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五十歩百歩

「えーと、他の質問が無い訳じゃないと思うけど今は思い浮かばないからこれでお開きかな?」

「まぁ今日以外でも質問は受け付けるからいいだろ。けど聞くときは周囲に気を付けてくれ」

「りょーかい。あ、一個だけ質問あった」

「なんだ?」

「質問てゆーか疑問?なんで副リーダーにも内緒なの?二人は副リーダーのことも信用してるし信頼もしてる。なにより大好きじゃん!だから巻き込むなら副リーダーもだと思ったんだけど。副リーダーには言うなって言うし。なんでかなーって」


 そう疑問を口にするリーダーに二人は顔を見合わせて目で何やら会話をしてからカレンが口を開いた。


「リーダーは副さんが何か知ってる?」

「何かって、種族とか立場とかそういう物?」

「うん」

「よくは知らないけど、多分神かそれに連なる系譜と悪魔の系統とかの正反対の血を引いてると思う。人間の匂いも有るから半分は人間だと思うけど。それが?」


 キョトンとして聞いて来るリーダーにため息をついてから紅は呆れを盛大に込めた目を向けた。


「それがじゃねーわ。そこまで分かってて分からねぇとか鈍いにも程が有るんだよ」

「え!?ごめん、なんか良く分かんないけどごめんなさい!!」


 盛大な呆れとプラスして吹雪の様な冷たさも込められた視線に慌てて謝るもクエスチョンマークを大量に浮かべるリーダーに盛大にため息をついてからしかたくな説明を始めた。


「まずリーダーが言ってるように副さんは聖と魔両方の属性を持ってるのは確かだ」

「うん」

「人間が基本であることも事実よ」

「うん」

「けどそれは本来はあり得ないことだ」

「え?なんで?」

「聖と魔は本来一つの器に共存しないからよ」

「あ」


 そう二人に指摘されはたと思い当たる。正反対の性質を混ぜ合わせることは本来出来ないのだと。

 水と油など生ぬるい程に相性の悪い聖と魔を併せ持つ人間など本来生まれることはあり得ない。その在り得ないが在り得ているのが副リーダーだ。


「その様子だとおかしい事には気付いたみたいだな」

「うん。何で今まで気付かなかったのか疑問なんだけど。むしろ最初に会った時は確かにおかしいって思ってたのにいつの間に意識に上がらないとかどういうことなの?」


 思い返してみれば初対面の時に聖と魔を持ち合わせた人間であると気付いたしそれが本来ありえない事である事も知っていた為ひどく驚いた。故に注意と気を配らねばならないと思ったはずだ。それなのに二度目以降はその特異性を意識することはなくなっていた。

 勿論副リーダー本人に早い段階から惚れたからと言うのもあるが、聖魔の共存体と言う厄介ごとの種を丸っと忘れるというのはちょっとあり得ない。


「多分副さんの血縁者が認識阻害を掛けたのよ。気付かれなければ存在しないのと同じだもの」

「何で認識阻害なんてかけたんだろ?守るため?」

「さぁ?汚点だから見たくないって線もあるぜ?いずれにしろ特異な存在として認識されてないからこそ、副さんは見目麗しい天才として認識されてるし、認識阻害のおかげで副さんの最大の秘密が守られてるわけだ」

「最大の秘密?」

「副さんは完全体よ」

「!!」

「多分って但し書きが付くけどな」


 紅とカレンの言葉にリーダーは特徴のない顔いっぱいに驚愕を張り付けて目を見張った。

 『完全体』それは身体のすべてが完全左右対称の人間を指す言葉だ。

 本来人間は完全左右対称になる事は殆どなく数千、数万人に一人居るか居ないかの確立だ。それだけでも変態コレクターには価値があるが完全体達の不運な所は居るだけで奇跡であるという事だ。その奇跡の一部を取り込めば力が増すとまで言われ事実その効果がある。

 副リーダーはその完全体であり更に聖と魔が共存しているせいで通常とは力の桁が違う。


「桁が違うって?」

「副さんは血筋のせいで聖と魔の良いとこ取りが出来るってこと」

「良いとこ取りって、まさか」

「聖の再生と魔の破壊を持ってる。つまり副さんは自分の体の一部を使えば相手を生かすも殺すも自由自在なんだ。そんでその特性は始まりと終わりの権限に通じ、そのまま『∞』にも通じてんだよ。その『∞』の概念を持つ副さんを食べ続ければいつかオレだって超えられる可能性が有るんだぜ?そんな存在が有象無象にバレたらどうなると思う?」

「端からブッコロスね!」

「そゆこと」


 ひょいっと肩を竦ませて紅は話を閉じた。つまり、副リーダーを世界を存続させる側に引き込むとその性質がバレる。そうすると副リーダーの身が危険にさらされるので巻き込みたくない。っという訳だ。


「そんなわけで副さんには内緒なの。勿論意地になって隠して変な事に成るのはダメだからバラした方が良いと思ったらバラしてくれていいわ。ただし副さん自身に危険性をちゃんと説明するのも忘れずにね」

「魔法契約書にもそう追加記載してあるからちゃんと見極めろよ」

「積極的には言わないけど言うべき時には言えって事だね。りょーかい」


 疑問の解消も出来たし好きなヒトの知っておいた方が良い注意事項も知れたので満足だ。


「じゃ取り敢えず今日の所はこれでOK?」

「うん!オーケー!にしても二人とも副リーダーの事良く分かったね。僕は見事に騙されちゃったしこのまま気付かなかったらヤバかったかも。感謝だよ」

「「・・・」」

「?どしたの二人とも?黙り込んじゃって」


 からりと笑って感謝感謝と告げるリーダーに紅とカレンは黙って顔を見合わせる。そんな二人に気付いて声を掛けるリーダーに二人は言い辛そうに口を開いた。


「いやぁそのぉ」

「気付いたって言うか」

「???」

「ぶっちゃけ俺がオレとして自覚するまで気付かなかったんだよなぁ」

「え」

「彼が気付いたから私も自動的に分かったのよね」

「つまり?」

「「俺(私)もさっき気付いたの」」

「マジか」

「マジマジ、気付いてからオレの膨大な知識の中から必要事項をピックアップしてこの仮説を組み立てたんだよ」


 統一者としての知識や経験は膨大な数になる。それを統一者本人とその契約者として転化時にちょっと色々魔改造されたカレン二人の演算によりリーダーと副リーダーを纏めていっぺんにこっち側に引き入れられないかなぁ。なんて考えてたらまさかの副リーダーに問題あり。慌てて副リーダーに関わりそうな知識を引っ張り出してまとめ上げたら御覧の通りな訳でして、万屋って問題児しかいないんじゃないだろうか?


「その問題児の筆頭が自分たちだって自覚有る?二人とも」

「え?筆頭はリーダーでしょ?」

「そうだぞリーダー、俺らはまだ可愛い方だ。一番の苦労人は副さんだぞ」

「そうだけど、そうなんだけど!!君らに問題児呼ばわりはなんか腹立つなぁ!てか今さっき自分たちで副リーダーも問題児だって言ったくせになんつう手のひら返し!!」


 もう本当にこの子たちは!!!っと憤っているリーダーには悪いが万屋パーティーの筆頭問題児はリーダーであることは揺るがない。

 確かに紅達の持ち込み案件もあるが、それは大概自分たちでどうにか出来ることであったり事後報告で足りたりするのでそこまで大きな問題ではない。しかしリーダーの場合は問題を持ち込む比率も高ければ他人が持ち込んだ問題を更に面倒な案件に発展させる事もしばしばだし、リーダー目掛けて面倒事が飛び込んでくることもよくある事だ。

 そうなれば問題解決はパーティー全体で当たるので結局万屋パーティーの一番の問題児はリーダーと言う事になる。

 もっとも万屋のメンバーは大なり小なり問題ごとを引っ張ってくるので全員が全員五十歩百歩なのだがそこは言わない約束である。

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