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救いの手

入院二日目の朝、朝食ののったトレーを担当の看護師がよそよそしく持ってくる。

「今日は何時にでますか?

「これ食べ終わったら出ようと思います。」

「…そうですね。」

すぐに食事をすませ、二日前に来ていた服を着て、退院の準備をする。

病室を出て、ナースステーションの看護師達にお礼を言う。

受け付けロビーで、支払いを後日持ってくると伝え、病室の自動ドアを出る。

「とーっても、気持ちのいい朝だな。」

両手を空に広げて、背中を伸ばすと松葉杖が左右に倒れる。

自動ドアが開き、後ろから来た人が杖を拾ってくれる。

「自分では取れなくなるから、両手は離さないこと。」

笑顔で拾ってくれたのは担当の看護師さんだった。HP-1(残り49)

「テレビ台のところにメモを忘れてましたよ。」

「そっか、わざわざありがとう。」

「ノアさん…、ちゃんと通院してくださいね。」

自然な笑顔の看護師、それを見て弱いと感じるノア。HP-1(残り48)

「はい!」

看護師は病院内に戻っていく。

ノアは振り返り、閉まった自動ドアに映る自分の頭を見る。

「おぉーHPが48になってる。またレベルアップしたっぽい。」

ドアの前で笑顔になるノア、内側でも看護師が振り返る。

「うふっ、ノアさんも嬉しそう。ちょっとは意識してくれたんだ!」


ノアはポケットにメモを押し込み歩き出だす。

病院の敷地を出て大通りを…。

「どこに行けばいいんだ?」

目の前を同じ方向に人が歩いて行く。

ノアは見知らぬ人達の背を追うように歩き出す。

杖をつきながらの一歩、周りの人は3歩も4歩も進んでしまう。

「なんか俺だけ取り残されてい行く感じなのは、気のせいだろうか!?」

「でも日射しが温かいからのんびりでいいよね。」

ゆっくりと進むと公園があり、中に入って長椅子を探す。

男性が一人座っている長椅子を見つける、周囲に他に椅子がない。

仕方なく男性と距離を置いて座る。

「ふぅー、疲れたぁ。」

となりの男性がゴクゴクと水を飲むのをジーっと見る。

男性が視線に気づき、少し外向きになり水を飲み続ける。

男性がもう一度こちらを見る。

「なんだ!?喉でも渇いているのか?」

ノアは頷くと、男性は横に置いていたリュックからペットボトルを出す。

「ほらよ。」

男性はペットボトルをこちらに投げてよこした。

「もらえるんですか?」

「そんなに欲しそうな顔されたら仕方ないだろ。」

「ありがとうございます。」

ノアは新品のペットボトルを開けて勢いよく飲む。

「うまぁーい、生き返るー。」

「へっ、へへっ、そうか旨いか!?どっから歩いてんだ?」

「向こうの大きな病院です。」

「…へ!?お前どんな距離歩いてんだ、3kmはあるぞ!体力あるなぁ、…俺にはかなわないだろうけどな。」

「体力には自信があるんですか!?」

「おうよ、今日も一人斬って来たからな。」

「一人斬るって…、どういう意味ですか?」

「かれこれ三年、俺は100人以上の女性を斬ってきた。」

「えっ!?」

「仕事で稼いだ大半を風俗に注ぎ込んでな!」

「つまり…?」

男性が少し小声になる。

「つまり…、男女のプレイだよ。」

「おぉー、それを100人も…。それは体力いるんでしょうね。」HP-1(残り49)

「わかるか!?すごいだろう!」

「俺は女性に弱くって、正直よくわかりませんが偉業ですね。」

「そうなんだよ、この偉業が理解できるやつは少ない。お前、もしかして、女性経験もないのか?」

「ないです!近づきたいとは思います。」

「しゃーねぇなぁ、今日は金ももう無いから今度いいところ教えてやるよ。」

「おぉー、ししょー、あなたを今日からししょーと読んでもいいですか?」

「俺もこの近くでは有名人だからな、弟子は他にもいるんだ。お前で二番目だよ。ところで名前は?」

「ノアって言います。」

「ノアか、俺は愛助(あいすけ)って言うんだ、よろしくな。」

二人はがっちり握手する。

「お前スマホ持ってたら友達登録してやるよ。」

「はい、ししょー、たしかポケットに入ったまま。」

ノアはスマホをだし、師匠に見せる。

「バッテリー残量12%って充電切れるぞ、このアプリを開いて…。」


ノアの思考

充電…も斬れるのか…、この人何でも斬るんだ。

すげぇ師匠に出会えたかも!?

これで俺ももっと女性に近づけるかな。


「お前友達一人かよ…晶…男か、俺も弟子の一人だけだし、お互いに二人目の登録だ。」

「おぉー。」

「そのうち弟子も紹介してやるよ。俺はもう行くから、また今度な。」

「はい、ししょー。」

ノアは師匠を見送り、自分も立ち上がる。

「松葉杖にペットボトルは持ちにくいな。」


ノアは公園をさっきと同じ方向に歩き出す。

ペットボトルが邪魔になり歩きにくい、時々立ち止まりペットボトルを持ちかえる。

ドン!後ろから何かにぶつかられよろめくが、何とかこけずに踏ん張る。

手からペットボトルが落ち、転げていく。

「ごめんなさい。」

スマホを片手に持った女性が立っていた。

「あっ、水が…。」

女性があわてて拾い上げる。

「すいません、スマホ見ていて、前を見ていませんでした。」

女性が深々と頭を下げる。

HP1回復(残り50)

つい頭をポンポンとする。主夫耐性発動

「前を見てないと、こんな目にあいますよ。」

「えっ、ながら歩きでなったんですか?」

「ながら歩き…!?今の人の流れにあわせてる歩き方のこと?」

女性が吹き出す。

「ぷっ、ながら歩きは他のことをしながら歩くことですよ。人の流れにあわせてるってどこに行くんですか?」

「どこに行くんでしょうか!?」

女性がまた吹き出す。

「ぷっ、その足で行き先決まってなくて歩いてたんですか?」

「ししょー程ではないけど体力はありますので。」

女性は変な顔をする。

「ん!?ししょー!?」

「ちょっと疲れては来てたんで、座れるところでもないかと思ってました。」

女性は周りを見渡すとオープンカフェが見えた。

「あそこに座れるところありますよ。あそこまで歩けますか?」

「はい!」

「ペットボトルは私が持ちますね。」

「ありがとうございます。」

ノアはオープンカフェの椅子に座る。

「何か飲みます?」

「俺は水でいいです。」

「うーん、じゃー私が飲み物頼むので、その間休憩してください。」

「はい。」

女性は飲み物を注文しに店内に入り、トレーに飲み物とクッキーを持って出てくる。

ノアは上半身を伸ばすとポケットからスマホが落ちる。

「あっ、拾いますよ。」

体を傾けて取ろうとしたノアの頭と女性の頭がぶつかる。

ゴン!

「いったーい。ごめんなさい、私ってそういうドジっちゃうんです。」

頭をおさえながら舌をだす。HP-1(残り49)

「動かないでください。取りますので。」

女性がスマホを取ってくれる。

充電が10%を切ったことの通知が出る。

「充電切れそうですよ。」

「あなたも斬るんですか?」HP-1(残り48)

「ん!?何か変わった方ですね…えーっと…お名前聞いてもいいですか?」

「ノアって言います。」

「ノアさんて…ほんわりしたっていうのか…不思議な感じがしますね。」

「…悪い意味じゃないですよ、…何か…特別って感じがします。」HP-1(残り47)

女性がコップに入って透き通ったオレンジの液体をストローで飲む。

「それは何ですか?」

「マンゴーフィズって書いてました。美味しいですよ。」

女性がコップを持ち、ストローの先をこっちに向ける。

ノアは自分の顔を指さし、女性の顔を見る。HP-1(残り46)

女性は頷き、さらにノアに近づける。

ノアはストローの先を見て、遠慮がちに口をつける。HP-40(残り6)

「美味しいよ。」

「下の方は濃いからね。」

「舌の方は恋…、これは恋の味?」HP-1(残り5)

「恋の味ではなくってマンゴーです。」

「ところで行き先決めてないってどういうこと?」

「病院を出て歩いてた。」

「もしかして無断で病院抜け出しちゃったってこと!?」

「入院は今朝までで家に帰るだけだったし、ここが知らないところだから歩いてた。」

「家の場所はわかるの?」

「家は…、一度見た道なら覚えるんだけど…、昨日は同じ部屋がならんでて帰れなかったけど…。」

ほっぺたに指をつけ首を傾ける。HP-1(残り4)

「迷子ってことかな!?」

「たぶんそうです。」

「住所はわかるんだよね!?タクシー乗ったら家まで行ってくれるよ。」

「タクシー…乗ったことない。お金ももうないから歩く!」

「あっ、お金なくて水だったんだ。」

「住所教えてくれたらスマホで道案内もできるよ。スマホ貸して。」

ノアはスマホをだす、女性が椅子をノアの横に寄せてくる。

スマホ画面を並んで見る。距離が近い。HP-1(残り3)

「このアプリに住所を入力するんだけど、住所言える?」

「〇〇町〇〇32-1」

「私の家の近くじゃない!私も帰るところだったし一緒に帰ろう。」HP-1(残り2)

「はい!一緒に帰ろうー!」誤爆HP-1(残り1)

「病院からって6km向こうの総合病院!?家まで後2km程だけど歩ける?」

「体力はあるので、大丈夫!」

「このクッキー食べてて、ちょっと待ってて…。」

女性は店内に入り姿が見えなくなる。

「やったーっ、一緒に帰る。」誤爆HP-1(残り0)

……プツン。


HP1回復(残り1)

目が覚めると向かいに女性が移動していた。

「目が覚めた?呼んでも全然起きないから覚めるの待ってたよ。」

「ありがとう。」

「疲れているならタクシー呼ぼっか、お金はだすから。」

「はい、お任せします。」

女性がタクシーを呼び、すぐにタクシーがくる。

女性が先にのり、松葉杖を入れてくれる。

ノアはその後で乗り込む。

「運転手さん〇〇町〇〇32まで行ってください。」

「はい、32ですね。」

「俺の住所と一緒何ですね!」

「ん!?近くだよ。」

車がゆっくり走りだし、ノアは外をジーっと見ている。

「あっ、ここはこないだスマホ買った、あの銀行もこないだ行った。」

すぐに家の前に着き扉が開く。

降りて杖をもらいアパートの入口に立つ。

「帰ってきたー。」

女性が支払いを済ませて降りてくる。

「なんだ、となりのアパートじゃない。」

「ノアさん、友達登録しようよ。」

「はい、でもやり方わからないのでお願いします。」

ノアはスマホを出し、女性に渡す。

「ありゃ!?電源つかなくなった。充電しないと無理だわ。」

「充電…?したことない。」

「ええー?充電わかってないの?」

「言葉で説明の方が難しいからついていくよ。」

「はい、こっちです。」

ノアは自分の部屋に入る。

「ここです、どうぞ。」

「へぇー、何もないじゃん。」

ノアはスマホを買った時の袋を出す。

「こっちを壁にさして、こっちをお尻にさせばOK。」HP-1(残り0)

……プツン。ノアはベッドに倒れ込む。


「ノアさん、ノアさん、なんて爆睡なんだろう、女を家に連れ込んでるのに寝るか!?でもだいぶ疲れてたんだろうね。」

「友達登録もできないし、また今度くるよ。」

「メモぐらい…。女を家に連れ込んで手も触らないで寝るな!っとこれでいいかな。鍵は閉めてポストから落としておくね。」

女性は部屋を出て、鍵を閉め、ポストから落とす。


HP1回復(残り1)

ノアは目を覚ましてメモを見る。

女を家に連れ込んで…。HP-1(残り0)

……プツン。


……超勘違い出来ず。


……超妄想出来ず。


……救いの手(握手!?触れず!?)

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