本心
ノアは夕方まで昼寝を繰り返していた。
HP1回復(残り38)
スマホに紗也からメッセージが入る。
ノアは驚いてスマホを拾う。
「イテ…、イテ…。」
紗也
近所にいると思うんですけど、ノアさん家はどれですか?
紗也に通話し、アパートの外観と部屋の番号を伝える。
しばらくして、呼び鈴がなる。
「イテ…、開いてるよ!」
紗也は恐る恐るドアを開ける。
「ノアさん?」
入口の松葉杖とサンダルを見て、間違いないと安心する。
「ノアさーん、入りますよー。お邪魔しまーす。」
壁に片手をつけ、周囲を見渡しながらゆっくり入る。
緊張から紗也の心拍数が上がる、部屋の中が全部見えるがノアの姿がない。
ガチャ!ジャー。
入口付近のユニットバスの扉が開く。
「きゃぁー!」
心拍数が最大まで上がる。
「イテテ…、わざわざごめんね、ありがとう。」
杖を使わずにノアがトイレからのそっと出てくる。
鞄と湿布薬の入った袋を端に置き、すぐにノアの横に移動し、左手を持って自分の肩にかける。HP-15(残り21)
二人は目をゆっくり開け、互いの目を見る。
「………。」
紗也の心臓は最高潮を維持している。
何も喋らない目を反らさないノアに、紗也の視線は唇に向く。
紗也はこのまま黙ってキスしてほしいという願望を覚悟に変えていた。
「瞳がすごく綺麗ですね。」
ノアはここまで間近で瞳を見るのが初めてだったので、瞳孔や虹彩から目が離せなかった。
視線を見られていたこととノアの言葉が後押しになり、紗也自らキスをする。HP-10000(残り0)
………プツン。
紗也はノアの腕から力が抜けたことを感じるが、唇を離せない。
自分が守りたいと思っていたのはノアではなく、自分の心だったんだと気づき唇を離したくない気持ちが、唇を離せなくしていた。
ノアの腕に力が入ることは無いのはわかっているが、抱きしめてほしい願望だけが紗也の感情を虚しくさせる。
虚しさが紗也の涙を外に押し出す。
「ノアさん、私はずるいと思う。ごめんね。」
右手をノアの頬にあて、親指でノアの唇についた口紅を拭う。
ノアの腕をのけて、立ち上がりノアを見下ろす。
声を出して泣く、流れてくる涙を手で拭うが次から次へと溢れでる。
「うわぁぁん。うっ、うっ。」
感情を全部出し、しばらくして気持ちが落ち着く。
涙を拭いて、テーブルを端に寄せる。
ノアの両脇の下に手を入れて、テーブルとベッドの間に引きずり寝かす。
Tシャツを脱がせ、上半身を起こし、倒れないように抑えながら、肩甲骨に1枚ずつ湿布薬を貼る。
もう一度寝かせ馬乗りになり左腕の肩寄りに1枚貼る。
玄関のドアが開き美咲が入ってくる。
「ノアさーん…、…なっ、何してるのっ!!」
「ちょっと静かにしてて下さい。」
紗也は右腕にも左腕と対照の位置に湿布薬を貼る。
ベッドから枕を取り、ノアの頭の下に敷く。
布団を取り、ノアの体にかける。
「…ごめんね。」
鞄を取り、美咲の前に立つ。
「ここじゃなく外で話しましょう。」
一言だけ言って、紗也は部屋を出る。
威圧とも取れる力強い紗也の言葉と、目が真っ赤になった表情から美咲は言葉が出ずについて出る。
紗也が外に出ると同時に、晶からメッセージが届く。
晶
紗也ちゃん、ノアさん家はわかった?私もいこうかな!?
紗也
ノアさんの家に女性が入って来て、今からその人と話をしようと外に出ました
晶
直ぐに行く、どこで話をする?
紗也
昨日のクランでどうですか?
晶
わかった、すぐに行くから、合流するまで待ってて
紗也は振り返り
「ここから自転車で5分ほどの所に、クランってお店があります。そこで話をしたいのですが、自転車はありますか?」
「クランならわかるし、自転車ならそこにあるから行けるよ。」
「じゃぁ、そこまで行きましょう。」
紗也は自転車に乗り、走り出す。
「ちょ、ちょっと待ってよ。」
美咲は自分の自転車を取りに戻り、乗って追いかける。




