取り敢えず美味い
遅れましたorz。
閑散としてはいてもさすがは人気店、そこそこのヒトが居る中で行われたカレンの恋愛話は誰憚る事なく聞かれ万屋の魔王が意中の相手を射止めた。という話は瞬く間に広まった。
最初に聞いた者はそれを嘘だと断じるものが大半であった。なんせ紅とカレンの仲がいつまでたっても展開しないのは世界統一からの話だ。あまりのイチャつきっぷりに遂に付き合ったと噂が流れることはあるが、それを真に受けて恋人かと聞いたり揶揄った者は大体噂通りにならない現状にイラっとしていた。或いは進まない仲を気にしている紅に射殺さんばかりに睨まれたり不運の連続に合ったりするので今では誰も聞かない。
そのため今回の話も最初は皆どこかの誰かが流したデマだと思われていた。
しかし、
「カレンちゃんと紅君が結婚前提のお付き合いを始めたことを祝してパーティーやるよーーー!!!!」
万屋本舗の扉をバーン!!!っと勢い良く開くと同時に響いた万屋リーダーの言葉とその言葉を受けて集まった視線にドヤ顔とサムズアップを決め込んだ紅によってそれは事実であると証明されたのであった。
噂が事実であるとその場にいる者たちが理解した途端の阿鼻叫喚と言ったらなかった。二人の仲にやきもきしていた者達は祝福し、くっ付かないなら口説いたりちょっかいかけても良いかなぁっと思っていた輩からは悲鳴が、二人の無自覚のいちゃつきや嫉妬に振り回されていた者達からは取りあえず雄叫びが上がった。曰く収まるところに収まってくれて喜ばしいが今までの事を思うと呪いたくなるらしい。さもありなん。
兎にも角にも様々な声が上がってカオスになった食堂万屋本舗はそのまま『おめでとう+αの会』の垂れ幕が素早く掲げられての騒ぎとなった。
人気店での騒ぎは瞬く間に町中に広まり至る所で飛び火し、いつの間にやら屋台が出来たり店舗の前で出店を出したりと祭りの様なよく分からない騒ぎになったが警察が飛び出すほどではない。
まあ要するに楽しければそれでいい主義のヒト達が騒ぎ商売根性逞しいヒト達が便乗しただけの話だ。
騒ぎの中で紅とカレンが正式にお付き合いした噂は本当である。と言う話も流れはしたがこれまた噂は噂っと流された。まぁしかし万屋本舗には一応おめでとう垂れ幕があるので分かる・・・『おめでとう+α』垂れ幕って良く分からないね?
まぁいつもよりイチャイチャしてる二人を実際に見れば噂は本当だと皆が皆察した。
「あいつらいつもより酷いな」
「いつもイチャイチャしてたじゃん!何で更にくっ付けんの?!」
「俺はあそこまで引っ付いてんの初めて見たわ」
「なんつーか今までのは少しは遠慮してたんだなぁって分かった」
「「「それな!」」」
実際に件の二人は誰憚ることなくイチャついている。隣に座るのは以前から当たり前だったが以前はあった拳一つ分有るか無いかの距離は無く、腕同士が引っ付くどころでなく紅の腕はカレンの腰に回り抱き寄せカレンは紅に身を預けている。
その引っ付いた状態のまま重力操作や気流操作で料理や飲み物を取り寄せ互いに食べさせ合い。所謂あーんを平然とやったり相手の口元を指で拭ってはその指を自分でペロリと舐めるか相手に舐められるかしてたり、べったりとくっ付いているにも拘らずさらに顔を寄せてひそひそと話し合ったりと、とにかく今までの比にならない位にくっ付いている。
二人は万屋本舗の店内にてボックス席の一つで紅はそれはそれはだらしなく幸せそうな顔でカレンを抱きしめ、カレンは口元に笑みを湛えていつも通りに対応しつつも雰囲気だけはふわふわと幸せそうだ。
そんな幸せいっぱいに桃色の空気を醸し出す二人に近づく者は誰ひとりもいない。事もなく、二人の目の前には此方は本当にいつも通りによく分からない雰囲気の万屋リーダーがごくごく普通に座って二人と対話していた。
「いやー収まるところに収まってくれてよかったよー。周りからあの二人どうにかしろって苦情が来てたからさーこれで安心だねー」
「ありがとうございますリーダー。そんな苦情来てました?」
「うん。渡し屋ギルドと冒険者ギルド、魔導士ギルドに錬金ギルド、商業ギルドと鍛冶ギルドのギルマスたちと常破学園と薔薇学園の学長と引取り屋なんかもたまに」
内容はありふれた世間話に混ぜてなどの小細工なく、ぶっちゃけ周りがうるさかったからこれで静かになるよやったね!的な話だ。今まで苦情元を指折り数えるリーダーにその場にいる全員は思った。勇者が居るっと。
「色んなところから来てたんだな。でも引取り屋とか商業ギルドとかそんな行かないじゃんなんで?」
「目の前でいちゃつかれながら値切り去れると腹立つだって」
「別にいちゃ付いてないですよ?普通に値切ってるだけだしそりゃぁどう値切るか相談しながらだから少し近かったかもしれないけど」
「んー?俺も良く分からん!カレンちゃんも紅君もどこでもいつも同じスタンスだもんな!」
「おう」
「はい」
「うんうん、仲良き事美しきかなってな!違うか?ま、いいや。どこでもいつでも二人の雰囲気は変わんなかったし、今はいつもより近くに居てめっちゃ幸せそうって事だけ分かればOKだな!」
うんうんっと一人納得してそう締めくくるリーダーは通常運転だ。他の誰もがそれでいいのか突っ込みを入れたいが入れた所でキョトリと首を傾げて当人たちが幸せなんだから良いじゃないと言い放つだけである。
リーダーのそういう大雑把で豪快で小さなことを気にしない所が良い所ではあるのだ。他で才能は有るが変人だと厄介者扱いされていた人材を危険思考が無いなら無問題!!と言い放ち一癖も二癖もあるが芸達者な者や天災、天才、奇才、秀才と変人奇人を受け入れる。
リーダーの目利きは実に正確で根っからの悪人などは弾き、身内を大切に出来る者ばかり引き込むので信頼している。そう言った意味において信頼も信用もしているので不満はない。不満は無いのだが、
「あの二人の真ん前に陣取って平然と飯が食える当りリーダーってぶっ壊れてると思う」
「同意、あの二人の巻き起こす騒動を『元気が良い!』の一言で終わらせるのは豪胆じゃすまないって」
「かといって鈍い訳ではないんだよね。ちゃんと二人の仲を分かってて突いたり突かなかったり、で、自分だけ被害こうむってないし」
「概ね同意だけど一つ転成、副リーダーの回収は必ずするから自分と副リーダーだけは被害を被らない」
「「「わかるー」」」
不満はないがやはりちょっと思う所がなきにしもあらず。いいヒトだしいざと言うとき頼りになるし、ヒトを見る目も大局を見る目も物事の捉え方も大したものだし実は知識量も相当で実力もある。噂では魔王や勇者といい勝負が出来るとまで言われているが実際の所は謎、それでも数少ないS級なだけあって相当強い。
そんなリーダーなのであの桃色の二人の目の前で平然としていても可笑しくは無いのだが、なぜか理不尽な思いが込み喘げてくるのは何故?
そう想いはしつつもそんな事はいつもの事なのでそっと桃色ではあるがカオスな雰囲気を漂わせる一角から目を逸らしてお客さんの大量入店でテンションMAXになって張り切っているハナさんお手製の料理に舌鼓を打つ作業に戻るのだった。うん、美味い。




