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ノアデバッグ会議

美咲は朝のことを思い出しながら話し始める。

「ゴミを捨てに行ったら、ゴミの中に人が居て、良く見たらノアさんだった。」

「酔っぱらってる?」

美咲が首を横に振る。

「飲んでないって、酒臭くはなかったよ。」

「ほー、それで?」

「杖で引っ張り起こそうとしたけど、逆に引っ張られて…。」

美咲が躊躇しているのが表情にでた。

晶が言葉を繋ぐ。

「上にのっちゃったんでしょ。…そこでダメージが入るとして、酒臭くなかった…キス…した?」

紗也が下を向いてメモを書いていたが、キスに真っ先に反応し、目からレーザービームでも出したかのように美咲を見る。

美咲は直接目で受けてしまい、少し怯む。

慌てて紗也の方を向き、右手のジェスチャーも入れて訴える。

「してない、してない。そこだけは絶対してない。」

キスを言葉にさせない紗也の眼光は、膝の上に手を戻す美咲の肩を小さくさせる。

晶が尋問の圧力が強すぎると感じた。

「紗也ちゃん、お互いの情報共有だから…ね。」

「はい、ごめんなさい。」

紗也はメモの続きを書きはじめる。

「ホントにキスはしてないよ、顔も胸の上ぐらいだったと思う。」

美咲は情景を思い出すのではなく、二人の目が見れなくて目をつぶる。

「そこだと酒の臭いはわかるね、ノアさんには髪の匂いまで女性を意識させちゃうな。」

美咲は目をつぶることで、晶の言葉を全て肯定してしまうと気づき晶を見る。

「…それは不可抗力だよね?」

「まぁ接触側に意識がいってるとだけど、接触ダメージの方が大きいはずだし。接触してなければ匂いで意識されることはあると思う。」

「そんなとこまで!?」

「それで、すぐに離れたの?」

「えーっと、5分ぐらいはもがいたけど普通に起きれなくて…。」

「5分…時間かぁ。」

「いや、いやいやいや、あの袋の山は抑えても凹むから、ノアさんに触れないと出れなかったんだって!」

「ギュって抱きしめたりはしてないんだね?なら意識は?」

美咲は紗也の書く手が止まっているのを音で感じる。

「はい、絶対にしてません!意識は…しました。」

晶が笑う。紗也と美咲は意味がわかってなかった。

「ぷっ、美咲さんの意識じゃないよ、聞いたのはノアさんの意識だよ。」

美咲は顔を真っ赤にして取り繕おうとする。

「えっ、今のは無し、…。」

紗也が笑い、取り繕う美咲に声をかける。

「晶さんはちゃんと好きって言ってるし、私も好きって気づいた。美咲さんも良きライバルでいましょ。」

晶がフォローを入れる。

「ごめんね、あなたの気持ちを笑ったつもりはないから許して、それと私の質問が悪くてごめんなさい。ノアさんのダメージ解析だからね。」

「…。ノアさんの意識はあったよ、ズレながら下がっていけば良いってノアさんの案だったし。」

「そこで意識はあるのか、じゃぁ、ズレながら下がった時にどこ触ったとかわかる?」

美咲の目が一瞬大きくなるのを晶は見ていた。

「顔は触れてないよ、胸とお腹と…ぐらいかな。」

「…紗也ちゃん、美咲さんの上にのって再現してみようか?」

美咲が手を広げて静止する。

「えっ!?ここでは…ちょっと…。」

「ちゃんと細かく話せる?」

美咲はカウンターの4人を見て、テーブルに体を寄せ顔をつき出す。

晶と紗也はコップをずらし、上半身をテーブルの上にかぶせる。

美咲は小声で話しだす。

「最初は腹筋とかで行けたんだけど…、骨折した方の足を挟む形に足が出ちゃったから、体重かけるのはまずいなぁって思って…、股間をおしちゃった。」

晶と紗也はコメントに困る。

「…。」「…。」

「それで立ち上がれたってわけ。」

「…だいたい想像はできたけど、…顔も自然と股間を通過してるように思えるのは私だけ?」

晶が紗也を見る。

「わっ、私だったら真っすぐこないで、骨折した左より右足側に抜けると思います。さすがに…真上は避けます。」

「でも左足側にのっていたから左脇を抜けれるか。」

美咲の顔は赤くなり、顔を引っ込めて下を向いている。

晶は美咲の顔から察する。

「まぁ、顔の位置はダメージに影響してないかもしれないけど、触った場所で落ちたか『悪あがき』が発動したかだね。」

美咲は顔を真っ赤にしたまま振り絞って声を出す。

「だったら掘り下げないでよ。」

「可能性が0では無いよ、だって…なかなか意識させるよ。女性がそこにいたら…。」

晶の顔も赤くなっていく。

聞いてるだけの紗也の顔も赤くなっていく。

「…。」

紗也がストローに口をつける、晶と美咲もつられる。

紗也が最初に口を離す。

「ノアさんの意識はあったんですか?」

「あったんじゃないかなぁ!?声は聞いてないけど、助けが来たって言ったら腕が動いたから。」

晶は紗也のメモを見る。

「HP60でくっついて、股間触れても耐えれるダメージってことになるね。」

紗也もメモを見る。

「そういうことですね。でも夕方にはすでにスキルを使っていたからその間の出来事ってことですよね。」

「…あれ!?その後の説明聞いた時に、私が上にいた時の記憶がないって言ってた。」

晶は逆から考える。

「ってことは股間に触れて失神、その前に上にいた時に一度0で『悪あがき』が発動してるってことになるよね。」

紗也がメモを修正する。

「上にのった時点でダメージが60以上は、…。」

晶が紗也の顔を覗き込む。

「あなたは失神している時に湿布貼ってあげたんでしょ、一緒にしない!」

紗也は弱々しく答える。

「…はい。あっ!でも私が自転車でぶつかった時も上にのりました。あの時は…、ノアさんの意識はありました。」

「…とすると密着度合いか手の触った所か、何か他の原因…、…時間…妄想…色気…欲。…多すぎてまだわからないね。」

美咲がモジモジ話したそうにする。

「色気は出してないと思うんだけど…、あの時は脱出が大変だったし。」

晶は笑いながら言う。

「これが外国映画だったら、脱出劇の最中にラブシーンなんてザラにあるんだけどね。」

美咲も笑いながら言う。

「ゴミに埋もれての脱出劇って、さすがの外国映画でも無いでしょ。」

紗也もクスクス笑っている。

晶が笑いながら聞く。

「美咲さんの話でちょっと詰められたかな、…でもそのまま家に行った?」

美咲は笑いが止まる。

「服になんかついてたし…、家で…シャワー浴びて…着替えてから行った。」

晶が意地悪に質問を重ねる。

「ちょっとは何か期待してたんじゃないの!?」

「…それは、…なかったわけではないかも、…ちょっとぐらいしても良いじゃん。」

紗也が晶に率直に質問する。

「晶さんは美咲さんのことをすでに知ってたんですか?」

晶は美咲から目を背けずに答える。

「美咲さんのメモにあった言葉を私も書いたから。」

「なんて書いたんですか?」

「女家に連れ込んで手も触らないで寝るな!だったよね。」

美咲は思い出して赤くなる。

「…だってその時はそんなの知らなかったし。」

「メモから何もしてないって読めたから、彼女かと思って警戒してたの。」

「なるほど…、看護師さん!?」

「たぶんないと思うよ、今のノアさんには特定の人はいないと思う。」

三人はノアを省いてグループ会話ができるように登録する。

テーブルには空になったコップが3つ並ぶ。

ただ、ストローの向きだけは、それぞれ違う方向を向いていた。

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