真っすぐ
ノアは部屋に入り、服を洗濯カゴに放り込む。
お風呂ミッションにも慣れたつもりでいた。
「イテテ、ヤッパリ…カラダガ…イタイ…。」
一人になるとなぜかロボットのような喋り方になる。
「キンニクツウ…ッテ…イテテ…。」
何とか体を洗って出てくる。
体を拭きながら鏡で頭の上のHPを確認する。
「…3っか、さっき一度落ちてるしなぁ…美咲さんにも迷惑かけただろうなぁ。」
体を拭き、着替え、洗濯カゴの中身を、裏手に置かれた洗濯機に入れまわす。
コンコン、ドアをノックする音が聞こえる。
「はいっ、開いてます。」
ドアが少し開き、美咲が顔を見せる。
「邪魔するぜー。」
HP1回復(残り4)
美咲が部屋に入って来て、テーブル前にあぐらをかいて座る。
「ここに座るね。こないだは…友達登録できなかったから…、書き置き見た?」
「はい、友達に登録してもらいました。」
ノアはベッドに腰かける。
「あのぉー、ちょっとだけ聞いてほしいことがあるんですが…。」
「なーに?」
「さっき気を失ってたことなんですけど…。」
「ん!?そうなの?全然気がつかなかったけど。」
「迷惑かけることもあるので、友達になった人には知っててもらいたいんです。」
美咲は両手を後ろについて体を反る。
「迷惑なんて思わないから言ってみて。」
ノアは自分の特異体質を細かく説明する。
美咲は説明を受けて顔がほころぶ。
「ふーん、記憶無いんだ!どっから覚えてないの?」
「倒れた時ぐらいから覚えてないです。もし傷つけてたらごめんなさい。」
「私は全然平気だよ。」
美咲の思考
倒れた時のドキドキも忘れてくれてるなら、それはそれでアリだな。
ずれて出る時に顔が股間の上を越えたり、最後に股間を手で押したのも覚えてないって事だもんな。
正直、キャラ作って来たけど、そっちが忘れてるならセーフだよね。
ヤバいキャラ作って来た方が逆に恥ずかしい。
そう思うと全然平気って、自分で言っときながら何か逆に悔しいな。
HP1回復(残り5)
「でも、女性耐性が無いって…それはそれで大変でしょ。」
「意識と記憶を失くすことは避けたいと思ってるんですが、どうにもならないし、レベルアップしてるから…。迷惑はかけたくないんです。」
「不思議な感じはそこから来てるんだろうね。でも真っすぐで良いよね。」
「ありがとうございます。」
「女性には興味はあるんだよね?」HP-1(残り4)
「はい、恋も愛もよくわからないので…でも、女性を知りたい気持ちはあります。」誤爆HP-3(残り1)
「そういう時はやっぱり友達から入ると良いんだよ。」
「そうなんですね、友達も少しづつ増えてきてるので、それは嬉しいです。」
美咲はノアに聞こえない声で呟く。
「…やっぱり何か悔しいな。」
「晶さんと紗也さんが俺を理解してくれて、HPがあるせいかゲームの主人公みたいだって、だから自分達はプレイヤーなんだって言ってました。」
「なにそれ!?」
美咲の思考
さながら乙女ゲームってことか、ちょっとかじったけど、じれったさが性にあわなかったからなぁ。
好きにすればって、気持ちにもならないのはなぜだろう?晶と紗也の動向が気になってきた。
「晶さんも紗也さんもそれぞれ違った形の優しさがあるんです。」
「それだとHPが削れるんじゃないの?」
「全てではないようなので、晶さんのバランス感が良いんだと思います。」
「一度二人にあってみたいな、私も友達増やしたいし。」
「紗也さんは今日の夕方に、湿布薬持って来てくれるって打ってました。」
「ここに来たんだ?」
「いえ、一回も来たこと無いですよ。友達登録した時に居場所も交換しようってことで、アプリに登録してもらいました。」
「…夕方に来れば会えるのね、どうせ仕事もあるし、私の電話番号、ちゃんと登録できたか確認したかっただけだし。」
HP1回復(残り2)
「仕事ですか…、この時間で仕事って結構自由なんですね。」
「管理栄養士ってわかる?」
「いえ、全く聞いたことありません。」
「簡単に言うと、料理の栄養バランスを考えて献立を作るかな。」
「料理ですか…、大変なんでしょうね。」
「…今の返しは、全然理解してないでしょ。男ってそういう所はうといよね。」
「すいません、何でも美味しく食べてるんですけど…、栄養バランスまでは考えてないです。その時に食べたい物を食べる、じゃぁダメなんですね。」
「そうだよ!作る人の気持ちを理解しなさいよねぇ。」
「重いはしっかり受け取りました。けど…。」
「まぁ世の中そういう人が多いから、入院とかすると気にしだすけど、それも一時だけだし。」
「二日間入院したけど、気にかけてない所を、そっと気にかけてくれてたんですね、ありがとうございます。」
「ん!?」
「バランス…俺には出来ないことだから、あなたのような人が傍にいれくれると嬉しいです。」
「えっ!?…まぁ、料理はハートだからね。」
美咲は揺れる気持ちをごまかしたかったが、言葉が先にでる。
「なるほど、料理はハートなんですね。」
「そこ…、そこは複唱しなくていいの。なんだか恥ずかしいじゃない。」
「俺も美咲さんの料理がもっと知りたいです。」
「…そのうちね。…また夕方来るよ。」
美咲は立ち上がり、ノアの顔を見れず、視線は下半身に向いてしまう。
「あなたの料理を楽しみにしてる人がいますからね。」
「…じゃぁ、…後で。」
美咲は素っ気なく部屋を出ていく。




