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理解の深さ

紗也がクランの扉を開けて入る。

後ろから美咲も入る。

紗也が店内を見渡すが、蘭の姿もない。

「誰もいないよ。」

静かにBGMだけが聞こえる。

紗也はカウンターに手をかけて中を見るが誰もいない。

「もう閉めるのかな?」

振り返りカウンターの椅子の小さな背もたれに手を置く。

「美咲さん、ここに座って待ちましょうか?」

二人はカウンターの椅子に座る。

紗也はスマホで晶の位置を確認する。

「もうすぐ来ますね。…美咲さんお腹空いてないですか?」

「今は…なんか喉を通りそうにない。」

店の扉が開き人が入ってくる。

「あっ、ごめんね…。待たせた?」

蘭が買い物袋を持ってカウンターの中に入る。

「いえ、買い出しですか?」

蘭が顔をあげ、二人を見る。

「朝から雨だったからいけなかったのよ。…!?美咲さん、いらっしゃい。」

美咲は軽く頭を下げる。

「そういえばお二人はこの前も…、あれ?もう一人誰かいたような…。」

蘭の名前を聞き出す話術が冴える。

紗也はしっかりとはまる。

「この前はそっちで、晶さんと三人でした。」

「そうよねぇ、美咲さんもカウンターで珍しいし、何かの相談かしら?」

「…。」

「晶さんと待ち合わせなんです。」

「そう、私も晶さんと話たかったから、ちょうどいいなぁ。」

晶が入ってくる。

「お待たせ。カウンター?」

紗也は体を晶に向けた後、顔だけ蘭に向ける。

「いえ、そちらに移動します。良いですか?」

「いいわよ、ねぇ晶さん、今日ノアさん来たよ。」

紗也と美咲が反応する。

「えっ!?」「…!?」

「私も同席して、聞かされちゃった。ノアさんのことと今日のこと。」

晶が探るように蘭に聞き返す。

「ノアさんのことって…、体のこと?」

「そうよ、駄目だった?」

「…まぁ、ノアさんが決めたから仕方ないよね。」

「取らないから大丈夫よ、でも…興味はわいたなぁ。」

蘭が不敵な顔をする。

晶はニヤリと笑う。

「ふっ、そういってもノアさんは甘くないからね!」

「そうなの?なら余計に興味もっちゃうかも。」

「そのかわり、その今日のことを教えて。」

蘭がわざとらしくモジモジする。

「えー、私は部外者じゃない?」

「わざとらしいのは良いから一緒に座って。」

「ありがとう、入れてくれるのね。」


蘭は昼間と同じ位置に、横には美咲、向かいには晶が座る。

晶の隣に座った紗也がメモを取り出す。

「蘭さん、その今日のことって美咲さんも関係してるの?」

美咲は下を向いている。

「本人を前に私にそれを聞くの?」

晶は蘭の言い回しから美咲が絡む話だとくみ取る。

「そうだね、…でノアさんから聞いたのは他に誰かいたの?」

「真帆さんと凛ちゃんって女の子の二人よ。」

「三人でノアさんの体のこと聞いたの?」

「全部聞いたよ、三人で。」

「ふーん…、聞いたことから順番に教えて。」

「最初はHPの話で、次はスキルの話で…、『色メガネ』ってスキルのせいで今日の出来事になったみたい。」

紗也、美咲が『色メガネ』で同時に反応する。

「!」

晶は冷静を保ったまま話を進める。

「そのスキルはどういう作用するの?」

「やっぱり、それは三人とも知らなさそうね。」


・色メガネ

視線が合ってもダメージを受けない、相手の次の行動と言葉を意思と逆にする。


晶は動揺が隠せない。

「…それは、…どう…すれば…。」

紗也が晶の動揺が理解できない。

「どうしたんですか?」

蘭は雰囲気一つ変えずに紗也を見る。

「紗也さんはわからないの?」

晶が答えの出せないまま美咲に問いかける。

「今日、起こったことはその反動だったんだね。」

「…わからない、…たしかに意思と逆の行動になった。」


四人は今日起こったこと事実を時系列で共有する。


買い物袋に入っていたオレンジが、袋から転げて外に出る。

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