かいしんの一撃
ノアはゆっくり体を起こす。
「二つ質問していいですか?」
「はい、大丈夫です。」
「今のHPはマックスですか?」
「今までと同じならHPは1です。」
「気を失ってる間だとおおよそ10分ですね。記憶はどこからないですか?」
「カフェから外に出たところから思い出せません。」
「ってことは、おおよそ20分ほど前から記憶が消えてるので、気を失ったところからだと10分くらいかなぁ。」
「ここで気を失うと困るから……、ノアさんの家に行こー。」
「はい、…大丈夫でしょうか!?」
晶が返答の仕方を考える。
「……大丈夫!さぁ行くよ。」
ノアは煽られるように松葉杖を取り、公園を出る。
「ノアさん、さっき入れたアプリでお家も入れられるから、設定すれば迷わないよ。」
ノアは立ち止まり、スマホを晶に預ける。
「見れないので、お願いします。」
「オッケー、住所は?」
「〇〇町〇〇32-1です。」
「こっちの道から行くと近い、歩いて15分だって。」
ノアは前を歩き、晶が後ろをついていく。
「細い道だと障害物がなくて歩きやすいですね。」
「無理して速くならなくてもいいよー。」
「はい!」
黙々と歩き二人は20分ほどでアパートの入口につく。
「ここです。」
「今歩いた時間でHPは回復してるの?」
「少しだけですが回復してると思います。」
ノアは部屋の鍵を開けて扉を抑える。
「どうぞ。」
晶は入らずに扉を背中で支える。
「足がそんな状態なんだから先に入りなさい。でも、男としては立派です。」
「はい、じゃー先に入ります。」
松葉杖を玄関に置いて、壁に背中を押し付けゆっくりお尻を床につける。
右足の靴を脱いで、左右の壁に手を押し当て、腕の力で立ち上がる。
松葉杖を1本使い鏡でHPを確認する。
晶は後ろから入ってきて鏡を見る。
「何してるの?」
「はい、帰ったら鏡を見る習慣になってて、HPが頭の上に出てるんです。」
「ん?何も見えないよ。」
「そうなんですか?俺にはHP4って見えてるんですけど。」
「4?公園から30分ほどだから、10分に1ぐらい回復してるのは間違いなさそうだね。」
晶は部屋を見渡す。
「ベッドとテレビとテーブルか、無駄にごちゃごちゃしてないね。」
「家具備え付けの部屋を借りたので、全部最初っからあった物です。」
「座っていい?」
「あっ、ごめんなさい。」
ベッドに今朝脱いだ服やパンツが無造作に置いていた。
「ノアさん、片付けるから座って、どこに洗濯物は置いてるの?」
「すみません、この扉を開けたところのカゴに入れてます。」
晶は選択物を取り、匂いを嗅ぐ。
「んー、ノアさんの匂い。」
「晶さん…それは…恥ずかしいです。」
ノアは顔を反らし、晶はノアの反らす顔を追いかける。
「初めてそんな顔を見せたねっ!これからもっといろんな表情を見せてもらうからねっ!」
「あんまりいじめないでください。」
ノアがベッドに座ると隣に晶が座る。HP-2(残り2)
「きっとこれでもダメージ受けてるのかな?」
「そ、そうですね。」
晶はノアの表情を見る。
「なるほど、だとすると後3かな?」
「…見てみます。」
ノアは立ち上がり鏡を見る。
「今でHP2です。」
「そっかダメージだから常に1じゃないのかぁ!」
晶が鏡に映るノアを後ろからスマホで撮影する。
「ねぇ、御飯はどうしてるの?」
「いつも…意識をなくしてそのまま寝てます。」
「そっか、その足だから外にも出にくいよね。」
「そうだ、割高だけど宅配サービス使えばHP0も防げるし、その足でも御飯食べれるよ。」
「宅配サービス…って何ですか?」
晶はノアをベッドへ手で誘導し座らせる。晶はテーブルの横に座る。
「この部屋まで食べたいものを届けてもらうの。注文した時点で支払いもされるから商品受け取るだけ。」
「支払いもされる?」
「アプリに銀行口座を登録してぇ、アプリにお金を移してぇ、注文時に支払い方法を決済アプリにすれば支払いができるんだよ。」
「何段階かあるので難しそうですね。」
「やってみる?聞くより簡単ですぐに慣れるよ。」
「はい、お願いします。」
ノアはポケットに手を突っ込む。
「あれ?スマホ…。」
「これだよ、後ろから撮ったのはノアさんのスマホだよ。」
晶は決済アプリをダウンロードする。
「ノアさん通帳見せて。」
ノアは通帳をだし晶に預ける。
「ほい、登録できたよ。後はいくら移すか!?」
ノアにスマホと通帳を返す。
「ひとまず一万円移しておきます。」
「それで、決済アプリは完了。」
晶は自分のスマホをだす。
「ノアさん、何か食べたい物ある?」
「……、……、わからないので晶さんの食べたい物を一緒に食べたいです。」誤爆HP-1(残り1)
「そーだなぁ、とりあえず…プリンでも頼んでみよう。」
「ノアさんも検索にプリンって打って、この店のを注文してみて、数は2個ね。」
「はい、…………できました。」
「良くできました、後は来るのを待つだけだよ。」
晶は待ってる間に落ちていたメモを見る。
『女家に連れ込んで手も触らないで寝るな!鍵は閉めてポストに落としておくね。』
「このメモは誰からですか?」
ノアに文字が見えないように紙を振る。
「えーっと…きっと北原美咲さんです。」
「うーん、詳しくは聞かないけど…この人には気を失うこと伝えてないの?」
「はい、たぶん…晶さんだけにしか伝えてないと思います。」
晶はテーブルに紙を置き、表情を変えずに淡々と話す。
「たぶん…か、記憶なくすからそうなるよね。でも文面からしても伝わってないよ。寝るなって寝てると思ってるし。」
「目が覚めたら置いてありました。」
晶の思考
ライバル…なんだろうけど、私の方が一歩リードかな!?
「ノアさん、この人にもHPがあること伝えるの?」
「…俺としては…友達なので伝える必要があると思ってます。けど…理解してもらえるでしょうか?」
「友達なので…、…私も…か…。」
晶の思考
うーん、私もまだ友達…よりかは一歩進んでるかな!?
HPのこと伝えた方がいいのはわかるけど…ライバル…共同プレイヤーが増えるし…、理解されるかわからない…か。
ん!?…北原美咲って人は共同プレイヤーになりそうだけど、他の二人はただの友達の可能性だってあるよね。
共同プレイヤーに説明するなら私も同席すればいいんだ。
友達なら伝えなくても…ってノアさんが女性と意識するだろうな。
うーん、三人とも会って私が確かめるしかないのか。
「ノアさん、話す時は私が一緒にいてもいい?私も説明できるし、理解されやすくはなるよ。」
「はい、その方が助かります。」
「ししょーにも言う方がいいのでしょうか?」
「男は説明要らないと思うなぁ、その人の前で意識失わないでしょ。」
「はい、たぶんですが…。」
HP1回復(残り2)
宅配サービスの人がインターホンを押す。
「きたみたいだよ、貰ってくるね。」
「はい、ありがとうございます。」
晶は玄関の扉を開けに行く。
「今のよそよそしいありがとうは……、一歩もリードできてなさそー。」
晶が袋を手に戻ってくる。
「はい、じゃぁー食べよー。」
「おー。」
ノアは拳をあげ、こどものような無邪気さを見せる。
「…その無邪気さがノアさんのいいところだね。」
「ありがとうございます。」
「……遠い。」
晶の思考
私が一番になるには…HP1か2だし…。
『好き』って言えば一発KOの記憶なしは確実だろうし、プリンを食べさせても距離近づいて一発KOの記憶なしは変わらないし…。
今記憶飛ぶと宅配サービスを覚えれないよなぁ。
忘れていい10分ってそんなのないよー。
……詰んだ。
「ねぇ、ノアさん。」
「はい?」
「このプリン美味しいね。」
「はい。」
「……。」
「……。」
「10分って長いね。」
「何か待ってるんですか?」
「記憶の消えてもいいラインです。」
「…そろそろ10分かな!?」
HP1回復(残り2)
「ねぇ、ノアさん。」
「はい?」
「私のこと、これからは晶って、さんをつけずに呼んで。」HP-1(残り1)
ノアは緊張し晶の目を見る。HP-1(残り0)
………プツン。
ノアはベッドに倒れる。
「だぁー、呼ぶ前に落ちるんかい!……ノアさん、ちょっと悲しいよ。」
「起きてもHP1だし、進展できないじゃん。」
晶は気を失うノアの上にのり、唇を重ねる。
晶の目から涙がつたいノアの頬に落ちる。
晶は顔をあげ、ノアの胸の上に顔を置き、目をつぶる。
ノアの鼓動が聞こえる。主夫耐性発動
「今日はこのぐらいで勘弁してやるぜ!」
晶は前日の北原美咲と同じメモをつくり同じように鍵を閉めて帰る。
……超勘違い、超妄想できず。
……かいしんの一撃(ノアの無言のカウンター炸裂)




