?」
ノアはそのまま前に転倒した。
「えっ!?」
紗也は慌てて立ち上がる。
看護師は離れた位置から動けない。
女性医師は何故離れたのか理解できてない。
ノアは松葉杖を直前で離し、両手で受け身をとる。
「いちち…。」
ノアは顔を上げると女性医師のスカートの裾までが目に入る。HP-2(残り34)
紗也がノアの傍に寄り、体を起こす。
「ノアさん、大丈夫?」
「はい。」
ノアは意識して目を合わせない。
「ほんとに?」
「はい、大丈夫です。」
看護師も紗也と一緒にサポートに入る。
紗也と看護師はノアを横のベッドに座らせ、足についたほこりをはらう。
女性医師は立ったままで動かない。
「あのぉ!今のはちょっとないんじゃないですか?」
看護師は女性医師のかわりに謝る。
「すいません、大丈夫ですか?」
「はい。」
看護師が女性医師の方を向き。
「先生!先生!どうしました?」
女性医師が我にかえって、看護師と紗也の間に入り、ノアの前にしゃがむ。
「ごめんなさい、怪我の方はありませんか?」
ノアは目線を合わせないように横を向く。
「大丈夫ですよ。受け身もとれたので…。」
「本当に申し訳ありません。」
女性医師はノアの手首を触る。HP-5(残り29)
「こことか痛くないですか?どっか痛くなったりしてませんか?」
「はい。ほんとに大丈夫ですから…。」
ノアの顔は横を向いたまま、女性医師はそれを呆れられたように思う。
「すいません…、すいません…。」
紗也が女性医師の肩を掴み、自分の方に体を向けさす。
「医者ならあそこは支えるんじゃないですか?」
「はい、…そうです…ごめんなさい。」
「紗也さん、転んだのは自分なので責めないで…。」
「でも、今のはあまりにも酷いです。」
ノアは紗也が落ち着きそうにないのでこの場を離れたくなる。
「…今日は…これで終わりですか?帰っていいですか?」
下を向いたまま女性医師がつぶやく。
「はい、これで終わりです。」
看護師は女性医師の言葉を聞いて、ノアを立たせる。
「どこか痛いところがありましたら言ってください。」
そのままノアを外に誘導する。
紗也は渋々とノアの後を追って診察室を出る。
ドアが閉まると女性医師は椅子に座り、頭を抱える。




