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誤解

入口付近では目線より少し低く積み上げられた箱の上に、靴の片足だけが同じ向きで並ぶ。

店内を見渡すと不揃いに並ぶ棚と点々と箱の山と片方の靴、壁には目線より高い位置まで一面に靴が並べられている。

客と店員さんの区別がつかないが店内には7人ほどがいた。

奥の壁まで進んでみると、似たようなデザインがぎっしり並んでいた。

値札を見ると全て2万円以下、安いもので8千円台、高いもので1万9千円台、見た目には値段の差を感じない。

「ん?色か!?個性の強い方が高くて、個性の弱い方が安いのかな?」

棚の靴を細かく見ていると後ろから声がする。

「お好みの物はございましたか?」

「これだけ並ぶと何で選んでいいのかわかりませんね。」

振り返るとスーツ姿の女性、足を揃え、手は体の真ん中で指先を伸ばし揃えている。HP-1(残り59)

首から紐をぶら下げ、先端には愛称のような手書きの文字が書かれていた。

「ギプスでは片足履くのって大変じゃないですか?」

「はい、初日はかなり大変でした、今日は二日目だからちょっとはましになりましたけど、それでも大変ですね。」

「まだ完治までにだいぶかかりそうですね。」

「一か月はまだこの状態だと思います。」

「それならその間はサンダルのような手頃な物もありますよ。」

「なるほど、簡単に履けるならそっちがいいですね。」

「すぐにお持ちしますね。立ってるのも辛いと思いますので、こちらにおかけになってお待ちください。」

女性が柱横の小さな椅子を、手を広げて案内してくれる。

椅子の低さに少しと躊躇い、立ったまま待つことにする。

向きをかえ靴を眺めていると、真っ白に金のラインが映えるスニーカーを見つける。

「あれ良いな。」

女性がサンダルを持って戻ってくる。

「こちらのサンダルなら履きやすいかと思いますよ。」

女性がしゃがみサンダルを足元に置く。

ブラウスの隙間から白い肌がのぞく。HP-20(残り39)

杖で踵をおさえて履いていたスニーカーを脱ぎ、サンダルを履いてみる。

「Lサイズでは少し小さそうですね、LLサイズをお持ちしますね。」

女性が見上げながら話す。HP-1(残り38)

サンダルを脱いで、脱いだ靴の上に足をのせて待つ。

女性がLLサイズを持って戻ってくる。

またしゃがみサンダルを足元に置く。

ブラウスの隙間を見ないように、足元のサンダルに集中する。

「ちょうどいいですね。これ右足だけ履いて帰りたいんですけど、できますか?」

顔を見ないように白いスニーカーに視線を固定する。

「はい、ではタグを切りますね。」

「はい、お願いします。あっ、このスニーカーを左足と一緒にしてもらっていいですか?」

「ではスニーカーをお預かりしますね。他に気になりましたか?」

女性がノアの視線の先を追いかけ、スニーカーの棚を見る。

「あそこの白に金色のラインが気になったもので。」

「取りますね。」

身長からは少し高かったのか、踵を上げ、手と体を目一杯伸ばすと、ブラウスの遊びがなくなるぐらいにピンと張る。

少し立ち位置をずらすが、後少し届かない。HP-1(残り37)

「あっ、俺が取りますね。」

背伸びせずにあっさり取れる。

「…すいません。…身長の高い人って憧れます。ヒョイってとれちゃうんですね。」

「あなたの為に、高くなったのかも知れませんね。」

「えっ!?あっ、そちら左足なので右足を用意しますね。」

女性が右足を探しに行く。


女性の思考

背の高い人ってカッコイイけど、今の口説き文句!?

とっさに逃げたけど…しまったサイズ聞かずにきちゃった。


女性が戻ってくる。

「ごめんなさい、足のサイズ聞き忘れてしまって、おいくつですか?」

「年齢と一緒で27cmです。…違った年は26です。」

「ちょっと探しますので、そこにお掛けになってお待ちください。」

小走りでちょこちょこと歩く後ろ姿を目で追う。HP-1(残り36)

女性は店の奥へ消えていった。


女性の思考

26歳…私より3つ上。

じゃなくて足のサイズ聞いたのになんで年齢言ったの?

足のサイズと一緒じゃないなら言わなくても良くない?

意図は何?目線は合わせてくれないし…。

…っ!このブラウスやっぱり胸元空きすぎ?私が誘ったみたいってこと!?


ノアの思考

『あなたのような人の為』って言おうとして、『あなたの為』って言った気がする。

立ったままだと胸元意識しちゃうし、サイズ変更でも…あれはマズイ。誤爆HP-5(残り32)

座れば目線下がるだろうからダメージは受けない可能性はあるけど……、椅子がもう少し高いといいんだけど……、これ究極の選択か!?

……選択肢はあるようでない、座るの一択なんだよ。


「くー、座…り…ます。」

HP1回復(残り33)

ノアは柱に体重を預け、椅子のトラップを受ける。

松葉杖を柱に立て掛け、女性を待つ。

女性がゆっくり歩いて戻ってくる。

「27cmありました。こちらが右足です。」

「履いてみたいのですがいいですか?」

「はい。」

女性が片膝を床につき、太腿の上に靴をのせ紐を緩める。

少し前屈みになり、右手で胸元を抑えながら左手で靴を足の横に置く。

ノアは靴より不自然な右手の胸元に目がいく。HP-1(残り32)

すぐに左手の先にある靴を見て足先を入れる。

女性は体を起こしてノアに靴ベラを渡す。

靴ベラを受け取って使用すると足がすっぽり入る。

「どうですか?」

ノアは自分で靴紐を少し縛る。

立ち上がらないでいいように、女性がキャスター付きの鏡を持ってきて向かいに置く。

ノアの右横に女性が座り片膝を床につく。

椅子の上で左に体の向きをかえて、右足の外側面を鏡に映るようにする。

鏡を見ると光の加減で、全体が白っぽく三角に見え、金のラインがわかりづらい。

その横には立て膝をついた女性のスカートの隙間が、真っ黒の逆三角になっている。HP-10(残り22)

あわてて靴を脱ごうと椅子の上で体を前に曲げ、手を右足の靴に伸ばす。

鏡越しの女性が同じ質問をしてくる。

「どうですか?」

視線が下がることで逆三角形のサイズが大きくなっている。HP-10(残り12)

やり場のない視点に、仕方なく鏡越しの女性に目を合わせる。HP-1(残り11)

「もうちょっとはっきり見えればいいんだけど…光加減かな!?きっと俺の目がわるいんでしょうね。これでいいです。」

「ありがとうございます。では箱にいれますね。」

「はい、お願いします。」

「お会計は現金でよろしかったですか?」

「はい。二万円で足りますか?」

「サンダルが1980円とスニーカーが13800円で、それに消費税になりますので十分足りますよ。」

靴をもって立ち上がる女性に、ポケットから二万円を出して渡す。

「では、少々お待ちください。」

女性は靴を持ってレジに向かう。


女性の思考

『これでいいです』って納得は出来てないのかなぁ!?

『はっきり見えれば…光加減…目が悪い…?スカートの中を見せてた!?

いや、今日は黒で金の淵を履いているから見えてない、見えてない。

…私から仕向けて誘ってるように見えてるかなぁ?

誤解は解きたいけど…何て言えば…。


ノアの思考

『もうちょっとはっきり見えれば…光加減…』ってスカートの中が見えればって取れるよね。誤爆HP-1(残り10)

目が悪いってごまかしたつもりだけど。

誤解は解いとくべきかな。


女性がお釣りを持って戻ってくる。

「あのぉー、…故意ではないので…。」

「恋!?いや、さっきのはラインが見えにくいと言うか、金がわかりにくいって言う意味で…。」

「すぐに袋に入れてきます。」

女性が顔を赤らめてお釣りを手渡しレジに戻る。


女性の思考

『ライン…金…』って完全に見えてるってことだよね。

…軽い女って思われてる。


女性が袋に靴の箱を入れて戻ってくる。

「立てますか?」

「両手を引っ張ってもらえれば立てると思います。」

ノアは両手を前に出す。

女性は袋を横に置き、ノアの両手を掴む。主夫耐性発動

「いきます!んー!!」

ノアのお尻が持ち上がる、膝の角度が90度を越え足に力が入る。

「やったー、一人じゃ立てなかったんだ。ありがとう。」

女性が伏せ目がちで松葉杖を取ってくれる。

ノアが杖を脇に挟み、女性から袋を手に持たせてもらう。

「袋が大きいけど歩けますか?」

「ゆっくり行きますので大丈夫です。」

「あのぉー、さっきのことですが…私…軽い女じゃないので…!」

「…はい。…?」

「ありがとう。」

「ありがとうございました。」

ノアはゆっくり歩き店から通路出る、女性は通路との境まで来て頭を下げる。


ノアの思考

『恋じゃない…軽い女じゃないので…』…それはつまり…愛ってことか!

なるほど、愛って見せれないところを見せるってことか。誤爆HP-5(残り5)

俺も『恋』だけでなく『愛』を知れる日が来るだろうか!?


女性の思考

なんだろうあの手をさわった感じ…誤解が一瞬どうでも良くなったというか誤解されてもいいやって思えた。

誤解されたままはやっぱり嫌だし、軽い女じゃないって言ったけど…取り方によっては告ってる?

まぁいいや、誤解されてたらされてていいよね。

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