大丈夫!
澪がテーブルにパンケーキと飲み物を置いていく、つづけてナイフとフォークを晶とノアに渡す。
「いただきます。」
澪は自分の分を取り、パンケーキに切り目を入れる。
ナイフを置いてケーキシロップをかける。
「へぇー、そうするんですね。」
「この方が均等に入るでしょ。」
向かいでは晶が一口サイズに切った部分にイチゴジャムをつけて食べる。
「うん、美味しい。」
ノアは澪に習って切り目を入れ、ケーキシロップをかける。
澪が一口食べる。
「美味しいです。」
ノアも一口食べ、頷く。
「はい、シロップが甘くて美味しいです。」
ノアは晶のお皿に目がいく、晶はノアの視線を意識していた。
ノアに見せるようにイチゴジャムをゆっくりつける。
「食べたい?」
「はい!」
目を輝かせるノアに、フォークに刺したパンケーキを口元に差し出す。
ノアと晶の目が合う。色メガネ発動
「良いんですか?」
ノアは晶のパンケーキに向かって口を大きく開ける。
澪は二人のやり取りに手を止め、ノアの口元にあるパンケーキを凝視する。
「あーげない。」
晶はフォークを引き自分で食べてしまう。
澪はノアの口に入っているように見えた。
ノアは口を閉じたが口の中には何も入ってない。
三人ともが理解できず、空気が固まる。
「…。」
晶が真っ先に、パンケーキを一口サイズに切りながらその場を取り繕う。
「…ごめん…冗談だよ。」
晶は何が起こっているのが理解できず、困惑した表情でうつむき加減にお皿をノアに差し出す。
「どうぞ。」
澪は晶の顔を見て、ツンデレ特有の恥ずかしいとはどこか違う不器用なPRに思えた。
ノアは自分のフォークで、晶が用意してくれた一口サイズのパンケーキをさし、イチゴジャムをつける。
「晶さん、ありがとうございます。」
晶はさんづけと丁寧なありがとうございますから、距離感の遠さに感情が抑えらなくなり、涙が出てくる。
澪は晶の隣に座り、そっと手を背中に添える。
ノアはテーブルに身をのりだし、涙する晶に声をかける。
「大丈夫?俺が何かした?」主夫耐性発動
晶は首を横に振り、顔をあげると一粒の涙が頬を伝うが、笑顔で答える。
「んーん、大丈夫。」
主夫耐性により冷静に戻り、澪に笑顔で頷く。
「ごめん、食べよう。」
澪は元の席に戻り、晶を気にかけながら食べるのを再開する。
空気は張りつめてないのに、さっきまでの美味しさを感じない。
晶の涙の意味もわからずに不安が募る。
ノアも少し顔を下げ、無言でパンケーキを食べる。
晶の食べるペースが上がり、すぐに食べ終わる。
「澪さん、ノアさん、ごめんね。もう大丈夫だから。」
澪は食べ終わることで聞かされる何かが不安に、口に入れた物が喉に引っかかる。
「んっ、んー。」
飲み物を慌てて飲み、流す。
ノアが手のひらで澪の背中を軽く叩く。主夫耐性発動
「んー、ノアさんありがとう。」
澪は不安が興味に変わり、同時に味覚が戻ってくる。
「ノアさんさっき言ってた聞いてほしいことって何ですか?」
「後少しだから、食べてからで良いですよ。」
澪もノアも食べ進めて完食する。
澪は軽く口を拭き、飲み物を少し飲み、両手を太腿の上に揃えて構える。
「どうぞ。」
「はい、あのぉ…。」
ノアは自分の特異体質を説明するが、新スキル『色メガネ』だけが抜ける。
「そんなことってあるんですか?」
澪は晶を見て聞く。
「私はノアさんの言葉をそのまま受け取りました。その上で事実を体験しました。」
「それって…、私はどう接すれば…。」
「みんなそう思ってるよ。」
「みんな?」
「あなたで四人目、他の二人もあなたと会いたいんじゃないかなぁ。」
「…。」
「大丈夫、ギスギスした関係ではないから。」
ノアが笑って答える。
「俺も皆さんと楽しく過ごせる日が来ると思ってます。」
「…大丈夫?痛みとかは無いの?」
「はい、全く無いです。」
「でも…、私の心が痛む…晶さん…?」
澪は晶の涙の訳が心の痛みなのだと気づく、晶はそれに頷く。
ノアは不安げに問いかける。
「こんな俺ですが友達になってくれますか?」
「それはもちろんですよ。」
「澪さん、ありがとうございます。晶さん、俺今日は帰ります。」
澪と晶の声が揃う。
「えっ?」
澪はノアに目を合わせる。色メガネ発動
「澪さん通してもらえますか?」
「はい。」
澪は立ち上がり杖を渡す。
ノアは晶の目を見て謝る。色メガネ発動
「晶さん、さっきはごめんなさい。」
「はい。」
晶は座ったまま動けない。
ノアは明細を持ってレジに向かい、全ての支払いを済ませる。
下を向いてゆっくり出ていく。
ノアは店を出て家に向かって歩く。
こんな俺が友達を増やして良いのだろうかと考えると涙が出てくる。
ファミレス内でノアがダメージを受けてないことに誰も気づいていなかった。




