うつる話 四
いいえ。
そうじゃありません。
毒殺だと言われたところで、そんなことはしていないのですから、調べたって当然証拠なんて出てきませんでしょう。
問題は、呪いだって言う人が出てきたことなんです。
もちろん、そんなことを証明できる人なんていません。
だけど、人の目があるでしょう。
あの人は人を呪い殺したんだって、そんなことになれば、体面も何もあったものではありませんよ。
女性には、その男に呪いをかけたっていう事実があるわけでしょう。
事実があるからにはばれるかも知れないと、そう思ったんでしょうか。
もしかしたら、もうとっくにばれているのではないか、と、そう思ったのかも知れません。
怖いですね。
怖いですよ。
そのときはまだ、狭い範囲でしか噂されていなかったそうなのですが、いつ、誰が広めるかわからない。
誰と言わずとも、噂なんてすぐに広がってしまうものです。
広まればそれこそ、彼女は終わりですよ。
どんな嫌がらせを受けるか、分かったものではない。
それとも、誰も近寄らなくなりますかね。
まあ、どちらにしろ地獄ですよ。
ですからね、その女性は、呪いだと言っている人たちの一人ひとりを脅しに行った。
この話を広めたら、呪い殺すぞ、と。
はい、逆効果ですよね。
これでは、呪い殺したんですと言っているようなもの。
その女性は、噂が広まることが、相当怖かったのでしょう。
それで、彼女に脅された人たちはね……。
そうそう、呪い殺したんだっていう人たちの中には、二通りの人間がいたわけです。
ひとつは、彼女が本当に呪い殺したんだと……つまり、呪いが実在するかも知れないと思っている人たち。
まあ、これはごく少数ですよね。
その人たちは震え上がったわけです。
だって、実際に人を呪い殺した人間に、呪い殺すぞと言われたのですからね。
そりゃあ、口が裂けても口外できませんよ。
もう一方は、呪いなんてないと思っている人たち。
噂するのが面白くて、思ってもいないのに呪いだ呪いだと言っている。
そりゃあ、大半がこっちでしょうよ。
私やあなたが当事者――と言うんですかね、まあ、当事者なら、きっとこっち側の人間です。
でね、そういう人たちは、呪い殺すぞなんて脅されると、余計に面白くなってしまったわけです。
ありもしない呪いっていう武器を振り回しているんですから、それは滑稽ですよ。
だから、と言いますか。
本当は広めるつもりなんてさらさらなかったのだとしても、言いたくてしょうがなくなった。
それでね、結局その人たちは、脅されたことも含め、呪いのことを触れ回った。




