話は流される
カレンから語られた目を逸らしたくなる事実の発覚に動揺しながらもエーデルワイド達はどうにか会話の軌道修正をする。そんな10年もかけた執着の話とか理解し難いと言うかしたくないと言いうか、とにかく二度と自分達では掘り起こすまいと彼女たちは誓ったのだ。
急に変わった話の流れに首を傾げながらもカレンも特に続けたいという訳でもないので素直に話題変更に応じて話は元に戻る。
すなわち、何故如月紅への恋愛感情を指摘されて固まったのか?である。
「それで?」
「うん?」
「何故フリーズエラーをしたのデすか?」
「例えが機械ぽいわね。さっさと言いなさい」
「言わなきゃダメ?カガリさんのそこが面白くて可愛いところよ」
「わかるぅ。ちょっと外れているところが可愛い。当然だよぉペロっとしちゃいなよぉ」
「分かるぞう。天然は可愛い!言わねば帰さん」
「カワイイ?良く分カりませン。言いたクないのデすか?」
「そうね。誰にだって言いたくない事の1つや2つや10や100あるでしょ?カガリさんは可愛いコレは事実、反論は受け付けない」
「同意するから反論は無いわ。言いたくない事1つ2つは普通だし10までは兎も角100もあるわけ?」
「体重とか?」
「それは言っちゃダメな奴ぅ!乙女の黙秘を発動しますぅ」
「我、生まれた瞬間から微々として動いた事ないのじゃが?」
「私ハ取り込んだもノは身にナりませンので増えるこトはあり得まセん」
「吸血鬼の体質上増えないわね」
「任意で変幻自在だね」
「う~ら~や~ま~しぃぃぃ」
「我からすれば体格が変わる事がうらやましいのじゃが我最初からこの姿じゃぞ?微々として変化無しじゃぞ?服のサイズが変わらない以外のメリットが無いんじゃが・・・」
「?私モ生まれた時カら変わりマせん。ですガ特に不自由も不満モ感じませンよ?」
「カガリさんは変化しない無機物として生まれたからおかしくないわ。でも薔薇の方は生命という変化が有るモノとして生まれたのに変化しない。それが不自然だって言いたいんじゃないかしら?」
「変化しない?薔薇様は髪とか爪も伸びないのぉ?」
「伸びぬなぁ故に失ったら魔力を使って編まねばならぬ。これがまた面倒で」
「あら、削れはしても復元はしない。現状を維持し続けるだけって事?不変生物って言えば良いのかしら?大変ね」
「魔力が有れバ復元できるのハ羨ましいデす。私は着け変えなければいけないのでパパやママに迷惑を掛けてシまいます。今はカロンパパ一人なのデ余計に心苦しいノです。不器用な方なのデ大変な思いをさせテしまいまス」
「カロン君たちはカガリさんのお世話が大好きだから迷惑だとは思わないわよ。特にカロン君は不器用でも娘のお世話が出来て幸せそうよ?」
「そうですカ?」
「ええ、心配なら素直に聞いてみるといいわ」
「はイ。今度聞いてみます。」
「もしかしてこの中でみどりだけは人間に近い体質って事?魔女ってそんなに人間と変わらないの?」
「個人によるかなぁ。人間から魔女になったヒトもいるけどぉそもそも人の形をしているだけのヒトもいるしぃ。そも魔女の定義が曖昧なのぉ」
「そうなの?」
「うん。世界や時代で違うみたい。私の常識だとぉ魔女は人間に害をなす力ある者をそう呼ぶんだけどぉ、今の世界だと自然と寄り添って生きてぇその恵みをヒトが手に出来る形に変える賢者てき存在って感じ?」
「?魔女は長寿で聡明な先駆者デす。知識を持チ乞われればそれを惜しまズ与える森の賢者ですが、ソれを悪用されることを嫌い悪用した者には報復を与える恐ろしくも心優しきヒトであるとインプットされています。私の製造国でも数は少ないですガ未だに存命です」
「ほう。確かに世界によって物の捉えかたや解釈が違うのは当たり前だ。しかしおんしらの話だと180度見方が違うようじゃが何故なんじゃろうな?」
「歩んだ歴史の違いと世界観の違いかしら?下手な話魔術が当たり前の世界とそれを全否定した世界では同じ発音でも正反対の意味を持っていたとしても可笑しくないんじゃない?」
「ふむ。一理あるのう」
キャッキャウフフっと次から次へと女性の会話はすぐに話題が移動し二転三転していつの間にやらまったく違う会話になる事はよくある事だ。
女性は会話の内容を重要視せず会話という行為を楽しむものなのでその話題がなんであるか、また何故話し始めたのかはあまり関係ない。その為このまま話題がそれて最初に戻らないかに思われたが、
「って違うのじゃ!!今聞きたいのはカレン!おんしの事じゃ!さっきの回答をさっさと寄こさぬか!!何故!如月への!感情を!指摘したら!固まったんじゃ!!」
エーデルワイドの必死の話題修正で話は元の場所に立ち戻った。
「ア」
「そう言えば」
「そうだった~」
「ちっ」
「誤魔化す気満々か!!!」
「だって恥ずかしいじゃない」
「?恥ずかシがる事なんデすか?」
「他人にとって些細でも当人にとっては一大事ってあるでしょ?」
「傍から見たら些細事なわけ?」
「多分?でも私は恥ずかしい」
「吐き出しちゃえばぁ楽になるよぉ?」
「別に抱え込んで苦しいとかではないから楽にはならないよ?あとで羞恥心で死ねるだけ」
「ヒトは羞恥心では死なん!さっさとペロるのじゃ!」
「何言ってるのアンさん羞恥心で死んじゃうヒトはいるよ。限界突破すると心臓止まってそのまま脳に酸素がいかなくてご臨終しちゃうの」
「ア、いますネそんなヒト、えっとミッミ族?」
「ミミック族じゃなかったかしら?」
「ミミ@*g族でしょぉ?」
「「「「え、なんて?」」」」
「ミィ@$¥族」
「ミしか分かんないしさっきと音が違う気がする。相変わらず変な種族多いね。みどりちゃんも良く発音できるね」
「魔女の端くれですからぁミ#ィ?&族は発音し辛いけど意味は分かりやすいよぉ?」
「また発音変わったる。意味とな?」
「うん。訳すと『シャイ』って意味だよぉ感情が一杯になると死んじゃうの」
「難しイ種族ですネ。絶滅しないのデすか?」
「死んでもすぐに蘇生が始まってぇ一瞬後には元の状態だからぁ周りは死んだことに気付かないんだよぉしかもぉ死ぬと一瞬で冷静になれるからぁ一遍死んで頭を冷やすを地でする種なのぉ」
「何ともコメントに困る種族ね」
「特性生かして生きてるって聞いてるよぉ常に冷静沈着で頭の切り替えがうまいんだって実際死んで頭リセットしてるから当たり前だよねぇ」
「冷静(物理)って事?面白い種族だね。知り合いに居るなら今度紹介してよ会ってみたいから」
「う~んたまにお花買いに来るヒトがそうらしいってだけだから紹介は難しいかなぁ」
「そっか、残念。そう言えばみどりちゃんてマンドラゴラの栽培とか出来るの?」
「マンドラゴラぁ?出来なくはないけど手間と暇とお金を掛けたわりにお金にならないのよねぇ」
「そう。知り合いが結構な頻度で使うから買うより栽培の方が安いんじゃないかってことで栽培を検討しているらしいんだけど栽培方面は詳しくないから手を出しあぐねて居るらしいの。もしよかったらお話してみない?」
「カレンさんが進めるって事は優秀なんだぁ?」
「天才よ。溺愛してる婚約者もいるから無駄な心配もいらないしね」
「そっかぁ良いよ~。今度会ったげる。予定とか分かるぅ?」
「そこまで把握はしてないわでも見知った相手だと思うわよ?ここでご飯食べてるし」
「そうなのぉ?」
「うん。黒髪黒目の銀縁メガネの似合う物凄い美人な少年よ。白髪赤目の角持ちの少女と一緒だと思うけど知らない?」
「「あーあのバカップル」」
「アリスちゃんも知ってるか、うん。そうあの二人紅の学校で出来たお友達でそのまま私ともお友達になってくれた子たち、すぐに二人の世界だから目立つよね。微笑ましいから良いけど」
「姫鬼様と狂様ハ本当に微笑ましいデすね」
「分かるわ。熟練な様でいて初々しさもあって見てて可愛いのよね」
「・・・・・・・・・・・・すぐに話を逸らす天才よなぁカレン?」
そこそこの頻度で来て万屋本舗の食糧庫を空にする勢いで食べるカップルに微妙な顔をする緑の魔女とアリスを他所に、姫鬼と狂を微笑ましいと雰囲気を綻ばせるカガリにカレンも力強く頷いて同意を示す。
そんなカレンにちょっと本気で冷気を叩き付けるのは折角戻した話の内容をこれまた即座に逸らされたエーデルワイドだ。
「「「あ」」」
「ちっ!」
「おんしはミ何とか族では無いのだ!羞恥心では死なぬ!さっさと白状せい!もうなんかアレだ!意地になっとるのは承知じゃがおんしと一緒に居る時の如月の殺気と怨念が怖いんじゃ!!おんしらの関係を前進させねば我の胃に穴が開くのじゃ!!!」
(((分かる)))
えぐえぐ泣きながら訴えるエーデルワイドにその場にいたカレン以外の三人は力強く頷いて理解を示した。
幼子姿のエーデルワイドが泣き続けるのは目に優しくないので彼女の側に座っている面々はティッシュを差し出し、お茶のお替りを継ぎ足し、甘味を差し出して背を摩りだした。
泣き喚く見た目幼女を大人四人があやす様子はアリスと緑の魔女の件で張っていた目くらましとさらに追加でカレンが張り巡らせた消音結界で周囲には隠されるので特に肩身の狭い思いはせずに済んだ。精々後で我に返ったエーデルワイドがカレン達と目を合わせ辛いだけなのでこちらも特に問題ない。うん、痛いのエーデルワイド一人という事だ。無問題!!




