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ニアミス

ワイパーが止まらずに動く、運転席からは視界もままならない。

交差点で人が飛び出してくる。

急ブレーキをかけ、間一髪のところで止まる。

「やばっ!」

左折ししばらくゆっくり走ると、左足を骨折し、左手に松葉杖をもった人が見える。

「ノア…?」


「なんで…なんで…。」

涙と雨は気持ちを洗い流してくれない、それでも走りつづける。

色をなくしたように目に映るすべてが暗い。

息が切れて立ち止まる。

「………。」

叫びたいのに言葉にもならない。

空を見上げ目を閉じる。

雨が涙と一緒に顔を伝う。

「こんなはずじゃなかったのに…。」

気持ちを落ち着けるはずが、透けることを狙ってつけた赤のブラジャーが熱を冷ましてくれない。

ノアへのアピールに練ったことが、よけいに自分をみじめにさせる。

両腕で自分の体を抱きしめる。

「ただ…こうしてほしかっただけなのに…。」

今となっては透けることを隠すだけの自分の腕に温もりはない。

主夫耐性ならこの気持ちを癒してくれるかもしれない、走って逃げてしまった後悔もあり振り返る。

何と言って戻っていいのかもわからず、足が一歩も出ない。

少し気持ちが落ち着き、雨が体を冷やす。

足が家へ向く、重たい足をひきずるように歩く。


アパートの前に立ち止まりノアの部屋のドアを見るが、軽バンが止まっていて見えない。

ただいまと言っても誰も返してくれない玄関をあけ、カーテンを閉めたままの暗い部屋に座る。

体が冷えてきてシャワーを浴びに浴室に移動する。


鞄の中でスマホが光る。


紗也

ノアさんが帰ってますのでミッション成功ですね

お疲れ様でした


シャワーを浴びて出てくるが、そのままベッドに入り布団の中でうずくまる。

どうしていいのかわからずまた涙が出てくる。

体があたたまりそのまま寝てしまう。


帰ってから5時間が経ち、布団が動く。

布団から出てカーテンの隙間から外を見ると、雨はまだ降り続いていた。

鞄からスマホを取り、紗也のメッセージを見る。

「違うよ…。」


美咲

私ってだめかも


紗也

どうしたんですか?


美咲

もうどうしていいかもわかんないよ


紗也

そっちに行ってもいいですか?


美咲

助けてよ


紗也

すぐに行きます


美咲はスマホをテーブルに置く。

「助けてよ…。」

美咲は膝を抱えて頭をうずめる。


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