傷。
店内には制服の女性だけ、カウンターの中でグラスを磨いている。
晶は昨日座った席と同じ所にノアを座らせる。
「ノアさん、そっちの方が楽でしょ。」
「はい。」
ノアの向かいに晶、紗也は晶の横に座る。
制服の女性が氷水とメニューを持ってくる。
「昨日に続けてありがとうございます。お食事でよろしかったでしょうか?」
「うん、今日は御飯食べに来たから。」
「決まりましたら呼び鈴でお呼びください。」
女性は軽く頭を下げ、カウンターの中に戻る。
「紗也さん何食べる?私はオムライス。」
紗也は店内を見渡している。
「私も同じで良いです。」
「俺も一緒にする。」
晶は呼び鈴を押さずにカウンターの方へメニューを持っていく。
晶は制服の女性に話しかけ戻ってくる。
「はい、注文完了。」
ノアと紗也は互いに顔を見ないように下を見ている。
晶が席に座るとノアが顔を上げる。
「晶さん、鏡持ってたら貸してくれませんか?」
晶はノアの伝える意図を理解し、鏡を出す。
ノアは鏡を開け、頭の上を見る。
「ノアさん、見える?今いくつ?」
「3です、あっ4になりました。」
HP1回復(残り4)
晶は素早くスマホのタイマーを動かす。
紗也は二人のやり取りを目で追うことしか出来ない。
「あのぁー、紗也さん。」
「はい。」
急に振られた紗也はビックリする。
「先ほどはご迷惑をおかけしました。」
「いえ、持病だったら仕方ないですよ。」
「…持病!?」
晶が割って入る。
「ごめん、私がそう言ったの。」
「いえ、晶さんが気遣ってくれなかったらまた落ちる所でした。ありがとうございます。」
ノアは晶に頭を下げる。
「どう言うことですか?ソファーでも見ているだけで、後ろを黙って歩いてただけですよ。」
ノアは紗也の方を向く。
「俺は特異体質でHPがあるんです。」
「HPって何ですか?」
晶が割って入る。
「紗也さんゲームしたことある?ゲームでは生命力をヒットポイントって言うの。それがノアさんにはあるの。」
「生命力って命に関わるってことですか?」
「まぁ、疑問はわかるけど、ちょっとだけノアさんの話し聞いてからにしたら。」
ノアがコップの水を飲み、話し出す。
「生命力とはちょっと違うんです。今4で0になると気を失ってしまうんです。それと気を失うと記憶が少し無くなるんです。」
紗也は頷く。
「そのHPが減る理由が、女性を意識することでダメージを受けるんです。」
紗也は口を抑える。
「ん!!」
「だから晶さんがとった行動は俺にダメージを与えないようにしてくれてたんです。」
「自分で意識してもダメージを受けるので、いつも夜は寝ちゃってて気がつけば朝になってるんですけどね。」
「今の俺は女性耐性が低く、主夫耐性が高い、そういえば今朝から悪あがきってのも追加されたんです。」
晶がノアの言葉に反応し、ノアを見る。
「どこでダメージを受けてるか自覚出来る時もあるんですけど、どのぐらい受けたかはわからないので、帰ってからいつも鏡を見るんです。」
「HPは頭の上にあって、鏡で見ないと見えないんです。しかも自分だけしか見れないようで、晶さんは見えてないって言ってました。」
晶が頷く。
「さっき0になったんだと思います。それでご迷惑をおかけしてしまいました。ごめんなさい。」
紗也は口から手を離す。
「頭では理解できたと思います。ノアさんに謝るのは私なんです。ごめんなさい。」
「さっきノアさんが意識を失ってる時に、晶さんから言われた通りでした。」
紗也の目から涙が溢れ出す。
「晶さんから覚悟を問われて、覚悟したつもりだったんですけど…。」
声が振るえ言葉にならない。
晶が紗也の背中に手を置く。
「ノアさんがゲームの主人公みたいだから、私はプレイヤーになることを決めたんだ。あなたに問いかけたのは、あなたもプレイヤーになってノアさんを守るって決めたんだと思った。」
「でも…、ノアさんに触れることも話すこともダメージになるのに…、どうして守れるんですか?」
「それを探すのがプレイヤーだよ、答えはないけど、きっとどこかに攻略方法があるんだよ。」
「意識を失わせてはダメ、記憶を無くされてもダメ、ショッピングモールからここまで私は出来たよ。知らないあなたからのダメージを防いで見せたでしょ。」
紗也は頷く。
「…晶さん、あなたも一度は…。」
「そうじゃない。」




