色
アスファルトに雨粒があたりだす、グレーに見えたところは、しだいに濃い黒に変わっていく。
ノアは傘をささずに歩いていた。
家を出てわずかな距離だったが、取りに戻らずに歩く。
松葉杖を握る手がわずかに滑り、立ち止まると誰かが後ろから傘をさしてくれる。
「ノアさん、どこに行くの?濡れるよ。」
前日の夜
グループ会話に晶からメッセージが入る。
晶
緊急事態!
明日のノアさんの行動がヤバイ!
メイド喫茶でラブエナジーって書いてるんだけど、どっちか止めれない?
美咲
メイド喫茶って、即オチ確定じゃない?
私は動けるけど、位置情報はわかんないよ
紗也
ノアさんってラブエナジーは何だと思ってるんでしょうか?
私は授業で直接行けませんけど、位置情報は確認しながら送れます
晶
情報源もわからないし
ちょっと落ち込んでたから放置はできなさそうなんだよ
とにかくメイド喫茶は止めて!
美咲
わかった、止め方は自由にしていいよね?
紗也
美咲さんに位置情報を送ります
晶
状況判断ってことでよろしく
美咲が真っ赤な傘で、ノアに雨が当たらないようにしてくれていた。
美咲の肩が少しずつ濡れていく。
「美咲さん、美咲さんこそ濡れてきてますよ。」
ノアは美咲の傘を持つ手を握り、美咲が濡れないように押し返す。HP-1(残り69)
美咲はノアの右横に立ち、体がギリギリ当たらないところまで近づく。HP-5(残り64)
「一本しかないからこれならいい?」
「はい。」
「それで…どこに行くの?」
「ししょーからダイナマイト・エンジェルって店を紹介されたので、そこに行こうかと…。」
美咲は驚いたふりをするはずが、本気で焦る。
「ダイナマイト(巨乳)…エンジェル(天使)…、そっ、そこはノアさんには不釣り合いじゃない?」
「ラブエナジーって元気をもらえるって聞いたんですが?」
美咲はノアの質問に頭が回らない。
「…それは…コンビニで売ってるやつ!…コップに入れて出すだけだから200円の物が1000円するよ。」
美咲は晶のように上手く返せたと思ったが、ノアの追撃がくる。
「ししょーはすごい人だから、高くても価値があるってことなんだと思いますよ。」
スマホで愛助から来た以前のメールを見せる。
美咲が愛助のメールを読む。
「俺が…性感マッサージ…『密指サロン・万華鏡』…ちょっとお高いけど、心も体もリフレッシュ…癒しスポット…だ。…ノアさん…これ…行って無いよね?」
「たしか…体が痛かった日だから…行ってないです。…あの日は紗也さんに湿布貼ってもらいました。」
美咲の目が少し細くなる。
「すごい人…ね…。」
「はい!100人斬りした人ですから!」
美咲は小さい声で言う。
「…ノアさん…それ…きっと意味が違う。」
傘に当たる雨の音でノアの耳には届かなかった。
「とにかく、高くてもノアさんにはダメなの!それならクランの方がゆっくりできるじゃない。」
「そうですか?せっかくししょーが教えてくれたんですけど…。」
美咲は心の中で晶と紗也に助けを求めた。
向かいから自転車、カッパを頭までかぶった…男性が通り過ぎていった。
「うぉい!」
「はい!クランでいいです。」
美咲の一人突っ込みがノアに効く。
クランまでは通ったことがない道を二人で歩く。
美咲の肩には優しさの跡がしっかりとついている。
ノアには浮かび上がるブラジャーの肩紐がはっきりと赤色に見える。HP-5(残り59)
「美咲さん肩が濡れてます。もう少しそっちに…。」
美咲は斜めにしていた傘を真っすぐに立てる。
ノアの一歩と美咲の一歩が揃わずに時々腕が触れる。
「ベタベタしますね。」
美咲は狙って触れていたのに、ノアの腕が雨に濡れたことでベタベタと不快感が勝っていた。
「…そうだね。」
HP1回復(残り60)
しばらく歩くと雨の中で濡れてうずくまる女性がいた。
雨の音よりも大きな泣く声が美咲とノアには聞こえる。
美咲はそっと横をすり抜けようとし、合図の意味でノアと目を合わす。色メガネ発動
美咲は女性の肩に手をかけ、優しく声をかける。
「大丈夫?…?」
ノアは女性に近づき声をかける。
「どうしたの?」主夫耐性発動
女性の体は雨に濡れて冷えていたはずなのに、温かさを感じ涙が止まる。
違和感から傘をさす美咲を見た後、ノアと目を合わす。色メガネ発動
女性は立ち上がりノアに抱きつく。HP-50(残り10)
「ありがとう。…?」
混乱していた美咲に、女性の抱きつきが嫉妬と独占欲を一気に押し上げた。
引き離そうと女性の左肩を右手で掴むが、女性が自ら離れ手を振りほどく。
女性も色メガネの影響に混乱し、二歩さがった所で立ちすくむ。
「わ、私…。」
美咲は女性に見せつけるつもりで、ノアの腕を掴み自分の方に引く。
「ノアさん!」
自分に意識を引く為の力強い声に、ノアは美咲を見る。
二人の目が合う。色メガネ発動
美咲はノアの頬を右手で平手打ちする。
「嫌い!」
ノアは状況の理解ができず立ちすくむ。
後ずさりする美咲から嫉妬や独占欲が一瞬で消え去り、混乱と後悔だけが残る。
おろした赤い傘が手から離れ、女性の前に転がる。
「えっ?なに?」
美咲は傘を拾うことなく、その場から走って逃げる。
立ちすくむ二人に、降り続く雨が顔をつたう。
HP1回復(残り11)




