強敵の影
紗也が左手の袖を少しだけまくり、腕時計を見る。
家の中ではノアが大の字で寝ている。
紗也はノアの家の呼び鈴をならす。
「…。」
紗也がスマホを出してノアに電話する。
ドアの向こうで電話がなっているのが聞こえる。
「…。」
ドアの鍵が外れゆっくりとドアが開く。
「…はーい。」
「ノアさん、おはようございます、病院行きますよ。」
紗也がドアの間からとびきりの笑顔を見せる。HP-1(残り69)
「あっ、おはようございます。…もう、そんな時間ですか?」
「8時は過ぎましたよ。ここで待ってるので準備して出てきてくださいね。」
紗也は目を合わさないように、目を閉じて笑顔を崩さない。
隣の部屋のドアが開き、真帆が出てくる。
紗也は真帆の方を向いて軽くお辞儀しながら挨拶する。
「おはようございます。」
真帆は鍵を閉め、同じように軽くお辞儀する。
「…おはようございます。…ノアの知り合い?」
「はい。」
「アイツ起きて来ないの?」
「あっ、…いえ、今、準備してもらってます。」
「そっか、ならいいけど…。」
真帆はアパートの前に止めた軽バンの鍵を開ける。
「あのぉ、もしかして真帆さんですか?」
「ん…!?私のこと、ノアに聞いた?」
「いえ…、昨日クランで蘭さんから…昨日の出来事と一緒に…聞きました。」
「あぁー、美咲ちゃん?」
「いえ、大槻紗也って言います。晶さんと美咲さんの友達です。」
「…ふーん、美咲ちゃんって子は大丈夫なの?」
「は…はい、今日の夜、クランで会うようにセッティングしました。」
「夜か…、私も行こうかな…何時?」
「8時の予定です。」
ノアが家から出てきて、鍵を閉める。
「ノア、おはよー。」
「あっ、そっちはどこ行くんだ?」
ノアが紗也の前を通りすぎ、ゆっくり真帆に近寄る。
「病院で経過観察です。」
真帆とノアと目を合わせてしまう。色メガネ発動
「乗せてってやるよ。…。」
「ありがとうございます。」
真帆は運転席に乗り込み、紗也を後ろに乗るように親指を出して合図する。
「ありがとうございます。」
ノアは車の前を通過して助手席に乗る。
「忘れ物はないか?」
「はい。」
「じゃぁ、行くぞ。」
「はい。」
「ノア…これ…『色メガネ』の行動だぞ。」
「えっ?…ごめんなさい。」
紗也は真帆が『色メガネ』を自然に受け入れてることに驚く。
「真帆さん凄いですね、『色メガネ』に順応しているように思えます。」
「そうか!?あんまり意識してないだけだろ。」
「…。」
HP1回復(残り70)
真帆はバックミラー越しに紗也を見る。
「紗也ちゃんは何でノアの病院について行くんだ?」
「…私が自転車でぶつかったことで、ノアさんの足が…。」
「なるほど…。」
「仕事も辞めたって…。」
ノアが両手を振り否定する。
「違う違う、それは、タカラ…。」
ノアは途中で銀行員との会話を思い出す。
「あぁー、銀行員さんとデートの約束、すっかり忘れてた!」誤爆HP-5(残り65)
「ノア…、プータローなのか?」
「銀行員さんとのデート?」HP-5(残り60)
ノアが真帆の言葉と紗也の言葉とデートの日を同時に処理仕切れない。
「えっ、あっ、うん、11日後にって…いつ?」
「知るかよ!お前…遊んでんなぁ…。」
「ん?はい。」
真帆の声が小さくなって、車の音でノアに聞こえてない。
「…女…遊びの…意味…だぞ…。」
「ノアさん、デートっていつですか?」HP-5(残り55)
「えーっと、先週の火曜日だったから…水、木、金………明日?明日です。」
「…彼女さんが…いたんですか?」
「…違うよ、会ったのは2回だけだし…9時にコンビニ前だったかな?」
「なかなか肉食系な銀行員だな。」
ノアは銀行員の食の好みが肉なんだと思った。
「俺も肉食系は好きです。」
真帆と紗也は言葉を失う。
「…。」「…。」
真帆の思考
私って肉食系か?姉御肌みたいな所は性格だし…、私はどっちだ?
紗也の思考
私は草食系だと思うんだけど…もっとグイグイ行く方が…。
「ノア、病院に着くぞ、帰りはなんとかしろよ。」
「はい、ありがとうございます。」
真帆はバックミラーで紗也の様子を確認する。
「酔った?」
「あっ、…いえ、酔ってないです。」
真帆は病院の正面玄関に車を寄せて停止する。
紗也が車から降りて、運転席の真帆に挨拶する。
「真帆さん、ありがとうございました。」
「いいよ、『色メガネ』の影響だし、紗也ちゃんも全部知ってるんだよね?」
「はい、ノアさんの攻略は難しそうですけど…。」
「…攻略?」
「あっ、攻略は…彼女になるための攻め方のことです。」
「へぇ、結構肉食系なんだな。」
「真帆さんもじゃないんですか?」
「…えっ、…私は…あいつを弟みたいな扱い方だから…。」
「意識してますよね?」
「…どっかに出てた?」
「いえ、晶さんから強敵だって言われていたので、カマかけちゃいました。」
「…じゃぁ弟って…感じだったよね?」
「いえ、強敵です。」
「…まぁ夜に話そっか、8時にクランだよね。」
「はい、お待ちしてますね。」
紗也が車から離れると、真帆は手を挙げ車を発進させる。
ノアが玄関まで歩いて、自分の頭の上を見る。
「55か…あっ56になった。」
HP1回復(残り56)




