質問!
「はぁぁぁああああああ!?」
「リーダーうるさい」
「ごめん!でも叫ぶぐらいさせてよ!」
リーダーの絶叫に耳を塞ぎながら顔をしかめて抗議してくる紅に慌てて謝りながらも、顔にデカデカと不満!書いたままリーダーは捲し立てた。
「なんで?叫ぶ要素ないだろ」
「ありまくりだわアホ!!なんだ100年後って!統一者なら100年だろうが200年だろうがそれこそ1000年後だろうが生きてんだろ?なんで任されなきゃなんねぇんだよ」
「リーダー今日は口調がブレブレね。情緒不安定?」
「紅君のせいでね!!カレンちゃんからも言ってやってよ。職務怠慢だ!って」
「職務怠慢なの?」
「それ以外の何だって言うのさ。自分で作って今まで運営してきたのに100年後には任せるって納得がいかないもん。せめてきちんとした説明が欲しいね」
叫んで喚いて取りあえずの不満を口にして多少の落ち着きを取り戻したのかブレブレだったリーダーの口調は落ち着き初め、事の詳細説明を求めようと真面目な顔で紅に向き合う。
「リーダーの真面目な顔とか珍しいもん見たわー」
「鼓膜ぶち抜くぞテメェ」
そんなリーダーを紅はまぜっかえしてまたもや声を荒げる事態になってはいるが、言葉とは裏腹に存外真剣な表情で紅はリーダーを見返して口を開き直した。
「めんごめんご一応説明はするからあんま怒んなよ。けどそれにリーダーが納得するかどうかは知らないし、納得してもしなくても引き継いでもらうからそのつもりでな」
「押しつけかよ。もー紅君てそういうとこあるよね。良いよ拒否権ないなら。そのかしこっちの質問には洗いざらい答えてもらうよ?押し付けられる側の特権!」
「おう。リーダーの理解が速くて助かるわ。それでこそカミングアウトの甲斐があったってもんだよ」
「最初っから押し付ける気満々だった!?」
ショック!!と大げさに顔に出すリーダーはもう既にいつも通りだ。その順応能力に感嘆しつつもそれをおくびにも出さずに紅は話を進める。
「じゃ何から聞きたい?あらかたなんでも答えるよ。ただし言いたくない事、言えない事には黙秘権は使うけど」
「OK。質問数に限度は?」
「特になし、いくらでも答えるし引継ぎに関する質問も後日に必要に応じて受け着ける。ただし引継ぎは勿論俺やカレンが当事者だって事は口外しない事、もししたら」
「したら?」
「副さんとリーダーの良縁をチョッキンします。因みに縁切りも結も私は大得意だから任せてね!」
「絶っっっっっっっっっっっっっ対に口外しません!!!!!!」
いっそ無邪気なまでの笑顔でそう宣言したカレンにリーダーは光の速さで誓いと宣言、魔法契約書に血判まで押して差し出した。
本来であれば特殊な紙に特殊なインクで特殊な陣を用いてややこしい手順で魔法を付与することによって出来上がる魔法契約用紙を一瞬の内にその辺にあった紙ナプキンに魔法を付与して作り、文言を書き連ねて血判を押すまで行うあたりリーダーも相当な実力である事が知れる。見るヒトが見れば血涙を流さんばかりの才能の無駄遣いではあるが、本人は本気も本気、本気と書いてマジと読むっと言わんばかりの形相だ。そしてこの場にはそれを非難するような頭の固いヒトは居ない訳でして、要するに万屋本舗のテーブルに備え付けてある何処にでもある紙ナプキンで作られたとは思えない超強力な魔法契約書はそのまま契約相手である紅のサインをもって成り立った。
そうして準備を整えてから質疑応答が始まる。
「じゃまずは何で100年後に引き継ぐの?」
「それは簡単、その頃には『如月紅』ていう人間が死んでるから。元はどうであれ今の俺の器は純度100%の人間だ。100年後には確実に寿命が尽きてるし知り合いの人間も天寿を全うしているからだ」
「でも今の世界では人間から別の種に転化するやつは少なからずいるだろうし死者としてこの世に残る奴もいる。それどころか冥界は行き来出来ない世界じゃない。100年たったからって縁はなくならないだろ?」
難しくはあるが冥界、死者達の逝くべき場所に生者達は入る事が出来る。勿論そうやすやすと出来ることではないし下手をすればそのまま死者の仲間入りっという事態になりかねないが、事実として昔々の神話で語られた冥界下りは可能だ。それを考慮すれば全ての人間と縁が切れるとは言い辛い。
「確かに縁はなくならない。しかし死者としてこの世に残る人間はあまり多くないし他種族に転化した人間との縁は変化する。そうなれば俺をこの世界に縛る縁は激減して他世界に移動しやすくなるだろ?それに人間『如月紅』の寿命が尽きればこの世界そのものとの縁が切れる」
生きている世界と死後の世界は繋がってはいるものの同じ場所に存在してはいない。故に魂は天寿を全うすると魂の馴染む冥界に下る。この際、界を移動する事に成るので今まで生きていた世界とは縁が切れるのが通例だ。死者としてとどまっている者は冥界と縁が繋がったまま生きていた世界の縁を手放さずに握りしめている者達だ。新たに繋がった世界に引き寄せる力に逆らってこの世に残り続けるのでたいへん疲れるらしい。それでも残りたいから残る。それが死者達だ。
「この縁の性質を利用して死の直後に生者として切れた縁が死者として結び直される前に俺が本来のカタチに戻れば人間如月紅はそのまま何処にも属さない『オレ』に戻る」
「どこにも属さない?」
「おう、今俺がこの世界にとどまってるの『如月紅』って人間が持ってる縁があるからだ。そこから戻っちまえばこの世界にオレを縛るものは無い。縛られてなけりゃぁ何処にも行き放題で」
「何処にも留まれない。か」
「そゆこと」
リーダの言葉に肩を竦めて頷く紅には特に何の感慨もない。つまり最初っから分かっていた事なのだ。
如月紅の死後、統一者はこの世界に留まる術を失う。勿論一時的に留まる事は出来るだろうが永住は出来ない。そこに居続けられないモノに管理が出来る訳がない。
「だからこの世界に留まり続けて尚且つ生き続ける僕に引き継げって事?」
「プラスで心底信頼できるヒトね。私たちはリーダーを信じてるもの。その生まれを鑑みれば余計にね」
「二人にそう言われると照れるわ~。確かに我の出身世界のようにはしないだろうね。いまのまま、無法地帯のようで秩序のある状態を維持するだろうね」
「リーダーならそうするだろうな。ただし殺しも争いも封じられた生命は体ではなく心を殺しに掛かる。そこだけは気を付けろよ」
「オッケー。じゃ次の質問ね」




