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またも流れた

「それで?」

「ん?」

「理由じゃよそもそも何故如月からの好意を受け取らぬ?求婚は如月の年齢故にと言っておったが何もすぐ籍を入れる必要はないはずじゃ、法的に婚約を結ぶのも良いしそも恋人となっても良い。なのにおんしは10年間如月と昔馴染みの家族の様なものとして過ごしとるのは何故じゃ?」


 ずびずびと鼻をすすりながらもようやく落ち着いたエーデルワイドはようやっと話を元に戻し、ついでにかねてからの疑問を問う。

 何故、家族のような他人で居続けるのか?っと。

  エーデルワイドのこの質問には他の三人も同意見なのか何も言わずにカレンへと視線を向ける。

 その視線に流石に話を逸らし続けるのは難しいと観念したのかカレンはため息を一つ付いて口を開く。


「回答を拒絶する!!」

「「「「この流れで?!」」」」


 開きはしたし話は流されなかったが、真っ向から断固拒否された。


「この流れってなにさ、何も流れてないよ?そもそもいう必要性も感じないし、私はその質問に答える義務が無い!」

「其の通りではあるが!我の胃の為に!話してほしいんじゃが!?」

「アンさんは胃に穴が開いても即座に再生するでしょ?されに紅に殺気向けられても実際には殺されないんだから大丈夫よ」

「殺気向けられとるの知っとったんかい!!!向けさせない努力をしてくれんか?!」

「その努力をするとアンさんと研究できなくなるから却下。或いは紅も含めて研究しても良いけど近くても遠くても態度は変わらないと思うよ?だったら遠くにいる方が避けやすいんじゃない?」

「避けるってあれか?飛んでくる魔法か?呪いか?斬撃か?そもそも飛ばせんじゃろ」

「いエ、攻撃を飛ばス事は可能デす」

「そうね。攻撃は飛ばないのではなくて飛ばした攻撃が目の前では立ち消えるのよ」

「でもぉそこに込められた殺気とかはぁそのままだからぁむっちゃ怖いのぉ」

「な、なんと恐ろしい。やはり殺気を向けられぬ様に立ち回るべきだ!カレン!如月の手綱を握っておくれ!!」

「えー」

「「「「えーではなくて!!!」」」」


 不満そうに答えるカレンにエーデルワイド達は必死にとりなす。此処でカレンに頷かせれば少しは如月紅という名の鬼の様な悪魔の様な魔王の様な男からの被害が減るのだからそれはもう必死だ。


 確かに如月紅という人物に敵意は無い。もし有れば彼の天災は意図的な事故を起こして邪魔者を排除する事をやってのける奴だ。そのポテンシャルを秘めている。というか多分既に出来るだけの能力は備わっている。しかし現実として起こっていないという事はそれを行っていないという事で敵意が無い証拠なのだ。

 しかしそれで嫉妬しないかどうかは別物というもので、自分以外が想い人の側にいる状況に紅は大なり小なり嫉妬する。相手に対して態度が悪くなったり、カレン相手に拗ねたりなどの可愛げの有るモノから殺気や呪いを相手に送り付ける様な物騒なものまで様々だ。しかしそれは実を結ぶ事無く相手に悪寒を覚えさせるだけにとどまっている。

 意識してか無意識かは置いておいて一大事になったことは無い。故に殺意は有れど敵意は無いっという何とも言えない状況なのだ。

 この状態を指してカレンは死なないんだから良いんじゃない?っと言っており、問題視していない。が、カレン以外は死ななくても胃が痛いし物騒だから止めてくれっと懇願している状態だ。

 というかカレンが紅の感情というか暴走を知っていながら放置していたことが今発覚したので早急に手綱を握らせたい。


「自覚があったのなら!早急に!!対処せよ!!!」

「嫉妬心自体は否定しませンが何事も限度があルと認識してイます」

「そうだよぉ如月男女問わずだし私はアリス一筋なの知ってるのに呪われかけたんだよぉ?見境ないぃ」

「そうよ!アイツ老若男女問わず嫉妬するのよ?!うちの子たちも何人泣いた事か!!」

「いやあれは自業自得だろ。カレンの着物の裾を捲ったり下から覗こうとしたんだから天誅は必須だ」

「どっちかって言うと人誅だったような気がするんだけど?!ってアレ?」


 今まで話していた声とは違う、けれど聞き覚えのある声にそう返したアリスは直後にふと思う。この声がここで聞こえるのはおかしくないか?っと、そう思ったのはアリスだけではないらしくそのほかの人物たちも一様に動きを止め声の出どころに目線を向ける。それと同時に口を開いたのは唯一そちらに元々顔を向けていたカレンだった。


「あら、紅お帰り」

「ただいまカレン。ティータイム?」

「ええそうね。お昼からずっと話し込んじゃってたわね。あなたが帰って来たって事は三時ごろかしら?」

「おう。今日は実技が終わったら即解散だったからな、朝から動きっぱなしで腹減ったわ」

「そうなの?なら何か食べて行くのも良いんじゃない?丁度お茶の時間だし重めのおやつでもしたらいいと思うわ」

「そうだな。折角だからそうするか、カレンはどうする?」

「私もう少し交流を深めようかと思ってるの。だからちゃんと別の席でお茶してね?狂ちゃんや姫鬼さん、ライさんと一緒でしょ?」

「・・・ああ、珍しく宿題が出たからな終わらせようと思って」

「あら良いじゃない。回りに迷惑掛からない程度に頑張ってね」

「そうするよ。一緒に帰りたいから帰る時に声かけて」

「ええ、分かったわ」


 にこりと笑って了承したカレンに軽く手を振った紅は彼女たちの席を離れ二つほど離れたボックス席に陣取っていた友人たちの元へと向かった。その時此方に一瞥と鋭い殺気を一瞬放っていく辺りはいつもの事だ。

 会話に一瞬沈黙が挟まったのはアレか?カレンとお茶できないからか?自分も連れいるんだから自重せよ。というかいつも一緒に居るんだから別によくない?と思うが口には出さない。誰だって命は惜しい。


「な、なんというタイミングで現れるのだあやつは」

「機能停止するかト思いまシた」

「今殺気向けられた?」

「呪いじゃないだけマシかなぁ」


 ほっと安堵の息を吐いたエーデルワイド達は揃って動揺などチラリとも見せずに当たり前の様に話していたカレンに目を向けた。


「本人に聞かれながら心情を露とするって相当な羞恥プレイだと思わない?」

「「「「すみません」」」」


 そうにっこりと笑って言い放ったカレンに返す言葉が無いのか四人は一斉に謝罪を口にする。

 好意を寄せる本人がそこに居る状態で恋バナをしていたと、そんな状況自分であったら羞恥心で死ねる思いだったので謝罪以外の言葉が出てこなかった。

 そりゃぁ誰だって本人を目の前に好意を表すのは少なからず羞恥を感じる。例え感情が未熟なカガリにだってそれは理解できるのだ。それが恋愛がらみとなるとその思いは一入だろう。


「しかし如月はいったいいつから居たのかのう?我それなりに手練れだったはずなんじゃが全然気づかなんだ」

「私も~まぁ私は戦闘員じゃないからしょうがないねぇ。アリスちゃんは?」

「薔薇の方が気付かないのに私が気付く訳ないわ。純然たる実力差がおありだもの」

「そう下卑するものでは無かろう。二百にも満たない年でそれだけの実力であれば十分実力者であろう?」

「そうかしら?」


 やれやれとでも言いたげに首を緩く振ってため息をついたエーデルワイドにアリスはキョトリと首を傾げて返した。アリス本人からしたら薔薇の創設者であるエーデルワイドとの実力差は本当に歴然とし過ぎている。

 だって姿が見えないというもう断崖絶壁の上と下ぐらいに違い過ぎてどう違うのか分からない相手だ。普通実力が上のモノ相手には恐怖や苦手意識などを感じる物なのだが、此処までくるとソレすら感じない。

 だからこその言葉であったのだがどうも周囲の認識はそうでは無いらしい。


「そうだよぉ。不死属性がある種族はそれに胡坐をかいて鍛錬を怠る個体が多いんだよぉ?それにアリスは戦闘能力が無い個体でしょ?それなのに二百年未満で今の実力はすごい事だよ」

「そうなの?」

「うん」

「アリスさんハC級でしたカ?」

「ええ、そうよ如月とは同じ階級だけど差は歴然ね。アイツ年齢制限のせいで上に上がれないだけで実力からしたらB級相当ですもの。攻撃魔力を持たない私では歯が立たないわ」


 そう言い放ったアリスに嘆きの色は無く純然たる事実を述べているだけだ。

 吸血鬼には生まれ持った魔力の方向性がある。それは大きく分けると攻撃特化とその他の二つだ。

 攻撃特化でも短距離、中距離、遠距離と別れるがその他は更に多岐にわたる。諜報に優れる者、治療に秀でた者、物を作る者と様々であるが共通するのが攻撃に向かない魔力であるっという事だ。

 アリスは後者で癒すことを得意とする者なので本来であれば戦闘力などない。本来であれば。


 彼女の凄い所は魔力特性を生かすために学んだ医療知識を駆使して自身の強化に努めたことだ。

 まず自身の体をどう動かせば効率的に動けるのか調べた。次に様々な武術を調べに調べてありとあらゆる武術の中から自分の体に合う動きをピックアップして最適化した。

 さらに自分は不死で癒すことが出来るのだから多少の無茶は可能っと認識していた彼女は魔道具を使って筋肉組織の破壊と自身の魔力による癒しを交互におこなうといった強制的な超回復によって筋肉を付けるという方法で必要な筋肉を必要な場所に必要な分だけ付けた。

 そこまで来たら後は実際に動かしまくって体にその動きを叩き込むだけである。

 それを毎日行って付けた実力は大したもので人型かつ近距離ならB級相手でも勝てたりする。


「紅の場合は年齢プラス性格ね。攻撃的な部分があるので直しましょうってよく言われてるよ。まあB級になるとお偉い人の依頼とか貰う事が有るから体制だけでも取り繕えって話し、A級よりは緩いけど一応ね」

「カレン様はお受けニなった事あるんでスか?」

「あるよー。カガリさんを迎えに行ったときがソレにあたるかな?フォールド氏はそこそこのお偉い人の卵って認識だったから」

「ハイ!パパは出世しましたヨ!今では故郷ノ代表です!」

「「「「知ってる」」」」

「(´・ω・`)」


 父親の名前が出たことにカガリは興奮してそのままのテンションで話しだそうとしたので他四名はすかさずその話を切り捨てて話題を止めた。

 親バカに愛されて育ったカガリは重度のファザコンでマザコンのファミリーコンで親の誰かの名前が出てくると直ぐにその自慢話を始める。しかも異様に長いし気付くと同じ話を何度も繰り返すので聞いている方が疲れる。ので、一度でも聞いた事が有れば大体遮られるのが落ちだ。

 そのたんびに変わらないはずの表情がショボーンっと項垂れるのを見るのは忍びないが、避けたいものは避けたいので心を鬼にして切り捨てる。

 可哀想などと言うなかれ、そう思うなら一回体験してみるといい。一日にぶっ続けで同じ話を何十回も聞いて日が暮れるのを体験してみればその苦痛がお分かりいただけるだろう。

 いくら可愛いカガリさんの可愛いお願いでも聞いてあげられない。これに付き合ってられるのは同じく先輩たちを尊敬してやまないカガリの親の一人であるカロンだけである。彼はカガリと一緒になって日が暮れようが話し続けていられる先輩バカである。

 因みにその先輩たちも娘と後輩の話で何日でも潰せる後輩バカなので特に問題ない。相思相愛である。


「んん゛紅がいつから居たかだけど多分アンさんが泣く前から居たんじゃないかしら?」

「え、そんな前から?」

「気付かなんだ」

「え~言ってくれればいいのにぃ」

「?何故推定系なのデすか?」


 渦中の人物がすぐ側で会話を聞いていたという事実にうすら寒い物が走るなか、カガリだけはカレンの断言しかねる言い方に疑問を投げかけた。

 カガリからしたらカレンは普段から周囲に目を配り気配を敏感に察する人物であるとの認識なので不思議に思ったのだ。


「ん~とね。元々私は紅の気配に慣れ親しんるせいであの子の気配に鈍感なんだけど、最近は輪を掛けて紅の気配の紛らわし方が上手くなっちゃって見つけ辛いのよね。戦場とか依頼中ならそうでもないけどね」

「ああ成程、いつまでも周囲の気配を探るのは疲れるからのう。安全と自身で定めた場所では気を抜かねば疲れてしまう。此処はカレンにとって気を抜ける場所か」


 ポリポリと頬を描きながら言ったカレンにエーデルワイドとアリスは成程っと頷き緑の魔女とカガリは軽く首を傾げた。戦闘員と非戦闘員の感覚の違いなのでこの辺りは仕方ない。


「ええ、この万屋の建物内部で騒ぎを起こそうなんて猛者早々いないもの」

「と言うか、ソレは猛者では無くて愚か者よ」

「分かるぅ。B級がゴロゴロいるし最低一人はA級が常に居る様な建物で暴れるのはバカだよねぇ」

「同意しまス。たまに新規利用者が解体小屋デ暴れることが居りますガそういった者はカウンターに常駐していル元A級冒険者に速やかに鎮圧されマす。再犯は有りマせん。」

「ガイルさん相手に喧嘩売るのはバカね。あのヒト身体能力だけでA級に上り詰めた純然たる人間よ。私の目指したい所に到達したヒト、やっぱり師匠は凄いわまた今度手合わせをお願いしようかしら」

「その時はぁ私も一緒に連れて行ってね?嫉妬しちゃうもん」

「不様に地面に転げまわるのを見られるのは恥ずかしいけど緑が望むなら一緒に行きましょう。笑わないでね?」

「もちろん!アリスの努力を笑ったりしないよぉ」


 何気ない会話で即座にイチャイチャしだしたカップルに軽く肩をすくめてこのまま会話を流す事にする。

 紅が居るのにカレンが口を割る筈が無いのでこれ以上は意味が無いだろう。だって多分ここの会話聞かれてるし、さっきから殺気飛んでくるのが証拠だ。


「そう言えバ、ここはまだ認識され辛くなっていルのですか?」

「?ええ、まだ目くらましは張ってあるわよ?」

「そうですカ」

「ええ」

「どうしたのじゃ?」

「イエ、紅様はそれをものトもしないのダなっと思っただけでス」

「・・・あまり深く考えぬことにしよう」

「ハい」


 カガリの言葉に一瞬その場が凍りかけたような気がしたが、エーデルワイドの一言でさっさと流す。その後は甘味の追加注文をしてさっきまでと関係のない適当な話で色々なアレそれを忘却の彼方に押し流すことにしたのだった。


「結局聞きたいこと聞けんかった。我の胃の安定はいつじゃ」

「薔薇様どんとマイム~」

「愚痴ぐらいなら付き合いますわ薔薇の方」

「また一緒にオ話ししマしょう?エーデルワイド様」

「うむ、その時はよろしく頼む」

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